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蘭side

桃瀬らん

(うぅ、もう公園まで来ちゃった ... )

物珍しそうに瞳を輝かせている 奈唯心くんの隣で私は こっそりと息をつく。

送ります、と言ってくれたのは 嬉しかったがまさか 「家まで」だとは思わなかった。

わざわざ最寄り駅まで 着いてきてくれただけでも 驚いたのに奈唯心くんが 当たり前のように 「じゃあ、行こっか」と 歩き出したからつい私も 後に続いてしまったのだった。

桃瀬らん

(まだ夕方だし大丈夫だよって言っても、全然聞いてくれないし ... )

意外にも奈唯心くんは頑固だった。

私は悩んだ末思い切って 立ち止まった。

桃瀬らん

奈唯心くん、本当にもうここで ... 、、

桃瀬らん

駅までの道分かんなくなっちゃうよ、?

乾ないこ

... 分かった、らんらんを困らせるのは俺としても本意じゃないからね

芝居がかった奈唯心くんの セリフに私は思わず苦笑する。

桃瀬らん

(今日はずっとこんな調子だなぁ)

もともと奈唯心くんは乱暴な 言葉遣いをするような人ではないし 普段から言葉を選びながら 喋ってくれる。

だけど、今日の彼は例えるなら執事や 騎士といった雰囲気だった。

私をお嬢様やお姫様扱いしてくれる からくすぐったくて仕方ない。

桃瀬らん

(奈唯心くん、全部先回りしてやってくれるんだもん)

ドアというドアは全て 奈唯心くんが開けてくれた。

当然のように椅子もひいてくれたし さりげなく車道側を歩いてくれてた。

桃瀬らん

(自分が誘ったからってお昼奢ってくれたのは流石に申し訳なかったけど、)

奈唯心くんは本当にいい人だ。

きっと目に見える形で お返しをしようとしても 交わされてしまうだろう。

だから私はありったけの感謝の 気持ちを込めて笑顔を向ける。

桃瀬らん

今日はありがとっ!すっごい楽しかった!

乾ないこ

俺の方こそ、本当に ... 夢みたいだった

桃瀬らん

えぇ、?大袈裟だよ、奈唯心くん、笑

嫌だなぁと笑いながら 威榴真や夏都達にするように 軽いノリで奈唯心くんの二の腕を叩く

細い見た目とは裏腹にそこには ちゃんと筋肉がついていた。

桃瀬らん

(そっか、奈唯心くんも男の子なんだ ... )

乾ないこ

らんらんっ、!

いきなり名前を呼ばれたかと思うと 奈唯心くんに手首を掴まれていた。

その表情は真剣そのもので 私はあっと息を呑む。

桃瀬らん

(奈唯心くん、触られるのとかダメな人だったかな ... 、?)

威榴真達とはもっと激しい スキンシップを取ることが多いから つい頭から抜け落ちてしまっていた。

奈唯心くんもこういう接触が 苦手な人の1人なのかもしれない。

謝らなければと思った瞬間背後から 自転車が通り過ぎてく音が聞こえた。

びくっと肩を揺らすと 奈唯心くんが慌てて手を解放した。

乾ないこ

ご、ごめん、!痛かったよね ... ?

桃瀬らん

ん ~ ん、違うの、私こそいきなり叩いちゃってごめんね

奈唯心くんに謝りながらも 私は視界の端で自転車を 追いかけていた。

カゴにスーパーの袋が 詰められた自転車は ごく普通のママチャリだ。

後ろ姿を女性そのもので 思っていた人物とは違っていた。

乾ないこ

らんらん?どうしかした ... ?

桃瀬らん

... そういえばここ、散歩コースだなって思って、、

威榴真の癖が伝染ったのか 少し言葉が抜けていた。

けれど何故か奈唯心くんには 伝わっていたようで 「あぁ、紫龍くんの」と 言い当てられてしまう。

なんで分かったの?

私が聞くより先に再び 奈唯心くんに手首を掴まれていた。

ぐいっとひっぱられそのまま ゴツンと奈唯心くんの鎖骨に 頭をぶつけてしまう。

桃瀬らん

(ゎ、痛そう ... )

反射的にそう思ったが 奈唯心くんが衝撃に ふらつくことはなかった。

それどころか反対側の手が 背中に回され胸に押しつける ように抱きしめられる。

乾ないこ

... 今、自分がどんな顔してたかわかる?

耳元で声がして堪らず私は 身体をよじろうとする。

しかし奈唯心くんの腕の力は 思った以上に強く首を 背けることしか出来なかった。

桃瀬らん

(奈唯心くん、どうしちゃったんだろ ... 、、)

不安や戸惑いの方が大きく 質問がちっとも頭に入ってこない。

何も言わない私に焦れたのか 奈唯心くんが更に続ける。

乾ないこ

俺なら、そんな悲しい顔させたりしない

乾ないこ

誠心誠意努力する

すぐそばまで迫った 奈唯心くんの心臓が ドクンッと大きく跳ねた。

つられて私も鼓動が速くなり 全力疾走した後のように忙しない。

いっそ痛いくらいだ。

乾ないこ

だから、紫龍くんじゃなくて__

紫龍いるま

俺が、なに?

奈唯心くんの言葉を遮るように 背後から声がした。

聞き慣れたそれを私が 間違えるはずもない。

きみ宛ての2文字 __ 。

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