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雨降る暗い家

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雨降る暗い家

1 - 雨降る暗い家

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2020年09月09日

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目が覚めたのは、六畳ほどの畳の間。

窓にはシャッターが掛けられてるが、下から10センチ弱隙間が空いている。

もう少し上げようにも、そもそも窓が空かない。

晴翔

どうしたらいいんだ…

この男、晴翔は自分のおかれている状況が飲み込めない。

目が覚めたらこんな部屋に居たのだ。

晴翔

誰かにつれてこられた?

晴翔

でも部屋に誰もいない

晴翔

しかも窓から水の滴る音が聞こえる、雨降ってるみたいだな。

わずかな隙間からさす青白い光が、部屋の中に反射し薄暗く演出する。

晴翔

この部屋以外にも行けそうだ。探索しよう。

するとスマホの着信が。

あかり

晴翔?

晴翔

あかり か?

あかり

あかりか?じゃないよ。

あかり

心配した。

晴翔

まってくれあかり、今緊急事態なんだ。

あかり

どういうこと?

晴翔

誰かに知らない部屋に連れてこられたみたい。

あかり

ちょっと

あかり

大丈夫?いまどこ?

晴翔

わからない

晴翔

シャッターが中途半端に開いてる部屋ってことぐらいしか

あかり

ケガとかしてない?

晴翔

大丈夫

晴翔

でもちょっと寒い

晴翔

この辺雨降ってるみたい

あかり

雨?

あかり

おかしくない?

晴翔

なんで

あかり

今日、全国的に雲一つない快晴なんだよ。

晴翔

でも雨音すごいよ

あかり

天気予報だって絶対じゃないだろうけど

あかり

とりあえずどこにいるかわからない?

晴翔

外の様子がわからないからなんとも

あかり

だから山にいくときは誰かに一言いってって言ったのに、ばか

晴翔

え?

晴翔

山?山に行くって言ったの?おれ

あかり

覚えてないの?

あかり

今度の休み山に行くって聞いたけど、
どこの山にいくかは教えてくれなかったじゃん。

晴翔

悪い、さっぱり覚えてない

晴翔

こんなことになるなんて

晴翔

ごめん

あかり

もう良いから早くその部屋?というか家から出なよ。

晴翔

わかった

晴翔

一旦休止な

あかりとの会話を一旦止め、玄関を探す。

晴翔

あれは…神棚かな?

小さな神棚があり、そこに川魚と藁人形が供えられている。

晴翔

気味悪いな

晴翔

階段はなさそうだ、一階のみの家みたいだ。

リビングには薄汚れた食器や魚の骨が散らばっていた。

晴翔

なんだこれ

晴翔

人が住んでるとは思えない。

急に押し寄せた不安から、玄関のある方へ急ぐ。

廊下や他の部屋の窓のシャッターも、同じく下が少し開かれている。

昼間のはずなのに青白く薄暗い家の中。

晴翔

勘弁してくれ

晴翔

玄関が

晴翔

開かない!鍵が、壊れてる!

晴翔

あかり!

あかり

どうしたの?

晴翔

玄関が空かない

晴翔

怖ぇよ

あかり

おちついて

あかり

スマホつけたままにしといて

晴翔

晴翔

だれだ!

あかり

晴翔

だれだ!

取り乱した晴翔の声が何者かに向けられている。

あかり

晴翔!おちついて

ノイズのように水しぶきや、水が打ち付けられる音が邪魔をする。

晴翔

ごめんなさい、すみません

晴翔

もう汚しませんから

晴翔

痛い、痛いい

水の音に混じり、男のような女のような区別のつかない唸り声が聞こえる。

晴翔

あかりぃあが

あかり

晴翔!

その直後、水の音が激しさを増しそれを最後にスマホの通信は切れた。

それから二ヶ月後、都心から離れた山奥。

その山奥にある滝。 その滝壺の裏に隠れるようにポツンと建立された一軒家があった。

水飛沫が掛かる妙な立地の建物は、山の麓の人も近づかない。

しかし、持ち回りで管理してる麓の者が最近見に行った際、

家の中は水浸し、その奥に水にまみれた、辛うじて人とわかる死骸が転がっていたという。

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