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彼女こそが、「赤い扉の透子さん」に間違いない
透子
彼女は後ろ手で扉を閉めると、私の全身をくまなく見定める
その表情は、ニヤニヤとした笑みに覆われている
透子
透子
私
透子
彼女は、私が負った傷をその数まで正確に把握していた
あの僅かな時間で、しかも服の上からだ
私
透子
透子
透子
透子
透子さんが指をパチン、と鳴らした瞬間、体が軽くなった――それまで全身を苛んでいた苦痛が、嘘のように消えてしまったのだ
背中の鋭い痛みも、腹部の鈍い痛みも、鎖骨のじんじんする痛みも、踵のずきずきする痛みも、すべてなくなってしまった
もはや体の一部となっていた「痛み」が消えてしまったことに困惑し、私は言葉を失った
私
唐突に訪れた解放感を、どう受け止めていいのか分からなかった
ただただ楽になったのが嬉しくて、涙が勝手に零れてきた
透子
透子
私
嬉しさと同時に懐疑心も湧き上がってきた
どうして彼女が私の傷を治してくれるのか
その行為に一体どんなメリットがあるというのだろう
透子さんは質問に答えない
代わりに、尊大な口調で言う
透子
透子
私
予想もしなかった一言に、私はますます混乱してしまうのだった
そもそも私が透子さんのもとを訪れたのは、傷だらけの現実に耐えられなかったからだ
どうにもならない現実から逃れたくて、透子さんと自分を入れ替えてもらおうと思った
確かに透子さんの不思議な力で全身の傷が消え去り、それだけでだいぶ生きずらさは払拭された
だが、根本的な問題が解決したわけではない――現実の世界に戻ればクラスメイトがいるし、家に帰れば親がいる
傷が消えても、その原因までは消えない
透子
透子
透子
私
透子
透子
透子
主
主
主
主