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重い瞼を開けると、自室の天井が目に入った。
…こんなにぐっすり眠れたのはいつぶりだろうか。
倦怠感が残る体に鞭を打って、ゆっくりと起き上がる。
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…右手が重い。
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見てみると、ベッドに床で座り込むような形で眠りながら俺の右手を握るぶるーくがいた。
ぶるーくの暖かい手が俺の手を包み込む。
…そういえば、水族館のときも手を、、
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そこまで考えて、考えてたことを掻き消すようにふるふると頭を振る。
思い出しても、胸が痛くなるだけだ。
…ぶるーくに好きと言われたとき少しだけ期待した。
ぶるーくも、俺と同じ気持ちなんじゃないかって…
でもそんな考えはすぐに消えた。
ぶるーくは俺じゃなくてSubが好きなだけだ。
4つも年下の彼は、きっとDomとしての欲求と恋心を履き違えてしまったのだ。
今に正気に戻って、ダイナミクスのない女性と普通の恋愛を始めるのだろう。
…もう、傷つきたくなくてぶるーくに酷いことを言った。
ぶるーくにとって、俺への気持ちは一時的な感情に過ぎない。
その感情に縋ってしまう前に、この恋を諦めてしまおう。
そう思って、繋がれた手を解こうとしたとき。
…
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ぶるーくの目が、ゆっくりと開いた。
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寝ぼけ眼が俺を捉える。
意識が覚醒し始めたのか、その目が驚いたように見開いていった。
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弾かれたように俺にそう聞くぶるーくに、気まずくなって視線を逸らす。
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俺の返答に心底安心しきった声を出すぶるーくに胸が痛む。
なんで。
なんで…
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思ったことがつい口に出てしまった。
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誤魔化そうとする俺を、ぶるーくが真剣な眼差しで見る。
…やめろ。
そんな目で、俺を見ないでくれ。
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やめてくれ。
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頼むから…
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期待、してしまうから…
…
ぶるーくが、俺の手を握る力を強める。
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きっと、こんなに必死になったのは初めてだ。
こんなに、人を好きになったのも。
どうしようもなく好きなんだ。
この人のことが。
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涙で視界が滲む。
スマイルさんの瞳に映る僕はきっと情けない表情をしているだろう。
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縋るようにスマイルさんの手を握る。
もし僕の存在が迷惑になるんだったら
もうスマイルさんには関わらないようにするし、この気持ちも封じ込める。
スマイルさんが会社から居なくなるのは嫌だッ…
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顔を上げると、スマイルさんが困惑したように此方を見た。
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体が固まる。
え、辞めない…?
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だってNakamuが…!
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そこまで言いかけて、やっと気づいた。
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騙されたのか…
その事実に気づいた瞬間、体の力が抜けてヘナヘナとベッドに突っ伏す。
スマイルさんが会社を辞めるというのは、Nakamuのついた嘘だ。
…もしかしたら僕のことを心配して嘘をついてくれたのかな。
面倒見がいい同期の顔を思い出す。
…やっぱり、Nakamuには頭が上がらないな。
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スマイルさんが困惑したような顔で此方を見る。
…よかった。
まだこの人と仕事ができるのか。
その事実にホッと安心して、立ち上がる。
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きっと今まで通りに接することは出来なくなるけど、
まだスマイルさんと仕事ができるなら、それだけで満足だ。
荷物を持って、ドアに向かう。
…
僕の気持ちは全て伝えた。
もう思い残すことはない。
そう思って、ドアノブに手をかけたとき。
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後ろからスマイルさんの声が聞こえた。
振り返ると、ベッドから立ち上がって焦った表情で僕を見るスマイルさんがいた。
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グラッ
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スマイルさんが此方に向かって手を伸ばした途端、
スマイルさんの重心が大きく傾く。
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手を伸ばして、なんとかスマイルさんの体を支える。
…
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スマイルさんが僕の腕をギュッと掴む。
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…
紫色の瞳に僕が映る。
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…
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スマイルさんの声が震える。
…
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…
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この人は、本当にズルい人だ。
本当にズルくて、それでいて…
とびきり優しい。
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涙で滲む視界の中、優しく笑うスマイルさんが見えた。
スマイルさんが僕の顔に手を近づけ、指先で僕の目元に溜まる涙を拭う。
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…
…
…
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DomかSubかなんてどうでもいい。
きっとダイナミクスがなくても僕は、
スマイルさんを好きになってた。
そのくらい僕は、
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スマイルさんの背中に優しく腕を回す。
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…
窓から差し込む月明かりが、僕たちを照らす。
スマイルさんが遠慮がちに僕の背中に腕をまわした。
まわされた腕にギュッと力が込められる。
…
耳元で、優しく笑うスマイルさんの声が聞こえた。
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土筆(作者)
土筆(作者)
土筆(作者)
コメント
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あまりにもどうしようもなく大好きです・・・・・・。。 感情の描き方がどタイプすぎますめちゃくちゃたのしみです・・・・・!!!!
おぉ!!!やった!!一時期は大丈夫かな…?と思ったんですけどちゃんと付き合えましたね!!!よかった~(泣) 最終話楽しみにしてます!!!