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第1章 新しい命 とある県のとある町に、男の子が産まれた。その子は「順」と名付けられた。この名前は、順の母方の祖父の名前の一字から取ったものだった。順の母方の祖父はとある寺の曹洞宗の和尚であった。順の母親は、自分の父親のことを、誇りに思ってたので、自分の父親の名前の一字をもらって、自分の息子に付けたのだった。 さて、順は本当は、父方の祖父母の所に連れて帰られるはずだったのだが・・・・・・?どういうわけか、母方の祖父母の所に連れて帰られてしまっていたのだ!?当然。父方の祖父母は、すごくガッカリした、という。それもそのはず、彼らにとっては、初孫だったからだ。言うまでもないのだが、母方の祖父母にとっても、初孫だったのだ。 とにかく順は、母方の祖父母の所で、育てられることになった。順は、そこで、大事に育てられて、伸び伸びと育っていった。 ちなみに順は、母方の祖父のことが、一番大好きであった。彼は、孫思いの「優しいおじいちゃん」だったからだ。 順は、母方の祖父と、ずっと、いつまでも、一緒にいられると思っていた。この幸せが、ずっと続くと思っていたのだ。 第1章完 第2章 順にとって、最も辛い出来事 順は、この幸せが、ずっと、いつまでも続くと思っていた・・・。しかし、ある日、順の母方の祖父が、急に体調を崩したのだった!?順は、まだ、幼かったため、全然事の重大さに気付いていなかった。 順の母方の祖父は、喉頭癌になってしまっていたのだ!?それで、入院して、手術されたので、彼は、しゃべれなくなっていた・・・・・・。順は、母方の祖母に連れられて、母方の祖父の見舞いに行った。 順が彼を見ると、彼は、息絶え絶えになりながら、順の方に手を伸ばして、何かを言いたげであった。順は、それを見ても、何が何だかさっぱり分かっていなかった。 そして、19○△年○月△日、順の母方の祖父は、命を落とした。まだ、61歳の若さであった。 彼は、曹洞宗の寺の和尚だったため、葬式は、盛大に行われた。さて、彼の妹は、自分の兄の死を悼んで、泣きじゃくっていた。順の方はというと・・・・・・?自分の祖父の遺体を見るなり、 『おじいちゃん、寝てる・・・。全然動かないや・・・・・・?』 と、思ったのだった!?何ということだろうか!?順は、自分の祖父が、『ただ寝てる』としか思っていなかったのだ!!!つまり、幼いためか、「死」を全く理解していなかったのだ。 しかし、彼の身体の傷を見た時は・・・・・・!? 『おじいちゃん・・・、からだが、傷だらけ・・・・・・。』 と、流石に、心に激しく、衝撃を受けたようだ。それもそうだ・・・・・・、大好きな祖父の身体が傷だらけだったからだ・・・・・・。 そして、火葬の日、順の母方の祖母は、自分の夫の棺桶の中に、彼が大事に持っていた黒い鞄を入れた。その鞄には、そうめんの束を入れた、という。彼は、そうめんが、大好物だったからだ・・・・・・。 そして、火葬の日、順の母方の祖父は、火葬されたのだが、彼が火葬されている間、順は何を考えていたのかというと・・・・・・!? 『ガイコツになったおじいちゃんを見るの・・・こわーい・・・・・・!』 であった!?何ということであろうか!!?順は、 『自分の祖父が亡くなって悲しい』 ではなく、 『ガイコツになったおじいちゃんを見るのがこわい・・・・・・』 という考えしか頭になかったのだ。・・・幼いとは、何て残酷なのだろうか・・・・・・!? さて、火葬し終わって、彼は、バラバラの骨になっていた。順は、それを見ると・・・・・・? 『ガイコツじゃなくて・・・良かった・・・・・・』 と、すごく、不謹慎なことを考えていた。やはり、幼いとは、実に残酷である。 そして、日にちが経ち、彼の骨は納骨された。 そうなっても、順はまだ、自分の祖父の死を理解してはいなかった。順は、こう思っていたのだ。 『おじいちゃんは、骨になっても肉をつければ元に戻るんだ!元に戻ったら、また、僕と一緒に遊んでくれるよね!?』 ・・・・・・と・・・・・・。 しかし、何日経っても・・・・・・、何日経っても、「大好きなおじいちゃん」は帰って来なかった・・・・・・。それで、順は、 『おじいちゃん・・・・・・、今日も帰って来ない・・・・・。』 と、とてつもなく寂しくなくていた。 そして、ある日、順は、仏壇の前に座り、マッチをシュッと擦った後・・・・・・、大粒の涙を流した。・・・もう大事な、そして、大好きな、あのおじいちゃんには、二度と・・・・・・もう二度と会えないことを理解したからだ・・・・・・。 順が、一人で泣いていると、従弟の子が、順の頭を優しく撫でた、という・・・・・・。 これが、順にとって、最も辛い出来事だった、という・・・・・・。 第2章完