説明者
あら?お客様が来たのかしら?
〇〇(自分の名前書いてね)
え…ここはどこなんですか?
説明者
ふふっここは、幸運な方しか入れない場所よ、
説明者
だから、貴方は幸運なのかも?
〇〇(自分の名前書いてね)
……………………………………
説明者
幸運な貴方には「良いもの」を見せてあげる
〇〇(自分の名前書いてね)
え…
説明者
うふふ行ってらっしゃいませ
〇〇が行って
説明者
これからお話を見るそこの貴方?
説明者
このお話は「」がつく時は喋っている
説明者
「」がつかない時は心の中よ
説明者
分かったかしら?では、
説明者
行ってらっしゃいませ
凛
今日からわたしも、日記を書き始めようと思う。
凛
妹は、またお母さんとケンカした。
凛
お母さんは目を真っ赤にはらして泣いていた。
凛
お母さんの服からは、いつもかすかにカビの臭いがする。
凛
わたしの服も同じだ。
凛
この部屋の中では、衣類が干せるスペースが限られているから
凛
仕方ないけれど、カビの臭いは悲しみを深くする。
凛
わたしは、ただお母さんを強く抱きしめてあげることしか
凛
できなかった。
凛
妹は、もともとお父さんっ子だった。
凛
お父さんは生意気な妹をほめてばかり。
凛
いつだったか、妹が言った。
花鈴
「あたし、大きくなってこの家を出たら、小説を書くの。
花鈴
本格的な大長編集よ。
花鈴
ここの暮らしは窮屈だけど、小説を書くための取材をしていると
花鈴
思えば、我慢できるわ」
凛
そんな言葉を聞いて、お父さんは上機嫌だった。
お父さん
「そうだね。お前はきっと、すばらしい作家になれるよ」
凛
でも、わたしは、妹が作家になるのは反対だ。
凛
きっとその小説の中には、お母さんやわたしを
凛
モデルにした人物が出てくるだろうから。
凛
腹立たしい、嫌な人物として。
凛
妹は、同居人たちと何やら談笑すると、さっさと寝てしまった。
凛
わたしは両親とおしゃべりし、この事態が早く終わることを
凛
祈ってからベッドに入った。
凛
このあいだ、夜中に泥棒が入った。
凛
これ以来、わたしたちは、寝ている間も物音ひとつたてないように
凛
気をつけている。
凛
ベッドの中でじっと動かずにいることが、何よりの安全策だ。
凛
静かで苦しい眠り。
凛
わたしは、眠れず起きだして、今こうして日記を書いている。
凛
気がつけば、もう朝。
凛
屋根に集まる小鳥の声と西教会の鐘の音が、静けさを破る。
凛
壁のすきまからそっと町を見る。
凛
外を眺めるのが許されるのは、こんな朝だけだ。
凛
わたしは、町の静かなたたずまいを思う存分に味わう。
凛
わたしだけの朝。
凛
わたしの日記には、わたしだけが知っている町の表情も
凛
書いておきたい。
凛
ふと妹の机を見る。
凛
書きかけのまま伏せてある日記。
凛
きっとお母さんの悪口、わたしへの批判、
凛
そんなことばかりが書いてあるのだろう。
凛
こんな日記、破ってしまおう。
凛
その代わりにわたしが日記を書くんだ。
凛
冷静な目でものごとを見つめて、書いていくんだ。
花鈴
「姉さん、どうしたの?」
凛
妹が目を覚ました。
凛
「まだ早いわよ。もうちょっと寝たら」
花鈴
「あたし、いつか絶対に作家になるわ。
花鈴
それで、あたしの小説「隠れ家」がベストセラーになったら、
花鈴
家族みんなでのびのびと暮らせる、大きな家を建てるの。
花鈴
姉さん、楽しみにしていてね……」
凛
そう言いながら妹はまた眠ってしまった。
凛
唇の端がちょっと上がっていて、眠りながら
凛
笑っているように見える。
凛
わたしは妹の日記を開いてみた。
凛
そこには、家族への批判も書いてあった。
凛
でも、それより、こんな窮屈な生活に負けず、たくましく生き抜こう
凛
という気持ちがきちんと書いてあった。
凛
腹の立つことは多いけど、やはり大切なわたしの妹だ。
凛
部屋に戻って、わたしは自分の日記を書いている。
凛
わたしには、作家になるという願望はない。
凛
妹のように、自分の思いをきちんと表現する自信もない。
凛
わたしは妹がうらやましい。
凛
これはわたしの日記。
凛
でも、たった一日だけの日記だ。
凛
書き始めたばかりだけど、今日で終わりにする。
凛
わたしは凛。
凛
もしかしたら、妹の花鈴は、本当に作家になるかもしない。
凛
そうしたら、妹がつけている日記も出版されるかもしれない。
凛
タイトルは__「花鈴の日記」になるだろうか。
凛
いつか、わたしも、「花鈴の日記」の登場人物の一人として、
凛
知られるようになるのかもしれない。
凛
この戦争は、いつ終わるのだろう。
凛
大きな窓から、いつでも町を見れる日が、
凛
早く来てほしい。
説明者
どうだったかしら?面白かった?
説明者
良ければコメント欄で教えてちょうだい。
説明者
後、主から変更ですって
説明者
これは短編集じゃなくなったから
説明者
普通のお話にするらしいわ。
説明者
でも、1話でお話は終わりよ、
説明者
それだけは覚えていてちょうだい。
説明者
では、また次の話で会いましょう。
説明者
さようなら