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ドサッ

家に帰るなり荷物を乱暴に置き、 ソファに座る。ここ数週間ずっと任務任務の日々を送り、大好きな可愛い生徒たちに 会えていない。

そのストレスからか、最近は空腹も感じないしイライラしっぱなしで伊地知が、かなり怯えていた。

申し訳ないとは思っているけどもう我慢ならない。1ヶ月も高専に帰らせてもらえないだなんて思ってなかったし、そもそもこんな嫌がらせをしてくるだなんてやっぱり上の人間は大っ嫌いだ。

いつもなら学校だけど、今日は土曜日で 休み。悠仁達と会うために任務だって頑張ったのにこれじゃあ意味ないよね。

はーっとついたため息が静かな部屋に 溶け込む。

五条悟

寂しいなぁ…

五条悟

誰か来てくんないかな。

悠仁なら呼んだらきてくれそう。 でも、迷惑だよな。 確か、恵と野薔薇と出掛けてるって 言ってたけ?

やっぱり可愛い生徒達に会いたい。 そう思ったらいてもたってもいられなくなって、ついスマートフォンに手を伸ばす。

ちょっと話すだけだし、邪魔はしないし、 すぐ電話切れば大丈夫だよね。 うん、大丈夫。

そう自分に言い聞かせてから受話器のマークを押す。

2コール、3コール

やっぱりでてくれないよなー、 なんて思いながら切ろうとした時。

虎杖悠仁

もしもし、五条先生?

虎杖悠仁

どったの?

五条悟

ゆ、うじ?

虎杖悠仁

うん、そうだよ!

虎杖悠仁

てか五条先生からかけてきたんじゃん!

五条悟

あ、あはは、そうだったね。

まさか出てくれるなんて思ってなくて少し動揺してしまった。
久しぶりに呼ばれる「五条先生」に、涙が溢れそうになるのを堪える。

虎杖悠仁

先生から電話なんて珍しいね

虎杖悠仁

なんかあった?

五条悟

っ…ううん、なんもないよ。

五条悟

久しぶりに悠仁の声聞きたかっただけだからさ。

伏黒恵

虎杖、置いて行くぞ!

釘崎野薔薇

早くしなさいよ。

釘崎野薔薇

何やってるのよ。

恵と野薔薇の声が、電話越しに聞こえた。

虎杖悠仁

…本当?嘘ついてない?

虎杖悠仁

大丈夫?

五条悟

…っ…なんも、ないよ。

五条悟

大丈夫だから。

五条悟

せっかくの休みなのに邪魔してごめんね。

五条悟

恵と野薔薇と買い物楽しんで

五条悟

恵と野薔薇にも宜しくね。

虎杖悠仁

ううん!

虎杖悠仁

俺も五条先生と話せてよかった!

虎杖悠仁

じゃあまた後でね!

五条悟

うん、じゃあね。

電話を切って、下を向くと一粒だけ涙が溢れた。危ない危ない、悠仁に気が付かれるとこだった。

悠仁は、ああ見えてすごく鋭いから、声だけでもわかっちゃうのかな。

最強の僕が弱ってるとこなんて、みんな見たくないよね。

帰ったらご飯を食べようと考えていたのに、まるでソファに接着剤でもついているかの ように動けなかった。

暫くボーッとしていると手に持っているスマートフォンがブルブルと震え出す。

画面を見ると、そこには『虎杖悠仁』という文字が映し出されていた。

なんの用だろうか。もしかして悠二に何かあったとか?僕は、焦って電話に出る。

虎杖悠仁

もしもし?五条先生?

五条悟

悠仁!なんかあった?!

虎杖悠仁

五条先生!玄関開けて!

五条悟

えっ?玄関?

虎杖悠仁

俺、今、五条先生の家の前にいるんだよね。

五条悟

…は!?

これまで動けなかったのが嘘のようなスピードで玄関に向かう。 扉を開けた先には…

虎杖悠仁

五条せんせ!おっひさー!

五条悟

…えっ、なんでここに居るの⁈

虎杖悠仁

えっ、俺言ったよね?
後でねって!

言ってた。めちゃくちゃはっきり言ってた。あのときはなにも思わなかったけど、今考えたら確かに言ってた。

虎杖悠仁

ふふん、思い出した?

五条悟

思い出した…

にこにこと得意げに笑う悠仁を見るとやっぱり泣きそうになってきた。やばい。

虎杖悠仁

聞いてよ、五条先生!

虎杖悠仁

俺、本当は、伏黒と釘崎にも五条先生の家行こうって言ったんだよ?

虎杖悠仁

でもね、用事があるとかで…

虎杖悠仁

断られた。

虎杖悠仁

だから、1人でもいっかなぁと
思って来た!

虎杖悠仁

伏黒も釘崎も、冷たいよなぁ…

五条悟

そうなんだ。

五条悟

恵も野薔薇も、やる事があるんじゃ無いの?

