ハラム
ハラム
ハラム
目を覚ますと私は布団の上にいた。布団から飛び起き、辺りを見回した。 そこは8畳くらいの部屋で、布団が3つあった。その布団は川の字で並べられており、私は真ん中で寝ていた。その左にしのぶ、隣に、女の人が眠っていた。 その女の人の枕元にあの黒い服の人達が着ていた服が綺麗に畳まれていた。私達の血に汚れていた服は、淡い紫色の綺麗でいい香りの服になっていた。しのぶもその女の人も同じ服を着ていた。 戸がガラガラと開いた。そこから小さいおばあさんが出てきた。 おばあさんは「お目覚めになりましたか、よかったです。おはようございます。」と言った。 時計を見ると時刻は7時をまわっていた。 おばあさんは「お食事の用意ができております。冷めない内にどうぞ。」と言った後に、ゆっくりと音をたてないように戸を閉めた。 私は困惑した。 ここは?あれは夢? しのぶ、お父さんは?お母さんは? しのぶがうーんと可愛らしい声をあげて、飛び起きた。「ママ!パパ!?」大きな声で言った。その大きな声のせいで、女の人も起きた。 女の人は私達を見て目を輝かせた。女の人は「目が覚めたのね!よかった!悲鳴嶼さんも心配してたのよ。」と、大きな声で言った。 悲鳴嶼さん?誰?鬼の首を潰したあの?大きな斧を持っていたあの人? あの時の光景が頭に鮮明に蘇る。 あの赤い血に、あの鬼の姿。お父さんとお母さんから聞こえたあの人をむさぼり食う音。 私は発狂しそうになった。 必死に声を殺した。 私がしのぶを守るんだ。 こんなとこで泣いちゃいけないんだ。 私が大人にならなくちゃいけない! 耐えて、私! 私は冷静を取り戻し、問いかけた。 「悲鳴嶼さん?」と言った後に、彼女は自慢げに話してくれた。 私達はおばあさんが用意してくれたご飯を食べながら話をした。(ちなみにメニューは米と大根の味噌汁と、卵焼きに、焼き鮭と、お新香だった。) 鬼殺隊のこと、呼吸、柱、そして、鬼のこと。 彼女は隠(かくし)という鬼殺隊の一員らしい。隠とは鬼殺隊が戦った後を片付ける事後処理の役目をしている。鬼殺隊は、政府非公認の組織だ。死体とかを残すと後々面倒くさいらしい。 それに、死体をずっと放置していると、腐るし、血の匂いに誘われた鬼に食われて、遺族へ骨を渡したり、骨を納骨できなくなる可能性がある。 だからあの日お父さんとお母さんは持っていかれたんだ。 しのぶは困惑していた。しのぶはまだ6歳だ。無理もない。 最近まで、箸も上手に持てなかったんだから。 隠の方の名前は西宮さんと言うらしい。西宮さんは私達の家の事後処理をおこなった後に、私達を近くにあった藤の花の家紋の家に運んでくれたらしい。 藤の花の家紋の家とは、鬼狩りに命を救われた一族であり、そのお礼として、無償で鬼狩りに尽くしてくれる一族らしい。 私達がご飯を食べ終わると、おばあさんが食器を回収しに来てくれた。 おばあさんの名前はひささんと言うらしい。(ここはかまぼこ隊が一度泊まったあの家だった。) ひささんはお皿をお盆にのせて、部屋を出ていった。 私は西宮さんにもっといろんな事を教えてもらった。 私は泣いた。泣いていた。 涙が畳にポタポタと垂れた。 西宮さんはおどおどしている。 なぜ泣いているのか私にもわからなかった。 だけど、ひとつだけわかったことがある。 鬼への同情の気持ちだ。 西宮さんによると、鬼はもともと人間だった。 なのに、同じ人間を食い、美しい朝日を見ることもできない、とても可愛そうな存在。 急に父の言葉が頭をよぎった。 「重い荷に苦しんでる人がいたら半分背負い、悩んでる人がいれば一緒に考え、悲しんでる人がいたらその心に寄り添ってあげなさい。」 鬼だって好きにあの姿になったはずじゃない。 私は救いたい。 鬼から逃げまとう可愛そうな人達も、呪いに蝕まれ、自我をなくしている鬼も、私は全てを救いたい。 私は自分自身を取り戻したように感じた。 数日後 親戚の家で、両親の葬儀が行われた。 幸い、骨にはあまり、損害はなくて、無事に納骨ができた。 しのぶは大粒の涙をポロポロと落としながら泣いていた。 両親の死因は猪に襲われた事故とされた。一般の人に鬼の存在を気づかれちゃいけないからだ。 私は西宮さんの手配で、親戚の家に住むことになった。 親戚の家では私達は邪魔者扱いだった。 炊事洗濯は当たり前。 ましてやまだ小さいしのぶまで家事を手伝わされていた。 しのぶの手に持っているホウキはあまりにも大きすぎていた。 私達の部屋は3畳ある小さな部屋だった。 ホコリは舞い、虫が出て、布団は黄ばみとにかく臭かった。 私達のご飯は親戚の夕飯の残りの冷めて、かたいご飯と、冷たい具なしの味噌汁と、ぬるい水だけだった。 けれど雨風しのげる場所があるだけで幸せに感じた。 半月後 しのぶは泣いていた。 「もう嫌だよ。姉さん。お腹もすいたし、疲れたよ。助けて。」 無理もない。私だって辛かった。 私より小さい妹の方がもっと辛いにきまってる。 私はしのぶの頭を撫でた。髪の毛はがさがさだった。 ふと頭によぎり、私の巾着袋を臭い押し入れから引っ張り出した。