この作品はいかがでしたか?
722
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722
─ねぇ、あなたは
お蔵入りにした作品ってある?
私は、数えられないほど。
でも、やっぱり
あの作品だけは
今もまだ、深く心に残ってるの─
1年前:春
南 桜良
南 梅香
南 桜良
南 桜良
南 梅香
南 梅香
南 梅香
南 桜良
南 梅香
南 桜良
南 梅香
南 桜良
私の妹・桜良は
優しく、お淑やかで
みんなの人気者だった
一方、姉である私は
無愛想で口が悪く
高校中退という傷を負っていた
私は周りにとって
桜良との比較用メーカー
誰も私を見てくれない
それは、小説でも。
桜良は17歳で小説家デビュー。
そして、19歳で新人賞受賞。
それに比べて私は
17歳で高校中退。
入社3ヶ月で会社をクビ。
26歳でシナリオライターを始めるも
仕事は全く回ってこず
だから、桜良と共作なんて
私のプライドが許さない
南 桜良
南 梅香
南 桜良
南 梅香
南 梅香
南 桜良
南 梅香
南 桜良
南 桜良
南 梅香
南 桜良
南 桜良
桜良が、
ここまで頼み込んでくることは
今までなかった
そのせいか
私は渋々ながら
共作の話を了承してしまった
南 桜良
南 梅香
南 梅香
南 桜良
桜良と共作にかける時間は
悔しいけれど、楽しかった
1年後
桜良、遅いな...
今日は、出版社に
作品を持っていく日なのに...
もしかして、忘れてる?
いや、桜良に限ってそんなことはないか...
桜良に電話をかけようとした、その時
私のスマホの着信音がなった
画面にうつる〝非通知〟の文字
南 梅香
???
南 梅香
???
南 梅香
南 梅香
???
なんだか、嫌な予感がした
そして
その予感は的中した
白衣の女
白衣の女
南 梅香
南 梅香
桜良の頬は
信じられないくらい冷たかった
南 梅香
白衣の女
白衣の女
南 梅香
白衣の女
白衣の女
白衣の女
南 梅香
白衣の女
白衣の女
その時、私はやっと気づいた
桜良が、共作をやりたがっていた意味に
白衣の女
白衣の女
南 梅香
南 梅香
小さな部屋に、
私の声が響き渡る
低く、掠れた声
あれから、半年が過ぎた
あなたが死ねばよかったのに、と
泣きながら母に言われた
お前が代わりに死ね、と
物凄い剣幕で父が言った
私は、今度こそ
誰からも必要とされなくなった
ピラッ
南 梅香
数枚の紙を拾い上げる
それは
今は亡き、妹と書いた
最初で最後の小説だった
南 梅香
ペラッ
南 梅香
南 梅香
小説の後ろに
1枚の紙がクリップで留められていた
南 梅香
それは
私宛の手紙だった
愛しい愛しいお姉様へ_
元気にしてる?
私は今、手術のことで悩んでる
手術を受けないと、死んでしまう
だけど
手術を受ければ、手が使えなくなっちゃう
どっちにしろ
私の作家としての生命は終わる
だから、最後に
お姉ちゃんと共作したかったんだ
私ね、お姉ちゃんの作風
大好きだったよ
もちろん、お姉ちゃん自身のこともね
私が死んじゃって
お母さんやお父さんに
何か言われるかもしれない
だけどね
これだけは忘れないで
私は
何があってもお姉ちゃんの味方だよ
どんなお姉ちゃんでも
お姉ちゃんは、お姉ちゃんだから
ずっとずっと、大好きだよ
南 梅香
南 梅香
泣いた、涙が枯れるまで泣いた
泣いた、泣き続けた
もう泣かないって、決めたのに
決めたのに
どうして涙は零れるのだろう
プライドなんか捨てて
最初から桜良と
小説を書いていればよかった
なんで、どうして気づかなかったのか
私の味方は
すぐ、近くに
隣に
居たっていうのに。
世界は
なんて残酷なんだろう
後悔だけが
募って、募って
もう遅いと、分かっているのに。
司会者
司会者
司会者
あれから、5年の時が過ぎた
私の実体験を書いた
「最初で最後の君物語」は
日本中、いや
世界中の人々に影響を与えた
家族の尊さ
愛おしさ
桜良はそれを教えてくれた
あなたと2人で書いた、あの小説
あれは
まだ
私の胸に
深く
深く
残ってるわ
ありがとう、桜良
「最初で最後の君物語」
end
コメント
20件
最期鳥肌たちました! 感動です😭
ただいま目が潤っております (இдஇ; ) 妹の存在が姉に、世界に大きな影響を与える…妹凄い!それを小説にした姉も凄い!何よりこの感動ストーリーを書いた黒腹さんが凄い!!