ぼくは、今、現実を受け入れる事が出来ないまま、 藤澤家の引越しの手伝いをしている。
藤澤
もっくん、これ一緒に持ってもらってもいい?
大森
…うん。
大森
危ないから下持つよ。
何が入ってるのか分からないけど、 結構重いダンボール箱を涼ちゃんと二人で2階に持っていく。
物置部屋のような所にダンボールを置くと、 涼ちゃんはダンボールを開けて中身を取り出した。
藤澤
一緒に見よ?
涼ちゃんが取り出したのはアルバムで、 僕にも見えるようにしてページを開いてくれた。
写真を見ると、小さい時の涼ちゃんだった。
何かの記憶違いかとも思ってたけど、 やっぱりぼくの記憶は正しかったみたい。
小さい時の涼ちゃんはどう見たって女の子で、 写真の中の涼ちゃんはぼくが好きになった笑顔で笑っていた。
藤澤
あ!これ、もっくんと一緒に撮ったやつ!
そう言って、指差した写真は、 涼ちゃんが泣いていて、少しムッとしているぼくが慰めるように頭を撫でているものだった。
藤澤
ぼく、なんでこんなに泣いてたんだろ〜。
この写真の時の事、覚えてる…
涼ちゃんがテレビで戦隊モノを見てる時に、 主人公の人をカッコイイっ言ったのに嫉妬して、 涼ちゃんの事、嫌いって言ったら、 涼ちゃん泣いちゃって…
涼ちゃんが悪いのにって思いながらも、 泣き止むように頭を撫でたんだよね…
そっか…涼ちゃん、覚えてないんだ。