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最高です最高。まじ。うん。 名前凄い!!僕の名前も考えてほs((殴 続き待ってます!!
師匠! あの月希です! アカウント移しました〜 てか名前のセンス光ってますね(*´꒳`*)ヨキヨキ
後悔なんて、本当にしたくはなかった
聞こえてくる機械的な呼吸音。
それは俺の心をぐっと殴ってくる。
彼に触れる左手は、あったかくて。 まだ温もりが全然あって。
“樋前夏樹”こと、暇72を、 俺は乾いた瞳で見つめていた。
いるま
いい名前だと、ずっと思っていて、
それに比べて売春婦が産んだ、 適当な名前、
“入野真緒”。
なつのその、特別な、 気持ちの込められた温かい名前が 羨ましくて、
あいつのが年下だってのに、 ずっと尊敬してて、
体は弱かったけど、 誰よりも元気でいて、 誰よりも笑っていて、
誰よりも心が大きくて、 誰よりも、誰よりも、
優しくって。
そんなお前が、あと三ヶ月ほどで 世界を断つと考えると、
悔しさに次ぐ後悔で、 自分の過去に、苛立ちが込み上げる。
それと同時にいなくなる事実に対する 涙も出てきて
腹の奥の方が、すごいあつかった。
あーもう、会えなくなるのか。
じゃあ生きてる間でも、 こいつを幸せにしてあげよう。
これからどこにいっても、 こいつがみんなと違うからって
たった1人でメソメソ泣かないように
俺らが隣にいてあげよう。
こいつが嬉しくて、幸せな時は
俺らが幸せな時以上に それを祝ってやろう。
なぁ、ほら。
このまんま目を瞑ってんじゃ 楽しいことも楽しくないだろ?
なぁ、なつ…いや、“夏樹”。
俺のため、いや…みんなのために…
いるま
暇なつ
…夏樹。
そう、呼ばれてるきがした。
誰の声だろ、…?
『ねぇ、夏樹、
ーーーーと一緒に散歩に 行こっか。 今日春だしあったかいよ』
誰?
白い光に包まれた瞼の裏。
恐る恐る目をひらけば、 笑って俺に手を引く、
暇なつ
がいた。
かあ、さんはもう…病気で…
遠い空、しろいくもがうかぶ。
ふわり、ふわり、と。
母さんの、ワンピースのフリルだって
ふわりふわり。
暇なつ
『ほらいくよ!』
伸ばされた手をゆっくりと掴んだ。
ぐっと引っ張られると、宙を飛んだきがして。
しばらく俺はそのまま歩いた。
それも母さん一緒に。
一つの海の前に行くと、そこには。
『おー!夏樹!』
『あ、愛夏、夏樹を連れてきてくれてありがとな。』
暇なつ
と、愛夏と母を呼ぶ父さんがいて。
2人は俺の横に立って、
俺に笑った。
『夏樹、お前には今大切な人がいるだろ?』
『またこうやって、家族で 手を繋いで海を見るのもいいが… 親の俺からしたらその大切な人を笑顔にしてやってほしい。』
『夏樹ごめんね。』
『元気な体に産んであげれなくて…。 本当にごめんなさい。』
『…でも、夏樹はすごい優しいから、いつも許してくれたね。 今はその優しさで大切な人を守ってあげて。』
大好きだよ。 夏樹。
手にはまだ両親の暖かさがあった。
パッとその場が明るくなると さっきまで手を繋いだ両親は消えていて砂浜にたった1人
俺だけが残った。
暇なつ
その砂浜は真っ白で、
そこには波が、打たれる音と、
俺の慟哭だけが響いていた。
ふっ、とゆっくり目を覚ます。
白い蛍光灯がやけに眩しい。
ぎゅっと握られてる右手。
そこにいたのは、
暇なつ
樋前 夏樹
“ひまえ なつき”
2月9日 母、愛夏 父、悠醒 の下に産まれた。
夏樹の夏には、 母である愛夏が、 『私と同じ字を入れたい。』 『夏、って暑いでしょ?』 『やっぱ男は熱くなきゃ、』 という、意味がある。
そして夏樹の樹には、 父である悠醒が、 『病気を持って産んでしまったが、 大きく、太く、大樹のように 育って欲しい。』 『そして地に根を張るように、 たくさんの人を支えて欲しい』 という意味がある。
樋前夏樹の脳に刻まれた 短くとも幸せな両親との時間。
忘れたくない、宝物であった。