テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
桜が舞い散る、四月の初め。
二冊の物語と小さな花を二輪を、 胸に抱きしめとある場所へと向かう。
?
そう呟き、空中に浮かぶ三冊目の物語の後を、静かに追う。
?
4月『別れ』と『出会い』の季節。
今まで、何度も何十回、何百回と。 色んな人や動物達と別れを告げられ、また新しい出会いをした。
でも…何度出会っても、私の心には癒える事も。 ぽっかりと空いた傷が埋まる事は、無かった。
私は、『海月』名も無かった『海月』
『貴方』に出会うまで、私は名前も大切な物も人も居なかった。
でも『貴方』との出会いで、私の運命は何もかも変わった。
?
そう言い残し、とある場所へと足を進めて行く。
それは、初めて行く場所で『貴方』が居る、居場所。
?
?
?
そう呟き、水色の物語さんを残り二冊の上に重ねるように、 乗っける。
?
小さく『貴方』の名前が書かれた、お墓の前にしゃがみこみ、 被っていたフードを下ろす。
?
?
そう呟き、そっと優しく微笑んで『貴方』の顔を思い浮かべる。
きっと、笑ってくれている。 笑顔で「成長したね、海月さん」って、言ってくれる
言って、くれるはず……よね
ギュッと三冊の物語を、強く握りしめ。 その場で、涙を流す。
?
無意識に、泣いていた事に気づき。 物語さん達を離し、膝に上に乗せ、そっと涙を拭う。
?
?
?
?
だから、私は無理やりでも笑みを浮かべる
それが、私自身を殺す事になっても
?
そう呟きながら、そっと二輪のお花を添え、 三冊の物語を見せるか、見せないか迷う。
?
?
……
返事は、帰って来ない。
でも『貴方』とこうしてまた、お話出来て私は、 幸せよ
幸せなはずなのに…
?
?
?
?
こんな些細な事、叶う訳が無い…
きっと『貴方』なら、この二輪のお花の花言葉も わかってしまう。いや、わかってる
お花が好きだった『貴方』なら、私の気持ちも 花言葉も何もかも、わかっている
?
それでも私は、知らないフリをして。忘れたような感じを出して 問いかける。
?
ギュッとスカートの裾を握りしめ、満面な笑みを浮かべながら、 優しく…寂しそうに呟いた。
?
輪廻くん。私ね『貴方』の事が、好きなの
出会った時から、今も変わらず。ずっと
でも…そんな事言ったら、輪廻くんは優しく微笑んで 「ありがとう。でもごめんね…」って、私を傷つけないように、 優しく振る
それが『貴方』の優しさだと知っているから、 そんな優しさに触れてしまったから。知ってしまったから
?
?
?
バンッと三冊の物語を投げ捨てようっと、 手を伸ばした瞬間───。
───
ふと聞き覚えのある、優しい声が聞こえた。
それは、やけに優しくて。暖かい『貴方』の声。
───
?
───
ゆっくり声をする方を向くと、そこには生前と変わらない姿で、 私の顔を覗き込む『貴方』が居た。
?
?
目を疑いたくなる。
もう『此処』には、居ないはずの輪廻くんが、 私の目の前に居るから。
輪廻
?
震える声色で、何度も『貴方』の名前を呼んだ。
「輪廻くん。輪廻くん」って、何度も何度… 泣き叫ぶように言った。
輪廻
玖良麗───。
久しぶりに聞いた。今の私自身の名前。
輪廻
玖良麗
玖良麗
輪廻
玖良麗
輪廻
玖良麗
そう呟きながら、輪廻くんは三冊の物語にそっと触れる。
輪廻
玖良麗
輪廻
玖良麗
覚えてるに、決まってる
覚えてなきゃいけない事だから
玖良麗
それは、生前『貴方』と約束した、 最初で最後の紙切れの用な約束。
千年前。
輪廻
ぷかぷかと浮かぶ、私を覗き見ながら、 そう呟く輪廻くんをじっと見つめ、水槽から頑張って飛び出し、 人間の姿に近い(?)姿になる。
玖良麗(過去)
輪廻
玖良麗(過去)
輪廻
玖良麗(過去)
輪廻
そう言う『貴方』は、いつも笑って誤魔化していた。
心配させない為に、これ以上被害者を増やさない為に。
でも、私は知っている。
いつも、笑っているけど。本当は、無理をしているのを。
辛くて泣きたいのに、泣かずに私に会いに来てくれるのも。
『貴方』が、いつか。壊れてしまうんじゃないかと、 毎日怯えながら、過ごす水槽の中は孤独と静かな音でいっぱい。
だから…少しでも、力にりたい。
『貴方』を『救いたい』そう想ったから。
玖良麗(過去)
輪廻
優しく撫でられる、頭はただ暖かくて。 寂しく感じる。
いつか、この手も触れる事も触れられる事も 無くなってしまうんだろう…。
人と海月の寿命は、違う。
海月は、すぐに死んでしまう。 でも『貴方』が大切に、大事そうに育ててくれたから、 私はここ数年生き続けられている。
でも……人間は違う。
人間は、何時何処かで死んでも、 亡くなっても可笑しくない生き物…。
いつ、死ぬかわからない。 そんな状態でいつも生きている『貴方』を見る度に 「明日も来るよね?」「死なないよね…輪廻くん」っと 考え込んでしまう。
輪廻
ふと我に帰り、心配そうに私の顔を覗き込む 『貴方』と目が合う。
玖良麗(過去)
輪廻
玖良麗(過去)
本当は、大丈夫じゃない
でも、大丈夫と言い聞かせる
『貴方』に、嫌われたくないから───
輪廻
玖良麗(過去)
輪廻
玖良麗(過去)
輪廻
そう言いながら『貴方』は、 一番奥の本棚から、九冊の物語を手に取り 私の目の前に、そっと並べる。
玖良麗(過去)
輪廻
少し寂しそうに、でも嬉しそうに『貴方』は、 呟いた。
輪廻