誰とも話さなくなってからしばらく経って
月末評価を何回も受けたある日
私は社長に呼ばれた
私が練習に没頭しているうちに
何人か退所していった
だから今度は自分の番かと覚悟して社長室の扉をたたいた
真っ赤な太陽が部屋全体を照らしていたとき
社長が口を開いた
社長
○○
社長
君はこれからどうしたい?
私はこの回答次第で
私のこれからの人生が決まると悟った
○○
デビューしたいです
逆光だからか社長の顔がよく見えない
社長が口を開くまでの間が
たった2,3秒のはずなのに
20分、30分のように感じられた
自分は誰よりも練習してきた
だから大丈夫
何度も何度もそう自分に言い聞かせた
でも社長の口から出てきた言葉は
そんな言葉ではなかった
社長
○○
社長
君は私が求めているガールズグループには
社長
適さない
頭が真っ白になった
これまで寝る間も惜しんで練習してきた自分が
ばかばかしく思えた
なぜかさっきより社長の顔が見づらくなった
太陽が沈むんだなと思ったとき
生ぬるい何かが頬をつたった
社長が何かを嬉しそうに話している
そんなに私を追い出したかったのかなと
余計に自分がみじめに思えた
社長
~てことだから○○はいつからがいい?
退所するのまで催促されるのかと思い
なんだかどうでもよくなった
○○
いつでもいいです
そういうと社長が少し悩んでいることが
少し冷えてきた空気をつたって伝わった
社長
じゃあ準備もあるだろうから
社長
明後日からにしようか
社長の言葉をよく聞いていたら
なにか引っかかる言葉があった
「~から」ってなんだ
退所は今すぐじゃないの?
○○
社長、準備期間は必要ありません
○○
日付が変わる前に出ていきますので
○○
今までありがとうございました
デビューするためにがむしゃらに練習してきた約一年が
無駄になったような気分だった
重い足取りで部屋から出ていこうとすると
焦ったように社長に呼び止められた
社長
○○
社長
何か勘違いしてないか?
社長
出て行けとは言ってないぞ
○○
え、私退所なんじゃ、、
そういうと社長は少し戸惑いながらも微笑んで
社長
君に退所されたら困る
社長
やっぱり肝心なところを聞いてなかったんだね
社長
君にはガールズグループとしてではなく
社長
ボーイズグループとしてデビューしてほしい
体のどこかでとまった歯車が
もう一度動き出した気がした