優成
優成
優成母
優成母
優成
優成
優成
優成
優成母
雫玖
ふと聞こえてきたその声に
焦りを覚える
その声が
まるで何かを思い出したような そんな色を含んでいたから
優成
優成母
優成母
優成
優成母
優成母
電話を切って 隣にいる彼女に視線を向ける
優成
優成
言葉を切ったのは
彼女の存在が そこに無かったからだろう
優成
優成
急速に渇いていく口の中
気持ち悪い汗が湧いてくる
優成
名前を呼んで、走り出した
母の言葉を信じた訳じゃない
信じたくもない
しかし、電話を切る前に聞こえた
彼女の何かを思い出したような 声は
絶対に聞き間違いなんかじゃない
優成
優成
りんご飴を買った屋台の前
いない
並んで歩いた道
いない
優成
優成
優成
『好きだよ』
その言葉も
幻なんかじゃない
優成
草履を履いた足が痛い
けど、止まれなかった
盆踊りの音が聞こえる
優成
優成
オレンジ色の提灯の下で
楽しげに踊る何人もの人
優成
その中に、一瞬
雫玖がいた気がした
優成
階段を駆け下りて 盆踊りの輪の近くまで行く
優成
優成
不思議そうに自分を見る 人々の視線に気が付いて
慌てて階段を駆け上がった
優成
さっき見に行った時には 絶対にいなかったのに
輪の中に
雫玖が
りんご飴を片手に、笑っていた
優成
『盆踊りの輪の中には』
優成
『亡くなった人もまざってる』
優成
涙で滲んだ視界の中で
楽しそうに笑っていた雫玖は
ふとこちらを向いた
優成
そして寂しそうに
切なげに微笑んだ
まるで
『ありがとう、ごめんね』
と 言っているかのように
やがて雫玖はまた
輪の中に戻っていく
病院で見せる事など無かった 弾けるような笑顔で
優成
優成
ふと
あの時の約束が蘇る
『また来年も、再来年も その先もずーっと!』
『2人で一緒に来ようね!』
『ゆーびきーりげーんまーん』
『嘘ついたら...』
『またその次の年に』
『私と一緒にお祭りに行って?』
あの頃は 2人でいるのが当たり前で
別れなんて来るはずが無いと 信じていたのに
気が付けば 彼女はこんなにも遠くなって
自分の小指に手を当てれば
あの指切りの時のドキドキが 鮮明に思い出された
優成
確かに雫玖はそう言った
優成
輪の中ではしゃぐ雫玖を見て
1つの、 小さくて大きい決心をした
優成母
優成母
優成
優成
優成
優成
優成母
あの日から3年目のこの季節
少し丈を伸ばした浴衣を着て
俺はいつものように 彼女に会いに行く
きっとそれが
俺と彼女を繋いでくれると
そう、思うから
コメント
8件
切ないお話と、美しい言葉選び。 最後の丈を直した所に、ああそうだ。2人はまだ中学生だったんだなと、また切なくなりました。 とても素敵なお話でした。ありがとうございます( *´︶`*)