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翌朝。
赤くんの姿を見たくなくて、私は登校時間を遅らせた。
いつもより1本遅い電車。駅までの道も変えて、教室にもギリギリに入った。
けれど_そこに、彼はもう居た。
赤 。
昨日と変わらない、優しい笑顔。
でも私は、もうその笑顔をまっすぐに見られなかった。
橙 。
精一杯、平静を装った。
赤くんは、昨日のことを何もなかったかのように接してくる。
まるで、普通の"仲良し"の関係のままで。
赤 。
橙 。
橙 。
赤 。
赤 。
"なんでも"って、なに?
あなたのことで悩んでるんだけど、それも聞いてくれるの?
心の中でそう呟いて、私は視線を逸らした。
放課後。
私は学校近くのネットカフェに立ち寄った。
目的は、スマホの位置情報をオフにし、新しい連絡手段を調べるため。
今のままでは、どこで見られているかわからない。
彼の目が、どこまで届いているのかも。
逃げなきゃ……
初めて、心の中でそうはっきり思った。
でも、怖い。
彼はすべてを"優しさ"で包んでくる。
恐怖を言葉にすれば、自分が悪者なる気さえしてしまう。
だけど、心の奥にあるこの感覚は、間違いじゃない。
あの夜、ベランダにいた赤くん。
あのとき確かに、私の"境界線"は踏み越えられた。
私はもう、彼に心を許してはいけない。
静かに、誰にも気づかれないように。
彼の目を盗んで、少しずつ_逃げる準備を始めよう。