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こんなことは初めてだ。 それは、望子への罪悪感のみならず愛夜子へも強く感じた。
風呂を上がった里志は暫くリビングでテレビを観ていた。
望子
とどこか嬉しそうな望子。
さらなるプレッシャーを感じる里志。
オレ、望子を抱かなきゃいけないの?
まるで義務のようにのしかかる。 罪悪感が断ることを赦さないだろう、と自分のこの後が容易に想像出来てしまう。
望子
プシュ! またまたビールを開ける望子。
望子
望子は愛夜子とは正反対の雰囲気だ。 ショートボブヘアーに少し太めの体形。 決して美人ではない。 でも、男気がある……というか、ガッツがあり情に脆い所を好きだと思った里志。
***
――――7年前のある日。
その日は本降りの雨がいよいよ激しくなって行った夕方。
でももうタバコが無かった。 仕方なく近所まで外出した里志。
帰り道、風もありあんまり役に立ってくれない傘を必死で持ち歩いていると、女性が揺れる傘の中しゃがみこみ、置かれた段ボール箱を覗き込んでいる様子が見えた。
近づいて行くと
望子
なにをしているのだろうと気になった里志は、その女性へ近づき段ボール箱の中を見た。
小さな子犬が3匹雨に打たれ「クーン、クーン」と悲しそうに鳴いている。
里志
と女性に声を掛ける里志。
望子
彼女は飛びそうな傘を閉じ、子犬たちが濡れぬよう段ボールの蓋を軽く閉じ
望子
と去って行った。
里志は彼女の愛情深さに胸を打たれた。
その3日後、たまたま入った家電ショップで炊飯器を見ていたら、例の雨の日の女性がいるではないか!
里志
望子
里志
望子
その女性こそが望子であった。
段ボールの犬を抱えて行ったぐらいだからかなりのご近所さんなのかな
と最初里志は考えていたが、望子の自宅は子犬を拾った場所から歩いて30分掛かる所だと後から知った。
里志
望子
里志はその家電ショップへ以前から電池を買いに行っていた。 里志が店を訪れる度、自然と望子と子犬の成長について語らうようになった。
そしてある時
望子
と誘われ……今に至る。
里志と望子は今に始まったわけではなく、最初からずっとまるで友達のようなムードで交際して来た。
***
今となっては愛夜子が好きだ。望子を抱かなきゃならないのかと思うと辛い。
望子
里志
いつものように始まり、いつものように終わる。 望子は満足しているようだ。
愛夜子ちゃんに逢いたい!
それは単なる肉体的欲望ではなかった。ただ、逢いたい。その気持ちに突き動かされる里志。
――――翌日。 仕事を終えると、仕事着をさっとカジュアルな普段着に着替え『ルーリラ』を目指した。
ルーリラ店長
里志
ルーリラ店長
里志
里志は待合室へ通された。ソワソワとする。あのお人形のように愛らしい、それでいて細やかな気配りをするしとやかで聡明な愛夜子に逢える! 嬉しさで気絶してしまいそうだ。 延長があったらしく、2時間近く待った里志。
ルーリラのスタッフ
やっとスタッフから声が掛かり廊下へ出た。
まっ白なドレスを纏い、煌めく黒髪を持つ愛夜子が立っていた。
愛夜子は今にも泣き出しそうだ。里志に抱きつく。
胸で小さく
愛夜子
とすがりつく。
ほんの2日前に逢っているのに、里志も愛夜子を抱きしめた時、やっと自分という人間が出来上がる感覚を憶えた。
愛夜子
甘えるようにして、歩きながらもくっつき里志の匂いを胸いっぱいに吸い込む愛夜子。 恋海ではない。愛夜子なのだ。
愛夜子がさっきまで違う男の相手をしていたのかと思うと里志は、嫉妬というよりもなぜか愛夜子を気の毒に感じた。
他の嬢もそうかも知れぬが、特に愛夜子は好きでしている仕事ではないんじゃなかろうか
里志は、愛夜子を丸ごと感じたい、躰を重ねたいと抑えきれないが、今日は話を沢山したいとも感じた。だからロングコースで延長する気。お財布をパンパンにして来た。
部屋に到着すると、さっそく里志のジャンパーを優しく脱がせる愛夜子。
愛夜子
里志
立ったまま磁石のように強く抱き合い離れられない。止まらないキス。 そしてそっと唇を離した愛夜子。
愛夜子
里志
愛夜子
里志
愛夜子
里志
愛夜子の艶やかな髪を撫でながら匂いをかぎ、抱きしめる里志。
暫く身を預けていた愛夜子が囁く。
愛夜子
里志
愛夜子
里志
愛夜子
甘えたいんだな、里志はそう思った。
里志
今日も大きく胸元の開いたドレスから蚕の繭のように白い素肌を露わにしている愛夜子。 里志はすぐさま触れ合いたい衝動を必死で抑えた。
まずは、話さないと……
ただ、リラックスしたいので、みずからズボンとシャツは脱いだ。下着だけの姿だ。
里志
愛夜子
愛夜子は高級なフルーツのように今、里志に包まれる。
里志
愛夜子
後ろから抱かれたまま振り返り、里志に口づける愛夜子。
里志
愛夜子
愛夜子の頬がサッと紅らんだ。
ギュ! 折れそうな腰を抱く里志。
愛夜子
里志
*
――――愛夜子にはなぜかいつかの光景が浮かんだ。 愛夜子と母の麻矢子が泣き笑いしながら服のまま海辺ではしゃいでいる。二人は泣きながらびしょ濡れになり笑っている。
*
愛夜子は、何も言えずじっとしている。
強く抱きしめる里志。
里志
肩を震わせ顔を覆い泣き崩れる愛夜子。呻き声のような声を上げ泣く。
さらに前かがみになり、しっかりと愛夜子を抱きしめる里志。
愛夜子
今にも壊れてしまいそうな愛夜子。愛夜子は里志の膝にはもう乗っていない。里志の横に寝転んだ。
涙……耳に入って行く
愛夜子の長いまつげが濡れて光っている。
愛夜子
崩れそうな砂の城のような愛夜子のムード。
里志
なにも言えない愛夜子。 しかし言った。
愛夜子
愛夜子が里志へ向けて、きつい言葉を初めて言った。
里志
*
――――小さな記憶が大きく甦る。 「ママとね、毎週日曜日の朝はジョギングよ? オッケー?」と麻矢子。 「うん! ママ」 笑顔の愛夜子。 そして日曜日の朝、ベッドで男とグーグー眠っている麻矢子。 こっそりじっと見つめている小学3年生の愛夜子。
*
愛夜子
愛夜子は力なく答える。
愛夜子と里志はバスローブを羽織り、再びソファへ二人並んだ。
里志
愛夜子
そっと丁寧に火を灯す愛夜子。
里志
愛夜子
里志
愛夜子
タバコを即座にもみ消す里志。
里志
愛夜子
里志
愛夜子
驚き、そして愛夜子の肩を包み込む里志。
里志
愛夜子
真摯に耳を傾ける里志。
そっと、愛夜子の髪に触れ
里志
と里志。
愛夜子
潤んだ瞳で、口づけをねだる愛夜子。
里志
愛夜子は子どものようにすべてを里志にゆだねる。
あたしはこんなに自由に愛し合ったことが無い。里志がほんとうに好き!
里志のことだけは、疑いようがない。そう想えて来た。
*
――――愛夜子にフラッシュバックする。 男に殴られ鼻血を出している若い頃の愛夜子。殴られ、蹴られ、立ち上がろうとすれば、顔をまたげんこつで殴られる。凄惨な悲しみ。