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千秋千愛

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千秋千愛

1 - 第壱章 懐中時計

♥

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2024年04月29日

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竹やぶの中を、1台の車が走っていく。

竹やぶの竹は太陽の光を薄く地面に通す。そしてゆらゆらと、風に揺られている。

その風景は日本ならではの美しい風景だった。

川が流れ、水は透き通っている。川には魚が泳ぎ、竹やぶの中には鳥がいた。

とても自然豊かな場所である。

車内

よーし。もうそろそろで旅館に着くな。

そうね〜。3人とも降りる準備しててね〜

千秋

はい。

正影

(頷く)

あやめ

はーい。

千秋

福原 千秋(ちあき) 福原家 次男

正影

なぁ、あやめ。そこのイヤホン取ってくれよ。

福原 正影(まさかげ) 福原家 長男

あやめ

えー?イヤホン?これ?

福原 あやめ 福原家 長女

あやめは絡まったイヤホンを取る。

正影

あーあー…絡まってんじゃん…

あやめ

知らないわよ!あんたがぐちゃぐちゃにしてカバンに入れるからでしょ!

正影

うわー…めっちゃ絡まってる…

正影は絡まったイヤホンを解こうと試みる。

千秋

千秋は兄と姉の会話に少し耳を貸しながら窓から過ぎていく竹やぶを見ていた。

千秋〜大丈夫?

千秋

えっ…う、うん。

この旅行が少しでも千秋の安らぎになってくれたらね〜

千秋

うん…

千秋は、中学校でクラスメイトから重度の虐めを受けていた。

先生に相談しても虐めが解決すること無く、千秋は学校に行くのをやめた。

不登校になったのだ。

そして今年の夏休み、家族みんなで相談し合い、千秋が心安らぐように‪”‬旅館旅行‪”‬に行くことになったのだ。

正影

千秋、お前手先器用だからこれどうにかしてくれよ。

千秋

えっ…どれ?

正影は絡まりに絡まりきったイヤホンを千秋に渡す。

千秋

すごく絡まってる…

千秋は器用にイヤホンを解いていく。そして正影に返す。

千秋

はい。解けたよ。

正影

さすが千秋。サンキュ

正影は千秋からイヤホンを受け取り、携帯に繋ぎ耳にイヤホンをかける。

千秋

あやめ

千秋もたまにはガツンと言っていいんだよ?

千秋

えっ…ガツン…?

あやめ

そうガツン!って。

あやめ

あんたさ…正影の頼みを何でもすんなりと承りすぎよ。

千秋

そ、そうかな…

あやめ

そーうなの!だから、たまには「自分でやれよ。」とか言って良いんだからね?

千秋

でも…俺には言えそうにないや…

あやめ

はぁ…あんたって本当にお人好しね…

千秋

別に…お人好しになりたいわけじゃ…

あやめ

(小声で)まぁ…私はお人好しな千秋が好きなんだけど…

千秋

えっ?なんか言った?

あやめ

いや…!別に…!

3人ともー、そろそろ着くぞ〜

千秋が窓から外を見ると、竹やぶは少し深くなり立派な旅館が姿を現す。

千秋

…すごい…

車は旅館の前で止まる。

4人とも、先に車を降りていてくれ。奥の駐車場に車を止めてくる。

分かったわ。3人とも〜荷物持って車降りて〜

3人は言われた通りに荷物をまとめ車を降りる。

降りた瞬間、綺麗な空気が身を包む。

あやめ

わぁ〜空気がきれい〜

正影

東京とは違うな。

千秋

千秋

ん?

千秋が旅館近くの倉を見ると、倉の影から着物を着た少女がこちらを見ていることに気がつく。

千秋

あの子…

千秋が女の子に目線を合わせると、女の子は倉の奥に走っていく。

千秋

あっ…

あやめ

千秋?どうかした?

千秋

いや、あそこの倉の影に女の子がいたんだけど…倉の奥に走っていって…

あやめ

女の子?

あやめ

もしかしたらこの旅館に泊まりにきた女の子が外で遊んでいただけかもよ?

千秋

そう…かな…?

