主
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nmmn注意⚠️ キャラ崩壊注意⚠️ 誤字脱字注意⚠️ 年齢操作注意⚠️ 兄弟パロ注意⚠️ 関東組虐められ注意⚠️
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第7話 夢の底で
暗闇の中に、声が響いていた。
低く、怒鳴り散らす声。
耳の奥を震わせるその響きは、幼い頃からずっと聞き慣れてしまったものだ。
鈍い音が、骨の内側にまで染み込む。
息が詰まる。
床に転がりながら、殴られるのは自分。
小さな体で必死に庇うのは、泣き叫ぶ弟たち。
なつとすちは自分の腕を掴んで、必死に父の拳を止めようとする。
けれど、子どもの力で大人を止められるわけがない。
蹴り飛ばされて泣き崩れる弟たちの姿を、俺はただ歯を食いしばって見ていた。
母は――最初の頃は泣きながら止めてくれていた。
けれどいつからか、何も言わなくなった。
暗い部屋に閉じこもり、やがて声すら出さなくなって……気づいた時には、もう帰ってこなかった。
だから俺にとって「家」とは、怒号が飛び交い、誰かが殴られ、血と涙で満たされる場所でしかなかった。
安心も、温もりも、夢物語の中のもの。
俺たちに与えられるのは、恐怖と痛みだけ。
目を閉じても消えない光景がある。
床に散った血の跡。
震える弟の肩。
泣き疲れて眠る姿。
そして、俺の背に残る痣。
それが「当たり前」だった。
物心ついた時から、殴られることが日常で。
蹴られて床に転がるのも、叫び声を聞くのも、すべてが「普通」だと思ってた。
――少なくとも、あの夜までは。
夢は急に色を変える。
ちゃぶ台の上に並んだカレーライス。
焼きたてのクッキー。
弟たちが震える手でスプーンを持ち、恐る恐る口に運んで、やがて「おいしい」と泣き笑いする顔。
その光景が焼き付いて離れない。
俺はその時、初めて思ったんだ。
――ああ、これが幸せなんだって。
殴られない夜。
怒鳴り声のない食卓。
温かいご飯と、誰かの笑い声。
そんな当たり前が、俺にはなかった。
だからこそ、胸の奥が焼けるように熱かった。
弟たちの笑顔を見た時、思った。
ああ、こいつらにこんな顔をさせてやれるなら、俺はどれだけ殴られたって構わない。
そう思ったのに――それでも胸の奥で、小さな欲が芽生えていた。
俺だって、守られたかった。
俺だって、幸せだと声に出したかった。
けど、言えなかった。
言った瞬間、その幸せが壊れてしまいそうで。
夢の中の俺は、湯気に霞んだ鏡を見ている。
背中一面に広がる痣。
そこへ、いるまの声が響く。
いるま
言えるわけがない。
これは俺だけの傷だから。
俺が背負えばいい。
弟たちに背中を見せなければ、あいつらはまだ笑っていられる。
らん
らん
口の中で、同じ言葉を繰り返す。
自分に言い聞かせるように。
そうしていなければ、立っていられない。
けれど――夢の底で、俺は気づいてしまう。
本当は、俺だって幸せを欲しがっていることに。
あの小さなちゃぶ台で笑っていた時、胸の奥から湧き上がる温かさに震えていたことに。
その温もりを、心のどこかで必死に求めていることに。
だからこそ、怖い。
幸せを知ってしまったら、二度と手放したくなくなる。
なのに俺の家には、それを壊す父がいる。
弟たちの笑顔を守るために、俺はまだ立ち続けなきゃならない。
夢の終わりに、弟たちの笑顔が浮かんだ。
小さな灯りのように揺らめく笑顔。
それは俺にとって何よりも眩しく、何よりも脆い。
――もし守り切れなくなったら、俺はどうするんだろう。
問いかけだけを残して、夢は暗闇に溶けていった。
第7話・了
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𝙉𝙚𝙭𝙩 ︎ ⇝♡80
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コメント
1件
幸せを知っているからこそ苦しいのかもな