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第1話 - あ

2023年05月22日

#スカッと

田中俊樹

アスカ

お義母さん、また今月もお願いできますか…？

アスカ

今月もピンチで…20万円ほど送っていただけたら助かります

ミサト

アスカさん、今年に入って今回で3回目よ

ミサト

そんなにリョウジの会社は大変なの？

ミサト

たしかに、この前あったとき、今は仕事が大変だって言ってたけど…

アスカ

いつも迷惑をおかけしてすみません

アスカ

私も専業主婦ではなく、正社員として働きたいんですけど

アスカ

リョウジ君がそれを許してくれなくて…

ミサト

夫婦で一度、ゆっくり話し合った方がいいわ

アスカ

話し合いもできる雰囲気じゃないんです

アスカ

家に居る時はいっつもイライラしてて

アスカ

私も何度か話し合おうとしたんですけど

アスカ

声を荒げられて…私怖かったんです

ミサト

そうなのね…。でも私達もこの先ずっと支援できるわけじゃないから…

ミサト

今は子ども達も独り立ちして夫婦で共働きだから、仕送りできるけど

ミサト

もうすぐ定年だし

ミサト

それまでにどうにかしないと…

アスカ

ご迷惑をおかけしてすみません

アスカ

このお金はいつかお返ししますので

アスカ

リョウジ君には秘密にしてください

ミサト

一度、お父さんとリョウジの二人っきりで話してもらったらどうかしら？

ミサト

男同士なら、案外すんなりと事情を話してくれるかもしれないわ

ミサト

もしかしたら解決策が見つかるかもしれないし

ミサト

私達だって先行きが見えているほうが支援しやすいわ

アスカ

やめてください…！！

アスカ

そんなことしたら何されるかわかりません

アスカ

リョウジ君、最近おかしいんです

アスカ

何しでかすかわからなくて

ミサト

そんな様子がおかしいのなら、なおのこと話し合った方がいいと思うの

アスカ

それだったらさっきの話もなしでいいです！

アスカ

今はそっとしておくのが一番だと思います

アスカ

だからリョウジに言うのだけはやめてください

ミサト

今度の休み、飛行機の予約するから

ミサト

お父さんとそっちに行きましょうか？

ミサト

あの子がそんな精神状態なら、親として心配だわ

アスカ

お願いです…それだけはやめてください

アスカ

お義母さんとお義父さんがいる時は穏やかなリョウジ君に戻るかもしれませんが

アスカ

お二人が帰られた後を想像するとこわくて

アスカ

今は1人にして欲しいって本人も言ってますし…

ミサト

そう…。

ミサト

ごめんなさいね。あなたのことを信じないわけじゃないけど

ミサト

あの子が、生活費を渡さなかったり

ミサト

家で暴れたり、あなたを罵ったりするだなんて、想像できなくて…。

アスカ

私も信じられません

アスカ

優しかったリョウジ君があんな風になるだなんて

アスカ

でも、私は信じてます

アスカ

今は心が荒んでいるからで、そのうち落ち着くって信じてます

ミサト

私達はリョウジも心配だけど、あなたも心配なの

ミサト

もしかしてそのうち、あなたが怪我するんじゃないかって

アスカ

私は大丈夫です

アスカ

心配してくださってありがとうございます

ミサト

あの子は昔から全然連絡してこないのよね

ミサト

全部自分で決めた後に連絡してくるのよ

ミサト

やっと結婚したかと思ったらこんなことになってるだなんて…

ミサト

リョウジが迷惑をかけて本当にごめんなさい

アスカ

そんな、お義母さんが謝らないでください

アスカ

苦楽を共にするのが夫婦だと思いますし…

ミサト

アスカさんこそ、リョウジと一緒にいてくれてありがとう

ミサト

お金は送るから

ミサト

他にも何かあったら頼ってね

アスカ

私、リョウジ君と結婚できてよかったって思ってるんです。

アスカ

こんないいご両親がいて、リョウジ君は幸せです

ミサト

アスカさん…

アスカ

お義母さんともお義父さんも本当に優しくて親切で

アスカ

今は大変な時期なだけで、これを乗り越えればきっと幸せが待ってると思ってます

ミサト

そう…あなたみたいな子が来てくれてあの子も幸せね

ミサト

すぐにでもお金を送りたいんだけど

ミサト

今週は私もお父さんも忙しくて

アスカ

お義母さん…！

アスカ

ありがとうございます

アスカ

来週までお金は持つと思うので…

ミサト

なるべく早く送るわね

アスカ

はい、待ってます

アスカ

ありがとうございます

～次の日～

リョウジ

母さん、母の日と父の日ってことで高級フルーツ送っといたから

リョウジ

2人で食べて！

リョウジ

会社の人から貰ったんだ

リョウジ

明日には届くと思う

ミサト

あら…リョウジ、久しぶりね

ミサト

そんなのウチに送らず、アスカさんと2人で食べたらよかったのよ

リョウジ

ああ

リョウジ

気にしなくていいよ

ミサト

そんなわけにはいかないわよ…

ミサト