3人とも〜行くわよ〜

正影

千秋、あやめ、行くぞ。

母と正影が旅館に入ったのを見て、千秋とあやめも後を追い旅館の中に入る。

旅館に入ると、そこには和風な部屋が広がっていた。

4人は靴をぬぎ下駄箱に入れ受付に向かう。

すみません〜今日、宿泊を予約した者ですけど〜

若女将

はーい

すると、カウンターの奥から女の子が出てくる。

こんにちは〜。今日、宿泊を予約した福原です〜。

若女将

こんにちは。福原様ですね。お部屋は用意出来ております。そこの階段を上げってもらい右手にあります。

女の子は手札のような物を母に渡す。

若女将

ごゆっくりおくつろぎください…。

女の子は丁寧に頭を下げる。

3人とも、行きましょ〜

3人は母の後を追い階段を登る。

女の子が言った通り、右手には部屋の扉があった。

4人は部屋に入る。

部屋に入ると、そこには和室が拡がっていた。

畳の上には小さな丸い机が置かれ、湯のみと急須が置かれていた。

そして、部屋の壁には1枚の掛け軸が掛けてあった。いかにも日本らしい部屋だ。

あやめ

わー!すごーい!

ほんとね〜

あやめと母は興味津々に部屋を見渡す。

正影

千秋

…兄ちゃん?

正影

いや…ごめん…ちょっと…

正影

酔ったかも…

正影は顔色を悪くし部屋にあったトイレの中に駆け込む。

千秋

えっ…

あやめ

んー?正影は?

千秋

酔ったって言ってトイレに…

あやめ

あ〜…そりゃ車の中でスマホばっかり触ってたら酔いますわ…

あやめ

大丈夫。時期に良くなってトイレから出てくるから。

千秋

お、おう…

千秋〜あやめ〜

2人の元に母がやってくる。

お父さんが駐車場の場所分からなくなって迷子になったつまり言ってから…お母さん行ってくるね。

あやめ

分かった。

母はカバンをもって部屋を出る。

千秋

迷子…?

あやめ

あんたも知ってるでしょ…?お父さんが救いようがないくらい方向音痴って事を…

千秋

あっ…確かに…

あやめ

これは…当分お母さんもお父さんも帰ってこないわね…

千秋

…仕方ないよね。

ジャー…

トイレから水の流れる音がして正影が出てくる。少し顔色は良くなっていた。

正影

あれ?お母さんは?

あやめ

えっと…迷子探しに…

正影

迷子探し…?あー。親父か…

あやめ

そう。

正影

これは…当分帰ってこないぞ…

正影

あ〜…暇じゃねぇかよ…

正影は畳に横になる。

千秋

千秋とあやめも畳に登り座る。

正影

暇だし、旅館内探検でも行くか。

千秋

旅館内探検…?

あやめ

面白そう!

千秋

でも…それこそ迷子に…

正影

大丈夫。俺は親父と違って方向感覚いいから。

千秋

いや…そういう問題じゃ…

正影

さぁ、行こ。

兄と姉が立ち上がったのを見て、千秋もしぶしぶ2人に着いていく。

3人は部屋を出て廊下を歩く。旅館内はとても静かでロウソクの鈍い光が灯っていた。

正影

思ったより本格的な旅館なんだな…

あやめ

まさか埼玉にこんな旅館があるなんてね〜

3人は廊下を歩き、階段を下る。

やがて、フロントにやってきた。

正影

お。ここはさっき来たフロントか…

あやめ

私、1番フロントが好きかも!

千秋

綺麗だな…

あやめ

千秋もそう思う!?

千秋

えっ…まぁ…俺‪”‬和風‪”‬って好きだし…

あやめ

そうよね〜

正影

ちょっと外行ってみるか。

あやめ

賛成〜!

千秋

うーん…まぁ…いいか…

3人は下駄箱から靴を取り出し旅館の外に出る。

旅館の外には竹やぶが広がっていた。

正影

旅館の周りはほとんど竹やぶか…なんも無さそうだな…

あやめ

あ、そういえば千秋。倉を見つけてなかった?

千秋

えっ…まぁ。うん。

正影

倉…?それはどこに?

