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小さな意思

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小さな意思

1 - 小さな意思___プロローグ

♥

100

2022年10月18日

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深い眠りだった

眠っている時は嫌な事も全部忘れる

このまま、寝てるまま、

消えてしまえばいいのに、と

何度思った事か

そんな儚い私の夢を

神様が叶えてくれるはずも無く━━━━━━━

そもそも、神様に頼ってるのがいけなんだろうが

そんな事を考えているうちに

保健室の先生

そろそろ時間ですよ

あぁ、 終わってしまった

今、1番聞きたくない言葉だ

私の時間が、終わってしまった

そんな事を思いつつ、まだ起きようとする意思はない

そんな私の考えなんて知らずに

シャッ、と勢いよくカーテンを開ける音がした

保健室の先生

顔色はよくなりましたね

その声と共に、私の目は反射的に開いた

その顔を見て1番最初に思った事は

綺麗、だった

自分でも馬鹿らしいと思う

白く透明感のある肌

ほっそりとした腕

キリッとまるで、強い意志がある様なそんな目をしていた

私を覗き込む顔に見蕩れていたが

何か話さなくては、と咄嗟に言ってしまった

あ…はい、だいぶ良くなりました

本当は全然そんな事無いけど、

口が勝手に動いてしまった

ずっと、ここに居たいなど言ったって

きっと先生を困らせてしまうだけだろう

保健室の先生

それなら良かったわ

この人は、笑顔まで綺麗だ

まるで、ずっと私は貴方の味方ですよと言ってるような

優しく、強い笑みだ

この笑顔をずっと見ていたい

貴方の笑顔を見ていると、心が救われた様な気がする

これは幻覚では無い、

確実にそうだと、証拠はないけどいいけきれる

保健室の先生

じゃあ、準備して帰りましょうか

…分かりました

明日も、ここに来よう

明日も、明後日も、明明後日も、

卒業するまで、ずっと居よう

支度を終えて、保健室を出ようとした時だった

保健室の先生

また、辛い事があったらいつでも来ていいからね

保健室の先生

その、嫌じゃなかったら話だって聞くわよ

…!

この人は、なんていい人なんだ

黒く、自分の事しか考えてない人ばかりと居たから

その優しさに触れただけで

私は、幸せです

はい…また、来ます!

今日は、ありがとうございました

人の目を見てお礼する事は

あまり無かったので

少し、もどかしくなり

お辞儀をしてそそくさと保健室を出た

━━━━━━━━後ろに、優しい視線を感じながら

玄関前に着くと

一気に現実に引き戻された気がした

憂鬱な気持ちのまま鍵を開けて

恐る恐るドアノブに手を掛けた

ガチャ━━━━━━━━━━━━━━

白い照明の光が眩しいくらいに差してきた

リビングにはお母さんとお父さんの笑い声

いつも通り

だけど

いつも

息苦しいのは何故だろうか

お母さん

テストの点数どうだった?

お母さん

零の事だから全部90点台だわろね?

笑みを浮かべているが、圧を感じる笑みである

う、うん…

本当は80点台が1個あったが

お母さんの落胆した顔が見るのは嫌なので、

ごくりと唾を飲んで

必死に自然な微笑みを浮かべた

お母さん

まぁ…!良かったわ!

お母さん

流石零ね!

ほっとしたように、

満面の笑みを浮かべていたので

言わなくてよかったな、と

心の底から思った

言わなかったらどうなっていただろうと、

考えるのが怖かったので、

現実から逃れる様に、

自分の部屋へ駆け込んだ

バタン━━━━━━━━━━━━━━

勢いよく扉を閉めて

自分の机に蹲った

あぁ、

こんなに息苦しく

求められるものと

現実の差を感じて

まるで自分の人生が、

誰かに操られてる

マリオネットの様になったのはいつからだろうか

いつからか、

テストを返される時の先生の顔色、

テストを見せた時の親の顔色を伺って

自分を自分で

小さな籠の中に閉じ込めるようになってから

天と地をひっくり返したように

つまらなく、平坦で

笑いのない人生へ変わっていった

自責を繰り返し、

心がボロボロになってからでは

もう遅いのである

ふふっ、と自嘲的な笑みを浮かせべて

また、眠りについた

この作品はいかがでしたか?

100

コメント

4

ユーザー

うわぁぁ辛いやつ、、 最高でした!!

ユーザー

本日、2022年、10月18日、初投稿です。

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