その中に入ってた手紙。 私はそれをただ見つめていた。 痩せ細っていた体で、しのぶの 手を握り、逃げ出していた。 親戚は寝ていたため、 気づかれる事はなかった。 体の服はたまにしか洗濯してなかったから汚く、お風呂も一週間に1回あるかないかわからなかったから、体に垢がこびりついていた。 しのぶはあの髪飾りを大切に握りしめていた。 私達は西宮さんの所へ向かった。 藤の花の家紋の家で、手紙を渡されていた。 「もし、困ったことがあったらここに来なさい。」 と、言われ、巾着袋にいれてくれた。 すごく、すごくありがたかった。 そして、手紙の場所につくと、屋敷だった。 大きな屋敷だ。 庭が大きく、草木がおいしげり、池の鯉はスイスイ泳いでる。(ここは獪岳が初任務をおこなったあの屋敷だった。(鬼滅の刃妄想ストーリー壱 雷を受け継ぐ者たち参照)そこで食べられていたあの男は西宮さんのお父さんだった。) 表札には西宮と書いてある。 私は大きな扉を叩いた。 キィィィィィ 扉が音をたてて開くと、西宮さんが出てきた。私は泣いた。 その後、私はしのぶとお風呂に入浴した。暖かく、気持ちよかった。 そして、西宮さん手作りのご飯を食べた。 メニューは塩むすびと、お茶だった。 塩むすびに触れると、まだ暖かく、それを両手に持ち、割った。 中から暖かい湯気がホワホワ出てきた。 食べると、ほどよいしょっぱさで、暖かく、少しだけ芯のあるお米。だけど一粒一粒に形があって、柔らかかった。 私は時間を忘れて食べた。 久しぶりの美味しいご飯。 久しぶりのひろい部屋。 何もかも久しぶりだった。 西宮さんに今までの事を話した。 葬儀のこと、親戚の事を話した。 西宮さんは泣いていた。 言う好機は今しかない。 私はある決意をした。もう、弱いのは嫌だ。もう、しのぶを悲しませない。 私はある思いを告げた。しのぶにも話してない思い。 鬼殺隊になりたい。 それが私の願い。 人々を守る、救う。そんなことを言っても、力がなくちゃしょせんただの綺麗事だ。 私は力がほしい。しのぶを守れる力が。 急に西宮さんの怒鳴り声が聞こえた。 西宮さんはこう言った。 「鬼殺隊はそんな甘いものじゃない!」 「死ぬかもしれない!いや、死ぬ!」 「もしお前が死んだら誰がしのぶちゃんの面倒を見るの!?」 「しのぶちゃんをひとりぼっちにさせる気か!?」 けれど、私の決意は変わらなかった。 西宮さんは私の目を見て怒鳴るのをやめた。 「本当にいいのね?」 私は首を振った。もちろん縦に。 西宮さんはしのぶはどうするか聞いてきた。 私はチラッとしのぶを見た。 しのぶは私には見せたことない凛とした瞳だった。 あの宝石のような瞳に、ひとつの思いがあった。 あの地獄の部屋で交わした約束。 それを守ろうとしてるのだ。 ありがとうしのぶ。 そのまだ幼い声は言った。 「私は姉についていきます。」 西宮さんはその言葉を聞いてニコッと笑うと布団を敷いくれ、部屋を出て行った。 布団は柔らかく、気持ちのよい眠りだった。 翌日 目が覚めると、西宮さんはあの隠の格好をしていた。 西宮さんはまだ寝てるしのぶを起こして言った。 「あんたたち鬼殺隊になりたいんでしょ?なら行くよ!今ならまだ間に合うかもしれない。」 私達は困惑した。 急に服を脱がされ、綺麗な服に着替えさせられ、家を飛び出した。西宮さんは私達を両手で抱えて走った。 とても速かった。 しのぶは聞いた「どこにいくの?」 ビュンビュン流れる風の音であまりその声は聞き取れなかった。 西宮さんは大きな声で言った。 「しっかり捕まってて!あんたたち鬼狩りになりたいんでしょ? ならまず強くならなくちゃ。」 そして、次の言葉で私達の運命を変わった。。いや、運命だったのかもしれない。 西宮さんはこう言った。 「この前、ある伝達が来たの。いる!あんたたちにぴったりの人が!あとはあんたたち次第だけど!」 誰だ? その疑問はすぐに解消された。 「悲鳴嶼さん! あの人なら!」 悲鳴嶼さん?あの人のところへ? 西宮さんは川を飛び越え、木を掻き分けた。 私達は落ちまいと必死に手を握った。 私は目を見開いた。そこは2メートルある深い谷だった。西宮さんに大丈夫?と聞くと、「安心して!」 と言って跳んだ。高く高く跳んだ。 谷を跳び越える最中に、 急にしのぶの方から黒い塊が現れた。 西宮さんはすぐに塊に目をやった。 私も塊を見た。 目を見開いた。 塊と思ったそれは、しのぶだった。 高く、深いところが怖くて手を離してしまったんだろう。 しのぶは奈落の底に落ちていった。 「しのぶ!」 「姉さん!」 そう言いながらどんどん落ちていった。 暗い、暗い闇に落ちていった。 中編 完
コメント
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あなたはなにものでしょうか?天才すぎでは?鬼滅の刃の作者さんでもないのにこんなに最高すぎるストーリーを描くのは……うん、神だ
続き待ってます!ものすっごく‼︎ あ…でも大正時代だから、ママとパパは違うんじゃないですか⁇⁇