千秋

確か…こっちに…

千秋は先頭を歩く。千秋が歩いた先には言った通り倉があった。

正影

おぉ…倉だ…

あやめ

ねぇ…ちょっと入ってみない?

千秋

姉ちゃん…それはさすがに…

正影

よし。入ってみるか。

千秋

兄ちゃん…ッ

正影は倉の扉に近ずき扉を開ける。

倉を開けると、中には物が多く置かれていた。

正影

…物置っぽいな…

あやめ

うぅ…ほこりっぽい…

千秋

3人はゆっくり物置の倉に入る。

倉の中には珍しい物がいっぱい置かれていた。

千秋

なにこれ…見たことない物ばかりだ…

正影

…気味悪いな…

あやめ

ねぇ…やっぱり出ない…?

正影

そうだな…

千秋

うん…

3人は、後きた道を振り返り扉に近く。正影が扉に手をかけ開けようとするが、開かない。

正影

あれ…ッ!開かない…ッ!

あやめ

えっ!?開かないッどういうことよ!

正影

まんまの意味だ!開かねぇんだよ!

千秋

えっ…ちょっ…

正影が扉に向かって体をぶつけてもびくともしない。正影は座る。

正影

いったい…どうなってんだよ…

あやめ

ねぇ…この倉…窓もないから…外に出られないんじゃ…つまり…と、閉じ込められた…

千秋

あやめ

ちょっと!どうするのよ!

正影

知るかよ!俺も今考えてんだよ!

兄と姉が喧嘩している中、千秋は木箱の上に置かれた古い懐中時計を手に取る。

千秋

これ…

千秋

フンッ!

千秋が懐中時計を開けようと試みるが開かない。

千秋

…開かない…もしかしてさびてんのかな…?

千秋は懐中時計を手で探る。すると、懐中時計の横に小さなボタンがあった。千秋はボタンを押す。

パカッ

千秋

開いた…ッ

千秋

これは…

千秋は懐中時計の中に入っていたコインを手に取る。

千秋

コイン…?日本の小銭じゃないな…

千秋

‪”‬開‪”‬…?

千秋はコインに書かれた字をみる。傷ついており、読みにくいが確かに‪”‬開‪”‬と彫られている。

千秋

裏には…

千秋

‪”‬閉‪”‬…

コインの裏には、表ど同様に漢字の‪”‬閉‪”‬と彫られていた。

千秋

‪…なんのコインだ…?中国とかそういう国のゲームで使われたゲームコイン…?

千秋

‪あッ…!

その時、千秋の手が滑りコインが地面に転がり、表の‪”‬開‪”‬が上になり横になる。

千秋

‪”‬開‪”‬…?

正影

もう一度行くぞ…!

あやめ

今度はほんとに頼むわよ!

千秋

…もしかして…

正影

おらッ!

ガパッ!

正影

うぉ!?

扉は簡単に開く。力を込めていた正影は扉の外に飛び出る。

あやめ

え!?ちょっと正影!

千秋

兄ちゃん…!

正影を心配し千秋とあやめは扉から外に出る。

正影

うぅ…

あやめ

ちょっと正影!大丈夫!?

正影

あ、あぁ…

千秋

兄ちゃん…!

正影

痛ってぇ…なんで急に簡単に…

正影

え?

正影が顔を上げると、そこにはコスモスの花が咲いていた。

辺りにはコスモス畑が広がり旅館の姿はなかった。

正影

こ、ここ…どこだよ…

あやめ

えっ!?旅館は!?

千秋

…ッ!

千秋が振り向くと、倉も姿を消していた。

あやめ

えっ!?倉は!?さっきまでここにあったわよね!?

千秋は自分の手を中を見る。手の中にはあのコインがあった。

千秋

…これ…

あやめ

千秋…なに…それ?

あやめ

コインの表と裏に漢字が掘られてる…‪”‬開‪”‬と…‪”‬閉‪”‬…?

千秋

うん…このコインを床に落として‪”‬開‪”‬って面が出て兄ちゃんが扉を思いっきり開けたら開いた…ってわけ…

あやめ

どういうことよ…

正影

ひとまず、少し周りを歩いてみよう。

あやめ

そうね…

千秋

うん…

3人はコスモス畑の中を歩き始める。

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