脱獄3の空の上の監獄をイメージしています。が日数や独房の場所など適当に色々混ぜています。 微妙にリアム看守→ぺいんと?っぽい感じですが、友情を少し越えた感じなイメージです。 めっちゃ好きなんです監獄3。看守カッコいい BL要素なくて、ほんと夏だから花火やろうぜ!みたいなノリで書いたらなんか方向性が狂いました。 勝手な盗賊団たちの脱走のエンディング(妄想)です。
実在する人物名、名称等とは一切無関係です
残り日数、あと5日。 6番に至ってはもうあと3日、9番は7日。 全員で生きて脱出しなきゃいけないと焦ったあまり、やらかした。警報装置を鳴らしてしまって、独房に入れられてしまった。
8番(ぺいんと)
髪をぐしゃぐしゃと掻き回して、後悔してももう遅い。いつもは気をつけている事がその瞬間だけできなかった。悔しすぎる。
6番(しにがみ)
9番(クロノア)
8番(ぺいんと)
明るく振る舞ってくれる二人だけど、実際ギリギリなんだろう。時々聞こえる声が切羽詰まっている。
おそらく空の上の監獄、そのさらに頂点。 目の前は操縦室と看守詰め所で、独房といいつつ、背後は動力炉まで吹き抜けた床がある。つまり、ここは処刑場でもあって。
怖いもの見たさで恐る恐る大きな口を開けた床を覗き込むと、眼下には真っ赤に煮え立つ燃料炉が広がっていた。
8番(ぺいんと)
檻に身体を寄せて座り込む。夜は詰め所にいるものだと思っていたから、ずっと見られているもんだと思っていた。 けれど、ここなら見張りしていなくても、逃げる心配はいらなさそうだし、普通にあちこち見回っているのだろう。
8番(ぺいんと)
6番(しにがみ)
9番(クロノア)
8番(ぺいんと)
3人だけの通話を切って、しおらしく座り込む囚人のフリをする。気配通り、階段を登ってくるリアム看守が見えた。
聞き慣れた足音が、見える階段から響くと気付いてあわてて通話を切る。何もなかったかのように座って俯いていたなら、リアムが無言で詰め所に入って行く。 何かしら部屋の中でやっているようだが、よく見えない。監視カメラや警報履歴を確認しているのだろうか。
8番(ぺいんと)
そうなれば、二人は看守ではなく警報装置やカメラに気をつけて探索できる。何かしら新しいヒントを見つけてくれれば、と願っている。
それとなくリアムの動きを見取りつつ、そのまま座り込んでいると、ようやく彼は部屋を出るようだ。 夜でも着崩れていない制服に、規律正しい動きが彼の威圧感を助長している。
リアム看守
8番(ぺいんと)
リアム看守
8番(ぺいんと)
大人しくしてろという圧をかけられ、もうこれで見回りにいくのかと思っていたのだが。 リアムは独房を映す防犯カメラを見上げたと思うと、急に帽子を取ってしまう。
8番(ぺいんと)
その後、ポケットから何かを取り出すと口に加え、手元に小さな灯りが点く。あ、煙草かぁ、とわかったのだが、リアムが喫煙者とは知らなかった。
8番(ぺいんと)
火がついて、大きく息を吸い込むと、リアムは空を見上げて白い息を上に吐く。 イメージと違うと思っても、煙草を吸う所作は様になっていて格好いい。
リアム看守
8番(ぺいんと)
リアム看守
8番(ぺいんと)
リアム看守
8番(ぺいんと)
リアム看守
目元が見える看守の顔は、なんだかいつもより怖くはなかった。しかも少し笑っているのもわかって、8番はさっきから驚いてばかりだ。
それから何口かタバコを咥えては空に吐き出した看守は、手元の小さな缶に吸い殻を押し込んでいく。燃えた独特な匂いが、あたりに残る。
それに、遠くを見ているその横顔が、やけに張り詰めていて。
8番(ぺいんと)
リアム看守
