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ウェルゼ
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みのちと
ウェルゼ
――午前八時三分。 東京・渋谷。 いつもなら人であふれ返るスクランブル交差点は、今日も変わらない朝を迎えている……はずだった。
東京
会社へ向かう途中だった東京は、信号の前で足を止めた。 青信号になっている。
それなのに、誰も渡らない。
いや――渡れない。
一歩踏み出した会社員は、その姿勢のまま止まっていた。 スマートフォンを見ていた女子高生も、笑顔のまま動かない。 空を飛ぶカラスは羽ばたいたまま空中で静止し、 風に舞っていた桜の葉も、まるで見えない糸で吊られている ように宙に浮かんでいる。
東京
東京は周囲を見回した。 静かすぎる。 いつもなら車のクラクションや人の話し声が響いている街。 しかし今は、自分の足音だけがアスファルトに響いていた。
東京
東京
その瞬間だった。
右手の甲が熱を帯びる。
東京
東京
──土地の加護。
日本に四十七人しか存在しない特別な力。 それぞれの都道府県を守護する者にだけ宿る、不思議な刻印。
東京
すると、紋章から一筋の光があふれ、 一枚の黒い封筒が東京の手の中へ現れた。 封筒には金色の文字で書かれている。
**『東京都 様』**
東京
ゆっくりと封を切る。 中に入っていた手紙には、たった数行だけ文字が並んでいた。
--- **要石は預かった。** **返してほしければ、迷宮の館へ来い。** **四十七人、全員で。** **一人でも欠ければ、日本は終わる。** ---
東京
東京の表情が変わる。
要石。 それは日本という国の均衡を保つ、誰にも知られてはいけない存在。
もし本当に奪われたのなら、この異変も説明がつく
東京
その時だった。 世界が白く光る。 東京の視界に、一瞬だけ知らない景色が映った。
雪原。
砂丘。
海。
山。
港。
古い神社。
それぞれの場所で、同じように黒い封筒を手にした人影が 立っている。
東京
映像は一瞬で消えた。 だが東京は確信した。 **自分だけじゃない。** 日本中にいる"都道府県の化身の仲間たちも"も、 この異変に気付いている。
--- 北海道。 吹雪が止んでいた。 雪は空中で静止し、吐く息だけが白く流れる。
北海道
北海道は静かに黒い封筒を開く。
北海道
短く息を吐き、空を見上げた。
北海道
--- 広島。 平和記念公園。 空へ舞い上がった折り鶴が、一羽だけ空中で止まっていた。 広島はそれをそっと見つめる。
広島
封筒を握る手に力が入る。
広島
--- 福岡。
福岡
止まった街を見回しながら叫ぶ。
福岡
手紙を読むなり、勢いよく歩き出した。
福岡
--- 愛知。 工場街の片隅。 手紙を最後まで読んだ愛知は、静かにつぶやく。
愛知
ポケットからメモ帳を取り出し、考えを書き始める。
愛知
--- 宮城。
宮城
宮城は手紙を裏返した。
宮城
誰も気付かないほど小さな違和感。
だが、その違和感が、後にすべての真実へとつながることを、この時はまだ誰も知らなかった。
そして、その頃――。 日本のどこにも載っていない場所。 深い霧の向こうに、一軒の巨大な洋館が静かに姿を現して いた。 館の門には、四十七の紋章が刻まれている。 その門が、誰も触れていないのにゆっくりと開いた。 館の奥から、不気味な声が響く。
??
??
??
その声を聞いていた者は、誰もいない。 ただ一人を除いて――。 黒いローブをまとった人物は、不気味に微笑んだ。
??
そして館の時計が、ゆっくりと一度だけ鳴り響いた。
ゴーン……。
その音は、日本中に響き渡るかのようだった。
──第2話へ続く。
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コメント
6件
本編だっ!!すごい!神!一日中やってたの?お疲れ様!ちゃんと休むんだよ!二話も楽しみに待ってます!
読了しました!時間が止まった渋谷の描写、すごく引き込まれました。東京さんの冷静な観察眼と、紋章から封筒が現れる演出が神秘的で素敵です。各都道府県のキャラが少しずつ登場するのもワクワクしますね。特に広島さんの「争いはもうたくさんだ」という台詞に、その土地の歴史が滲んでいてグッときました。続きがすごく気になります!