テラーノベル
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家族と別れた日。 桜花祈愛(サファイア)は車に乗っていた。 窓の外を見る。 もう。 誰もいない。
アメジストも。
アレキサンドライトも。
ダイヤモンドも。
みんな。
いなくなった。
サファイア
サファイアは静かに俯く。 泣かない。 泣いたら。 みんなが心配するから。 いつだってそうだった。 自分より。 家族の方が大事だった。
車が止まる。
父親
大人に手を引かれる。 目の前には普通の家。 大きくもない。 小さくもない。 どこにでもある家だった。 玄関が開く。
女性はしゃがみ込む。
母親
優しく笑った。 サファイアも少し笑う。
サファイア
その夜。
母親
母親
サファイアは顔を上げた。
サファイア
母親
母親
母親
静寂。
母親
桜花祈愛。
母さんがくれた名前。 大好きな名前。 だけど。 女性は優しく笑っていた。
母親
サファイアは少し考える。 そして。 頷いた。
サファイア
サファイア
女性は嬉しそうに笑う。
母親
サファイア
母親
母親
サファイアは目を丸くする。 家族。 その言葉に胸が少し温かくなった。
サファイア
母親
サファイア
母親
その日。 サファイアは少しだけ安心した。
それから一か月。 お母さんは本当に優しかった。 学校の話を聞いてくれる。 一緒に料理をする。 髪も結んでくれる。 サファイアは少しずつ。 この家を好きになっていた。 だけど。 夜だけは違う。 引き出しから写真を取り出す。 そこには。 愛麗。 アメジスト。 兄弟たち。 みんなが笑っていた。
サファイア
涙が落ちる。 今の家族も好き。 でも。 会いたかった。 みんなに。 すごく。 会いたかった。
その日の朝。
サファイア
サファイアは玄関を出る。
母親
お母さんが笑う。 それが。 最後だった。
放課後。 家の近くが騒がしい。 救急車。 人だかり。 嫌な予感がした。 胸が苦しい。 足が震える。
サファイア
家の前に救急車が止まっていた。 知らない大人たちがいる。 そして。
近所の人
近所の人が泣いていた。
近所の人
その瞬間。 世界が止まった。
まただった。 また母親が死んだ。 どうして。 どうして私なんだろう。
葬儀の日。 お父さんは何も話さなかった。 何も食べなかった。 何も笑わなかった。 ただ。 俯いていた。
数日後。
サファイア
サファイアが声をかける。 すると。
父親
さらに数日後。
サファイア
父親
冷たい声。 サファイアは固まる。 今まで聞いたことのない声だった。
そして。 ある日。
父親
サファイア
父親
父親
サファイアの顔から血の気が引く。
サファイア
言えなかった。 本当のお母さんも死んだ。 今のお母さんも死んだ。 だったら。 私が悪いのかな。
それからだった。
「その髪を見ると腹が立つ。」 「気味が悪い。」 「その目も嫌いだ。」
母さんが綺麗だと言ってくれた髪。 母さんが好きだと言ってくれた瞳。 全部。 否定された。
その夜。 鏡の前に立つ。 長い髪。 母さんが好きだと言ってくれた髪。 養母も。
「綺麗な髪ね。」
そう言ってくれた。 だけど。 今は違う。 桜はハサミを持った。 そして。 髪を切った。 ばさり。 ばさり。 床に落ちていく。
サファイア
サファイア
そう呟いた。 でも。 翌日。
「うわ。」 「何その髪。」 「変なの。」
学校でも笑われた。
帰り道。 一人だった。 いつも一人。 昔は違った。 九人でいた。 賑やかだった。 だけど。 今はいない。 誰も。
男子
突然声をかけられる。 知らない男子たち。 年上だった。
男子
男子
桜は立ち止まる。 聞き慣れた言葉だった。 家でも。 学校でも。 何度も聞いた。 だから。 いつもなら我慢した。 でも。 その日は違った。
胸の中に溜まっていたもの。 悲しみ。 寂しさ。 苦しさ。 全部。 全部。 溢れた。
気付けば。 相手たちは逃げていた。 桜は一人で立っていた。 息が荒い。 心臓がうるさい。 だけど。 不思議だった。 怖くなかった。
家に帰る。
父親
養父の声。
サファイア
父親
冷たい声。 桜は俯いた。 何も感じない。 感じないようにした。
それから。 絡まれたら戦った。 悪口を言われたら戦った。 自分を守るために。 誰も守ってくれないから。 自分で守るしかなかった。
小学三年生。 桜は有名になっていた。
「喧嘩が強い奴。」 「怖い奴。」 「近寄るな。」
また嫌われる。 また一人になる。 でも。 平気だった。 平気なふりをした。
女子
クラスメイトが声をかける。
サファイア
桜は笑う。 いつも通り。 優しく。 明るく。 誰も知らない。 その笑顔が嘘だということを。
夜。 部屋。 引き出しを開く。 写真を取り出す。 母さん。 アメジスト。 アレキサンドライト。 みんな。 笑っている。
サファイア
涙が落ちた。 昼間は平気。 一人でも平気。 嫌われても平気。 そう言い聞かせている。 でも。 本当は。 違う。
サファイア
写真を抱きしめる。 長女が言っていた。 「絶対迎えに行く。」 桜は目を閉じた。
サファイア
サファイア
涙が止まらなかった。 どんなに強くなっても。 どんなに戦えるようになっても。 桜はまだ。 家族を探している。 ただの小さな女の子だった。
コメント
1件
うわ……第8話、胸がぎゅってなったよ……。 サファイアが「桜 遥」になって、新しいお母さんに少しずつ心を開いていくところ、すごく温かかったのに、またお母さんが亡くなっちゃうなんて……。 「お前が来てから母さんは死んだ」って言葉、重すぎるよ。それでも笑顔でいるサファイアの強さと寂しさが切なくて、写真を抱きしめるシーンでもう涙止まらなかった。 「まだ待ってる」って言葉に、彼女の本当の気持ちが詰まってた。次が気になる……!
「選ばれたのは私だった」
コムム
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すん
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