帽子を被ることもなく、遠くを見る看守に、なんて声をかければいいかわからない。 敵対というか、畏怖する相手のリアムと、だんだん共通認識が生まれて、なんとなく相互理解ができてきたとは思うけれど。 絶対に越えれない壁、みたいなものがある。
はあ、と大きく息をつくと、リアムは違うポケットから手のひらサイズの何かを取り出した。スキットルだろうか? しかし、今は休憩とはいえ職務中だし、中身は大体酒だ。まさか真面目の塊である看守が……
8番(ぺいんと)
スキットルを口にあてて、グイッと飲んでしまう。
8番(ぺいんと)
リアム看守
ほら、と何故かスキットルを鉄格子越しに渡された。そんなに言うならめちゃくちゃ弱い酒なのか?と恐る恐るちょっと口にすると、強いアルコールの味と、ウイスキー独特の風味が一気に広がって、ほんの一口でも胃が焼けた気がした。 慣れない味に思わず咳き込んで、スキットルをつっ返す。
8番(ぺいんと)
リアム看守
8番(ぺいんと)
リアム看守
そういうと、看守は鉄格子越しに8番の隣に座り込む。手のひらの中にあるスキットルをじっと見つめる横顔に、 8番は────ぺいんとは、声をかけれない。
8番(ぺいんと)
リアム看守
そして彼が指を、夜空に向ける
リアム看守
8番(ぺいんと)
看守が指差した夜空には、地上で見るよりもずっと大きな、満月。 ああだから、やたら明るいと思った。
8番(ぺいんと)
8番(ぺいんと)
鉄格子越しだと余計に。まるで月を囲んでいるようにも見えるけれど、囚われているのは自分だよなと、少し笑ってしまった。
リアム看守
看守は静かに立ち上がると、腰に下げた鍵束を取り出す。すると、徐に独房の扉の鍵を開けてしまう。
8番(ぺいんと)
リアム看守
8番(ぺいんと)
突然腕を掴まれ、立ち上がらせられると、看守と通路へ連れられる。開けた場所から見上げたら、遮られていない大きな満月が眼前に浮かんでいる。
8番(ぺいんと)
思わず手を伸ばして掴もうとしてしまう。本当に目の前にあるのに、何も掴めない。
リアム看守
8番(ぺいんと)
それから無言で、ただ静かに満月を二人連れ添って見上げていた。いつのまにか腕も掴まれていなくて、逃げようと思えば逃れたかもしれないのに、そうしなかった。 ただ無言で、肩を並べているのが穏やかすぎて。
…やがて、リアムがもう一口ウイスキーを煽って飲むと、スキットルを懐に仕舞い込む。
リアム看守
8番(ぺいんと)
リアム看守
8番(ぺいんと)
独房に自ら入って、施錠されるのを静かに待つ。防犯カメラをチラと見ると、ランプも何もついてないため通電されていないと見てわかる。 まさかのリアムの行動に、なんだか夢心地さえある。
リアム看守
床に置いていた帽子を拾い上げると、いつものように被り直す。いつもの、看守だ
8番(ぺいんと)
リアム看守
8番(ぺいんと)
8番(ぺいんと)
リアム看守
8番(ぺいんと)
リアム看守
8番(ぺいんと)
リアム看守
それからお互い、短く好きな酒の銘柄を伝え合って、丁度看守が離れたタイミングで監視カメラのレンズの横に赤いランプが点いた。 颯爽と歩き去る看守の背を、黙って見送ってそっと二人への通話を入れる。
8番(ぺいんと)
9番(クロノア)
6番(しにがみ)
8番(ぺいんと)
改めて決意が固まる。 絶対、何が何でもここから生きて出て見せる。 そしていつの日か、リアムの好きな酒を持って行ってやろう。
8番(ぺいんと)
そうしたら、月まで手が届くのかもしれない
────脱出後
空を飛ぶ豪華客船墜落のニュースは全世界に瞬く間に広まり、かなり大騒ぎになった。 事故調査の際、ゴルゴン……もとい、道化師の企みや悪事が明るみになり、それに追従していた貴族たちも暴かれていった。 それはそうと、脱出直後から燃え尽きたのか、ぼんやりしているぺいんとを励まさんと、3人は花火をやろう!と持ちかけた