虎杖悠仁

ん〜、そっかなぁ…

五条悟

あっ、ごめんね。

五条悟

気付かなくて。上がって。

虎杖悠仁

五条先生、お邪魔しまーす!

五条悟

どうぞ。

虎杖悠仁

玄関綺麗。

五条悟

そりゃ、高級マンション
だからね。

虎杖悠仁

…五条先生、台所借りて良い?

五条悟

うん、良いよ。

悠二は、家の中に入った。 よいしょっとビニール袋を台所に置いた。 僕の家に来る前に、スーパーに寄ったらしく 中には、チョコレート、バター、卵、ココアパウダー、薄力粉、砂糖、生クリーム、苺、その他の材料が入っていた。

虎杖悠仁

よし、作るか!

虎杖悠仁

五条先生は、休んでて良いよ

悠二に、そう言われてリビングで待っているとカシャカシャと混ぜる音や火の音が 聞こえた。

悠二は、スマホの画面を見ながら何かを作っていた。そっと、台所を覗いてみると、オーブンに何かを入れていた。

虎杖悠仁

あ、五条先生!

虎杖悠仁

もう少しで、完成するから
リビングにいて。

五条悟

は〜い…

虎杖悠仁

出来た♪

虎杖悠仁

五条先生、出来たよ〜!

悠二が、白いお皿に乗せて持って来たのは、 フォンダンショコラだった。 えっ、悠二。こんなの作れるの⁈ 料理は、出来るって知ってるけど、 お菓子とかも作れるんだ!

虎杖悠仁

これ、食べて元気出して!

虎杖悠仁

先生、泣いてたよね?

虎杖悠仁

目が赤いよ?

優しい声に思わず顔を上げると、そこには先程の笑顔とは違い心配そうな顔をした 悠仁がいた。

優しい声で僕のことを「五条先生」って呼んでくれるから。

一口食べるとトロトロのチョコレートが出て来て美味しくて暖かい味がして気がつけば、涙がボロボロと涙が溢れて止まらなくなっていた。

五条悟

ふぅ…っゆうじ

虎杖悠仁

よしよし、なんか嫌なことでもあった?

悠仁が、泣き始めた僕を優しく抱きしめて頭を撫でてくれた。

五条悟

別に、やなことあったとかじゃないけど。

ぐすっ、と鼻を啜りながら話し始める。

五条悟

なるべく僕は、みんなのそばにいたい。

五条悟

任務にだって付き添いたいし…

五条悟

教えたい事だって…

五条悟

いっぱいあるんだ。

五条悟

なのに、自分の任務が忙しいからって…

五条悟

みんなのことちゃんと見て
あげられなくて…

五条悟

ふぅ…ひっ、ぐすっ

話しているうちに呼吸が苦しくなってくる。

虎杖悠仁

五条先生、ゆっくりで大丈夫だからね

泣き続ける僕の背中を優しく撫でてくれる悠仁の手が暖かくて、余計に涙があふれる。

五条悟

…僕は、教師失格だね。

虎杖悠仁

そんなことない

五条悟

失格だよ、自分のことで精一杯。

虎杖悠仁

ううん。五条先生は、忙しいのに俺達のこと心配してくれてたんでしょ?

虎杖悠仁

だったら失格なんかじゃないよ。

悠仁はずっと僕を抱きしめていた体を離して、僕の顔を真っ直ぐに見つめてくる。

虎杖悠仁

あのね、先生。

虎杖悠仁

先生は、いつもいい加減
だし、

虎杖悠仁

説明は、適当だし。

虎杖悠仁

子供みたいだし…

虎杖悠仁

ワガママだし。

虎杖悠仁

最強だけど…

五条悟

なに…悠二、悪口?

そこで言葉を切った悠仁は、涙と鼻水でびしゃびしゃの僕の顔を両手でぱしんと挟んで こう言った。

虎杖悠仁

先生だって人間だよ。

虎杖悠仁

ただ呪霊を倒すだけの機械じゃない。

虎杖悠仁

疲れる時だってある。

虎杖悠仁

苦しい時だってある。

虎杖悠仁

泣きたい時だってあって当たり前なんだからさ。

虎杖悠仁

俺たちのこと、頼ってよ。

五条悟

でも、僕は、みんなの先生だよ?

虎杖悠仁

そんなの関係ないよ。

虎杖悠仁

俺は、先生に頼ってほしいし、お疲れ様って言いたい。

五条悟

いや、でもさぁ…

虎杖悠仁

あああもう!!

虎杖悠仁

もとかいやとかじゃないの!

虎杖悠仁

俺たち、五条先生のことぶっ倒せるくらい強くなるから!

虎杖悠仁

だからどんどん頼ってよ!

いつものように笑う悠仁に、僕も自然と笑顔になっていた。

五条悟

うん、そうだね。

五条悟

これからは頼らせて
もらうかも…

虎杖悠仁

かもじゃなくて頼るの!

五条悟

あはは、うん、頼りにしてる

虎杖悠仁

それでよし!

満足気に笑う悠仁。
僕が思っているより、この子はずっと強くてずっと大人だ。

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