一生独身だと思ってた息子がやっとカワイイお嫁さんを見つけてきたんだから

ミサト

アスカさんを大切にしなさいよ

リョウジ

うーん

リョウジ

まあ…

リョウジ

ちょっと言いにくいことがあるんだけど

ミサト

なに？

ミサト

何でも言ってちょうだい

ミサト

相談にのるわ

リョウジ

実はその

リョウジ

アスカと離婚を考えてる

ミサト

え

ミサト

それはどういうこと？

ミサト

もしかして、会社が倒産しちゃうの！？

リョウジ

は？

リョウジ

会社が倒産？

ミサト

仕事が大変だって言ってたし…やっぱりそういうことだったのね

リョウジ

それは仕事が忙しくて大変って意味だよ

ミサト

いいの、知ってるのよ

ミサト

だからアスカさんにあたることは絶対しないこと

ミサト

それをするぐらいなら、飛行機代をあげるからすぐ帰ってきなさい

ミサト

クレジットカードぐらい持ってるでしょ

リョウジ

さっきからなんの話してるんだよ！

ミサト

アンタは本当に…いつもいつもギリギリまで我慢して

ミサト

そんなんだからおかしくなっちゃうのよ…

ミサト

もっと早くなんとかする癖をつけなさい！

リョウジ

おーい

リョウジ

俺の話聞こえてる？

ミサト

今週末、アスカさんにお金送るから

ミサト

アンタは一回帰ってきなさい！

リョウジ

はあ？

リョウジ

アスカにお金を送るだ！？

リョウジ

それだけはやめろ！

リョウジ

とりあえず、今電話できる？

～週末～

アスカ

あの～

アスカ

お義母さん、お金が入っていないようなんですが

アスカ

もしかして忘れてますか…？

アスカ

食料ももう尽きそうで、できれば今すぐにお金が必要なんですけど…

ミサト

お金送るのは辞めたわ

アスカ

へ？

アスカ

一体どういうことですか！！

アスカ

今、冷蔵庫は空っぽで…明日食べる物がありません

アスカ

そしたらリョウジ君に何されるか…

ミサト

リョウジはそんなことしません

ミサト

息子を疑った私がバカだったわ

アスカ

お義母さん…！

アスカ

もしかしてリョウジ君に連絡したんですか！

アスカ

あれほど秘密にしてくださいってお願いしたのに！

ミサト

リョウジから連絡を貰ったのよ

アスカ

そんな

アスカ

だからってペラペラ喋っちゃったんですか

アスカ

まさかお義母さんに裏切られるだなんて

アスカ

帰ってらきっと怒鳴られる…

ミサト

白々しいこと言わないで！

ミサト

それに裏切ってたのはあなたの方でしょう！

アスカ

はい？

ミサト

まさか

ミサト

私達の送ったお金を浮気相手のために使ってただなんて

アスカ

え？何言ってるんですか？そんなわけ…

ミサト

リョウジから聞いたの

アスカ

お義母さん！それはリョウジ君のついた嘘です

アスカ

お義母さんは私のことを信じてくれないんですか！？

アスカ

たった1人の味方だと思っていたのに…

ミサト

アスカさん、もうやめて

ミサト

私はリョウジにあなたが浮気している証拠をもらったの

アスカ

え…？

アスカ

浮気の証拠というのは？

ミサト

浮気相手とあなたが高級温泉旅館に行った証拠よ

ミサト

あと、浮気相手との写真も見せてもらったわ

アスカ

そんなのいくらでも捏造できますよ…

アスカ

リョウジ君、そこまでやるだなんて…

ミサト

あとリョウジの給料明細も見せてもらったの

ミサト

昇進したから前より給料はアップしてるんだってね

ミサト

あとあなた達2人の生活も見せてもらった

アスカ

え

アスカ

そこまで？

ミサト

何がご飯買う余裕もないって言うのよ

ミサト

毎日、出前だのテイクアウトだのしてたら

ミサト

そりゃあお金が足りなくなるわよ

アスカ

私はそんないいもの食べてないです…

ミサト

ここ数日、リョウジにあなたがご飯食べてる写真やら動画を送ってもらってたの

ミサト

しっかり食べてたわよね

ミサト

食欲のないリョウジの分まで、しっかり食べてたじゃない

アスカ

そんなところまで？

アスカ

隠し撮りしてたってこと？

アスカ

最悪。ってかキモ～

ミサト

あら

ミサト

認めるの？

アスカ

まぁ～そこまで証拠がそろってるなら

アスカ

もう無駄かなーって

アスカ

正直に言うと～お義母さんもお義父さんもとってもうざかったんです

アスカ

私達って理解ある良い義両親でしょ？っていうのを押し付けられてる感じがして～

ミサト

本当に浮気したの？

ミサト

どうして浮気なんか…

アスカ

ええ。浮気してましたよ

アスカ

だってお宅の息子さん、男としての魅力がないんですもの

アスカ

まぁ…ATMとしてはそこそこ優秀かもしれないけど

アスカ

見てくれもいまいちだし、一緒に居てもつまらないんですよね～

ミサト

そう…

ミサト

じゃあ息子とは離婚するの？

アスカ

ええ、離婚するつもりですよ

アスカ

息子さんより更に上のいい男を捕まえたんで♪

アスカ

年収はなんと～息子さんの10倍！

アスカ

