家や草木が燃える音
逃げ惑い、恐怖に震える人々の声
砂埃の混じった生暖かい風
そこら中に充満する血の匂い
そして目の前には
事切れて動かなくなった姉の姿
夜
夜
悲痛な叫びはただ空を切るだけだけだった
遊
夜
夜
夜
遊
遊
夜
夜
僕と姉上は、いわゆる"姫"と"王子"である
この国を収める王の子である僕らは、多方面から厳しく躾られてきた
それ故、外で姉上を名前で呼ぶ事はほとんど無い
今僕らの国は経営が傾き、不安定な状態にあった
周りの数カ国との戦争も相次いでいる
何とか崩壊せずに済んでいるが、それも時間の問題だろう
夜
遊
遊
夜
夜
遊
遊
夜
夜
遊
姉上は強く美しく、まさに理想の騎士だ
この国で一番の剣技を持つ姉上に、当然ながら僕は一度も勝てたことが無い
男として情けなくなるが、弟としては誇らしい
こんな立派な姉を持つ僕は相当な幸せ者だ
遊
遊
遊
訛っているはず無いじゃないか...
そうは思っても、僕の剣を姉上に見て貰えるのは嬉しかった
だからどんなに負けたって、ボコボコにされたって
僕が誘いを理る事は無い
夜
遊
遊
夜
遊
ピタリと風が止み
剣が交わる音が響いた
夜
夜
夜
夜
動かない亡骸を抱き寄せ、その重たい体に愕然とする
流れ出る血は熱く、手に触れる肌は冷たい
開かれているのに、その瞳にはこの世の何も写してはいなかった
溢れる涙を拭うのも忘れて叫び喘いだ
遠くの方から僕を呼ぶ声がする
立ち上がらなければならない
この国を救えるのはもう僕しか居ない
どうして、どうして僕じゃなかったんだ...
夜
夜
右手を強く握り締め、骨ばった拳を地面に叩き付ける
鈍い痛みが走ったが、そんなの気にしていられない
血が滲む程何度も拳を叩き付け、しばらくして歪む視界の端に光が見えた
ついっとそちらに視線を向ければ、姉上の足元にそれは存在していた
夜
姉上をそっと地へと降ろし、輝く銀に手を伸ばす
カチンと綺麗な音で鳴いたそれは、姉上の剣に間違い無かった
ギュッと柄を握り、美しい姉上の剣を空へと翳す
夜
遊
遊
遊
夜
夜
遊
遊
遊
遊
遊
夜
遊
遊
遊
遊
遊
遊
遊
遊
遊
夜
夜
遊
遊
夜
夜
夜
重い腰を上げ、足の裏を地に付ける
手には姉上の剣を
視線は真っ直ぐ前に
夜
夜
そう呟いて、思わず口元に笑みを浮かべる
夜
夜
夜
夜
夜
爆発音の中心へ向け、僕は地面を蹴り出した
〜fin〜
コメント
9件
チーペペさぁん(´・ω・) なんで遊ちゃん、すぐシんでしまうのん……(´・ω・) 悲しい……悲しい……(´・ω・)