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わたしと利音は 男女の双子

お母さん

平等よ

お母さん

あなたたち二人は、何もかも同じなの

そう言われて

育ったのに……

お母さん

はい。こっちは美音の

美音

あ、これ……

お母さん

これは利音ね?

利音

ありがとう

美音

美音

(わたしも)

美音

(水色がよかった)

わたしのコップはピンク

利音のコップは水色

お母さん

二人ともお揃いね?

美音

(違うよ……)

美音

(全然、同じじゃない)

わたし達は分けられる

性別という名の

記号によって

美音

利音と同じ、水色がよかった……

利音

言えばよかったのに

美音

言えないよ

利音

どうして?

美音

だって、お母さん

美音

傷つくし……

利音

利音

そっか……

利音

美音は優しいね?

美音

そんな事ない

美音

素直になれないだけ

お揃いだけど

同じじゃない

わたしと利音の服は

いつも、形が違う

美音

わたしも

美音

ズボンがよかったな

利音

言えばいいのに

美音

……言えないよ

美音

利音が、うらやましい

利音

なんで?

美音

素直だから

利音

そんな事ないよ

利音

僕は美音みたいに

利音

利音

素直じゃ、ないよ

美音

でも優しいし

わたしは机に目を向ける

水色のペンケース

青い消しゴム

車の絵のエンピツ

美音

いつも自分の物を

美音

わたしに譲ってくれる……

利音

……

わたしと利音は

いつも互いの持ち物を 交換していた

お母さんには内緒で

それはきっと、優しい嘘

わたし達だけの秘密

お母さん

美音、利音

お母さん

早く準備しなさい

お母さん

今日から中学生でしょ?

美音

……うるさいなぁ

美音

(お母さんには言えないけど)

中学生になる前

わたしと利音の部屋は 別々になった

美音

(同じ部屋のままで、いいのに……)

女の子と男の子

記号の差は

日増しに大きくなる

美音

寝ぐせ治んないし

美音

これからは、ずっとスカートか。きっつ……

髪の硬さ

身体の丸み

声の高さ

わたしと利音の差は

増してゆくばかり

美音

おはよう、利音

利音

おはよう、美音

利音と顔を合わせるのは ご飯の時

美音

利音、朝からそんなに食べんの?

利音

うん。すぐお腹空くんだよね

美音

わたしはトースト2枚でお腹いっぱい

お母さん

美音は食べ過ぎよ

美音

なんで、わたしだけ!?

利音

あははっ

利音といると楽しくて

ほんの少しだけ

……苦しい

帰りは雨が降った

美音

(傘、持ってこなかったからな……)

ザアザアと視界を遮る 雨を見て思う

美音

(どうしても)

美音

(持ってきたくなかったから……)

利音と交換できなかった

ピンクの傘が嫌で

持ってこなかった

美音

(こんな時、利音なら)

美音

(気にしないんだろうな……)

利音になりたかった

男の子になりたかった

雨は全てを洗い流すと 言うけれど

わたしの悩みを

洗い流してはくれなくて

美音

なんで……だろ?

利音と同じになれなくて

男の子になれなくて

素直じゃなくて

優しくなくて

こんな自分、大嫌い

利音

なにも、泣かなくても……

美音

利音!?

利音

傘、忘れてたよ

美音

……

利音

本当に、おっちょこちょいだよね?美音って

利音

ふふっ

美音

利音……

利音は笑顔がかわいい

利音は、素直で

利音は……優しい

美音

わたし……

美音

利音になりたかった

利音

僕に?

美音

うん

頭のてっぺんから つま先まで

性別も中身も

全部、全部、全部

わたしは利音に なりたかった

利音

僕は……

利音

美音に、なりたかった

美音

どうして?

利音

美音みたいに

利音

かわいい女の子に、なりたかったんだ……

美音

かわいくなんかねぇし

利音

かわいいよ

利音

美音は素直だし

美音

素直じゃねえよ!

利音

そうかな?

利音

僕よりも、ずっとずっと

利音

美音は素直だよ?

美音

美音

じゃあ、代わってくれよ

利音

いいよ

利音

……わたしが美音になる

上手くいくかは分からない

いつかは解ける魔法だろう

美音

僕が利音になる

それでもいい

いつの日か その嘘を

本物に変えてしてしまえば いいのだから

#TELLER文芸部

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コメント

6

ユーザー

「記号」の解釈が素敵でした。 枷を取り払う魔法があくまでも仮初のものあることを暗示させるとともに、それに縋るしか自分らしく生きられない儚さが感じられます。

ユーザー
ユーザー

古典の「とりかへばや物語」を彷彿とさせる、二人の苦悩がひしひしと伝わってくる作品でした。  自分らしく生きることのできる環境、境遇に住む事が出来たら楽なのでしょうが、みんながみんなそんな風に恵まれてるわけでもないわけで… 二人の魔法ができるだけ長く続くことを祈ります。

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