何もかも劣ってる息子さんとなんて、一分一秒たりとも一緒にいたくないんですぅ～

ミサト

あなたの浮気相手

ミサト

実家暮らしの無職の男性らしいわ

アスカ

は？

アスカ

なにでたらめ言ってるんですか

アスカ

いくら悔しいからって滅茶苦茶なこと言わないでください～

ミサト

年収は聞いただけでしょ

ミサト

証拠は見せてもらった？

アスカ

そ、それは見せてもらってないですけど

ミサト

住んでる所は教えてもらった？

アスカ

それもまだですけど…都内一等地のタワマンだと言ってましたよ

ミサト

その証拠は？

アスカ

証拠証拠って何なんですかもうっ！

アスカ

確かに家には招待されたことはないんですけど

アスカ

乗ってる車だって高級車だったんですから！

ミサト

車はお友達のものらしいわ

アスカ

な、なんでそこまで…

ミサト

リョウジが慰謝料請求するために相手のことも調べたんですって

ミサト

興信所って言うんですっけ？

ミサト

素行調査をしてもらったと言っていたわ

ミサト

離婚する準備は万端らしいわよ

アスカ

そんな…うそ…

ミサト

私もあなたが浮気したのが嘘なら嬉しかったんだけど

ミサト

あなたのこと、結構好きだったから

ミサト

残念だわ…

アスカ

だけど私、まだリョウジ君に何も言われてない

アスカ

証拠も持ってるなら、どうして何も言ってこないの

ミサト

本当は、あなたがお金を送ってほしいって言ってきた日に

ミサト

離婚を言い渡すつもりだったらしいけど

ミサト

私が今日まで伸ばしてもらうよう頼んだの

アスカ

なんでそんなことを…

ミサト

もしかしてあなたに事情があったんじゃないかって思っただけ

ミサト

私の見る目がなかったわ

ミサト

リョウジがもうすぐ帰ってくるはずだから

ミサト

あとは2人で話して

～次の日～

アスカ

お義母さん！お願いです！

アスカ

リョウジ君を説得してください

ミサト

一体なにを説得しろって言うの

アスカ

リョウジ君ったら

アスカ

浮気相手だけじゃなくて

アスカ

私にも慰謝料請求するって言うんです！！

ミサト

そりゃあ浮気したのなら慰謝料請求されても仕方ないんじゃない？

アスカ

でも

アスカ

私お金ないですし

ミサト

なら働いて支払うしかないわね

アスカ

だけど

アスカ

私が浮気したくなるようなレベルのリョウジ君も悪いと思いませんか？

ミサト

すごい言い分ね…

ミサト

私は2人がどんな関係を築いてきたかはわからないけど

ミサト

でも浮気するレベルの女性を捕まえてきたあの子にも

ミサト

たしかに問題はあるわね…

アスカ

ちょっとお義母さん！

アスカ

それどういう意味ですか！

アスカ

今までは何かあっても絶対私の味方をしてくれてたのに

ミサト

それはあなたがあの子のお嫁さんだったから

ミサト

離婚届は昨日提出したんでしょ

ミサト

もうあなたとは話したくもないの

アスカ

リョウジ君、お父さんお母さんにも浮気のことバラしちゃうし

ミサト

離婚するにあたって事情を説明しただけでしょう…

アスカ

自業自得だから、お母さんもお父さんも助けてくれないって

アスカ

私、専業主婦だったから、仕事もないし…

アスカ

お金もないから、住む場所にだって困ってるんです

アスカ

お義母さん、お金を貸してくれませんか？

ミサト

赤の他人であるあなたに、貸すお金はありません

アスカ

いきなり冷たすぎませんか？

ミサト

それほどのことをあなたはしたのよ

ミサト

もう連絡もしてこないでちょうだい

アスカ

そんな…

アスカ

浮気してもリョウジ君なら許してくれるって思ってたんです

アスカ

リョウジ君の元に帰るなら許してくれるかなって

ミサト

あなた、自分の行動がどれだけリョウジの心を傷つけたか理解してないの？

アスカ

だから謝ったんですよ…

アスカ

でも許してくれなくて

ミサト

許されないことをしたってこと

ミサト

本当に悪いと思ってるなら、一生懸命働いて返しなさい

ミサト

私はもうあなたと話すこともないし、もう連絡してこないでね

アスカ

お義母さん

アスカ

私の話をきいてください！

ミサト

今更何を言われても信じられないわ

ミサト

元気でね

～後日談～

ミサト

私は息子の話を聞かずに暴走してしまったことを謝罪しました

ミサト

アスカさんは離婚について散々ごねたようですが

ミサト

息子も付き合ってられないと、放置して出て行ったそうです

ミサト

今は慰謝料返済のために工場で昼夜働いていると聞きました

ミサト

また性懲りもなく出会いアプリで自称社長に引っ掛かり、借金を抱えてしまったようです。

ミサト

息子や私の所に助けて欲しいとLINEが来ましたが、もちろん無視しました。

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田中俊樹

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