しろせんせーの受難(幼児化)

ボビーが指さす方には、チュロスを売っているワゴンが止まっていた

先程から甘い匂いがすると思ったらあれだったようだ。

盛大に噛んでしまったのに気づいて、固まるボビー

いつもならからかっていじってくるりぃちょが、優しく尋ねていた

喜ぶボビーを見て、キャメさんと顔を見合せた

どうやら同じことを考えていたらしい

2人で笑いながら話していると、ボビーが僕の洋服の裾を引っ張って、こちらを見ていた

完全に無意識だった

自分がボビーの話をしてる時にどんな顔をしてるのかなんて、考えたことなんてなかった

なんて説明したらいいものかと考えあぐねていると、チュロスを持ったりぃちょが速歩で帰ってきた

ボビーの意識がチュロスに向かってくれて正直ホッとした

ボビーの手には、少しちぎられたチュロスが握られていた

ボビーの後ろに視線をうつすと、チュロスを握ったりぃちょがこまった笑顔でこちらを見ていた

どうやら、りぃちょも押し付けられたらしい

小さな口で、チュロスを頬張る姿はリスみたいですごく可愛かった

食べ終わったらしいボビーを見ると、顔面全体に砂糖とシナモンがついていて、凄いことになっていた

そう言うと、りぃちょはカバンの中からウェットティッシュを取りだして、ボビーの手と顔を拭き始めた

僕らから褒められることなどほとんど無いりぃちょは少し恥ずかしそうにしていた

片付けも終わったので、とりあえずメリーゴーランドへ向かうことにした

僕は、ボビーに手を引かれメリーゴーランドの中へと入っていった

僕は先に白馬に乗って、ボビーを抱えて前に座らせた

そんなことを話していると、ゆっくりとメリーゴーランドが動き出した

僕は、ボビーが落ちないように片手で腰を抱いて、もう片方の手で手すりを掴んでいた

こんなものに乗るのは何年ぶりだろうか…

もう記憶にないほど昔だった

そういって俯いた顔が、元のボビーのものと同じ表情に見えた

頬を染めて、まぶたを伏せて少しだけ下を向いている横顔

僕が好きな顔だった

気づいたことを口にする前に、メリーゴーランドが止まった

ニコニコと笑ってこちらを向いているボビーだが、少しだけ変化してるように感じた

頭に浮かんだ考えを払拭するように、僕はボビーの手を引いてメリーゴーランドを後にした