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蘭side
乾ないこ
桃瀬らん
遠慮がちに肩をゆすられ 私は緩慢な動きで相手を見やる。
ピントを合わせるように 瞬きをするとそこには 心配そうな顔の奈唯心くんがいた。
遅れて周囲の音が戻り ざわざわと人の話し声が 聞こえてくる。
桃瀬らん
手元ではカランとガラスの氷が 澄んだ音を立て、 そういえばアイスカフェオレを 頼んでいたなと思い出す。
随分放置していたのか テーブルには小さな水溜りが 出来上がっている。
乾ないこ
桃瀬らん
桃瀬らん
すらすらと言葉が出てくるから そういうことだったのかと 私自身も納得した。
しかし奈唯心くんは 訝しげな表情を崩さず 探るようにこちらを見ている。
乾ないこ
投げかけられた問いは 私の心を一気に泡立てた。
水面に波紋が広がるように じわじわと体中を巡り やがて力なく頷いた。
桃瀬らん
桃瀬らん
乾ないこ
桃瀬らん
乾ないこ
奈唯心くんの豪速球のような 返答に私はグッと言葉に詰まる。
確かに言ってることは正論なのだが それが実行できないから 困っているのだ。
更に困るのはそんな私の状況を 奈唯心くんが理解していない はずがないということだった。
全国模試でも上位に入る 頭脳の持ち主だ。 考えが及ばない訳がない。
分かっていてあえて 言っているのだとしたら ... 。
桃瀬らん
桃瀬らん
桃瀬らん
乾ないこ
乾ないこ
内緒話をするように 奈唯心くんがそっと声を顰めた。
私は相槌を打とうとして 予想外の言葉に 舌がもつれそうになる。
桃瀬らん
桃瀬らん
乾ないこ
何が笑いのツボだったのか 奈唯心くんはテーブルには 突っ伏して笑い出した。
顔を上げた時には目尻に 浮かんだ涙を拭っていて 私は戸惑ってしまう。
桃瀬らん
乾ないこ
奈唯心くんは珈琲を 一口飲んでから数式を 解くように話し始めた。
乾ないこ
乾ないこ
乾ないこ
桃瀬らん
やたらと持ち上げられてる 気がして私は素直に 頷くことはできなかった。
けれど奈唯心くんは あっさりと肯定する。
乾ないこ
乾ないこ
気持ちを言葉にする。
口の中で繰り返し私は 視界を覆っていた霧が 晴れていくのを感じた。
桃瀬らん
話が噛み合わないと感じながら 後一歩踏み込むのを躊躇った。
これまでは気持ちを言葉にして伝える 必要がなかったから自分の都合の いいように解釈していたのでは ないかと改めて真実を 突きつけられるのが怖かった。
桃瀬らん
私が黙ったきりでいるのを どう受け取ったのか奈唯心くんが 申し訳なさそうに眉を下げる。
乾ないこ
桃瀬らん
あわあわと両手を振り私は 中断していた昼食の続きを促す。
桃瀬らん
奈唯心くんはまだ何か 言いたそうにしていたけれど 「うん?」と視線を送ると ゆるゆると首を横に振った。
ほんの少し、寂しそうな表情で。
桃瀬らん
先程の会話のきっかけは私が ぼーっとしていたからだ。
おまけに奈唯心くんのおかげで 絡まっていた糸が解けたような 気がしたけれど個人的なこと すぎて伝えることも憚られた。
桃瀬らん
結果がどうであっても 前進できたことには変わりない。
奈唯心くんの背中を 押したのが私なら 私の背中を 押してくれたのは奈唯心くんだ。
感謝の言葉と共に伝えよう。
そんな瞬間が遠からず訪れることを この時は心から信じていた。
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