小さい手持ち花火から、トラゾー特製の打ち上げ花火と仕掛け花火までと、色とりどりの花火をぼんやり眺めていた。
6番(しにがみ)
9番(クロノア)
トラゾー
呼ばれても立ち上がる気になれず、ただ3人が次々に鮮やかな花火を灯していくのを眺めていた。 煙を出して燃え尽きる花火を見ていると、ああそういえば、これも火だよなとふと思った。
8番(ぺいんと)
あの満月を見上げていた夜の後、道化師にスティーブ看守が殺されたのを知った。 もしかしたら、リアム看守はもう知っていてあの夜、あんな行動を取ったのかもしれない。 それに、その後自分たちに手助けまでしたのも全て覚悟していたからか。
6番(しにがみ)
9番(クロノア)
トラゾー
家から戻ってきたぺいんとの手には、新品のスキットルがあった。 リアムが持っていた年季の入ったものとはまた違う形だ。 ぺいんとが3人の前で揺らすと、チャプンと液体が揺れる音がした。
8番(ぺいんと)
6番(しにがみ)
そこでぺいんとは、あの満月の夜にあったことを初めて話す。 僅か数分だったけども、リアムという人となりを知った事、約束した事。
クロノアとしにがみの表情が急に悲哀に染まる。そんな話をしたと聞けば、あの彼の最期に思うことが出てくるだろう。
8番(ぺいんと)
9番(クロノア)
6番(しにがみ)
トラゾー
8番(ぺいんと)
6番(しにがみ)
9番(クロノア)
8番(ぺいんと)
6番(しにがみ)
トラゾー
8番(ぺいんと)
トラゾー
6番(しにがみ)
9番(クロノア)
8番(ぺいんと)
ぺいんとの掛け声で、一斉にみんなが走り出す。火筒からの導火線を離れた場所にいる全員のところまで伸ばして、4人で火をつけることになった。
8番(ぺいんと)
6番(しにがみ)
9番(クロノア)
トラゾー
トラゾーの掛け声で一斉に手にした火を導火線に寄せる。バチバチと火花を立てながら凄まじい勢いで火筒に向かい、見えなくなって寸刻。
ヒュルルルルル……
ドンッ
6番(しにがみ)
トラゾー
9番(クロノア)
8番(ぺいんと)
そしてスキットルを、ぺいんとは花火に向けて掲げて一口。 やはり喉を焼くほど強い酒だけど、あの夜に飲んだのと同じ味だった。 そのまましにがみに渡すと、彼はもう一口も飲みきれずに何か叫んでる。
9番(クロノア)
6番(しにがみ)
9番(クロノア)
なんて言ってたけれど、やはり一口でむせてしばらく動けなくなってしまった。 しかし、蹲るクロノアからスキットルを取ったのはぺいんとだった。
トラゾー
8番(ぺいんと)
トラゾー
8番(ぺいんと)
とはいえ、勢いよく飲んだのはいいが、コップ半分にもならないほどでぺいんともダウンする。笑いながらトラゾーに酒を取られ、残りの仕掛け花火をつけてくれた。
3人並んで寝転がっているのを見て笑うトラゾーは、変わらない様子でスキットルの中身をグイグイ減らしていく。
トラゾー
8番(ぺいんと)
9番(クロノア)
6番(しにがみ)
強い酒でぐるぐる回る視界は、花火が舞う空で埋まる。パッと爆ぜて散る火花を見上げて、その向こうに月を探した。
8番(ぺいんと)
それでも今は手が届かないものでも、手に入れられるようにならないと。 その時には、あの酒を美味そうに飲んで笑ってやる。
8番(ぺいんと)
ぺいんとのその声を乗せたように、最後の花火が打ち上がり、夜空に大きく弾けて、花開く。 餞(はなむけ)でもあり、挑戦状であって、 盗賊団からの感謝状として。
終
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