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更新遅れてごめんなさーーーーい!! ・何を卒業したのか ・響の一人称がどうして「オレ」から「俺」に変わったのか ・響視点の背景がどうして途中から鮮明になったのか 今回はいろいろ皆さまの想像に委ねます😌 分かった事は、 ・光堕ち響 ・実は響は物凄い近視で、家では眼鏡かけてる日(以前は外出時はコンタクト) です😌 読んでくださりありがとうございました❗
「貴方の事は…知ってる」
「…どこまで知ってんの?」
「体育祭の時、見た事しか知らないけど」
「____それで充分だ
オレは山を作りに来た」
意識はまだフワフワしている。
朝日が瞼を刺す。 雨が降る事が心配された予報だったが、晴れたようだ。
だが別にどうでもいい。
春に限らず1日の始まりはダルく感じるし、これからずっとそうなのだろうが
別にどうでもいい。
どうでもいいんだ。 もうオレの登校を待ってくれてる人はいないんだから。
__だからまだ暫くは、カノジョに会った日を回想しながら微睡(まどろ)みの波に揺られていよう。
吉田 響
吉田 響
吉田 響
吉田 響
それは懺悔に来た迷い人のような___ …いや、違う。赦しを請うような感じじゃない。
それは取り調べに応じる参考人のような___ …いや、違う。これから語るのは未来の事だ。
___俺には分かる。吉田 響がこれから語ろうとする内容を。
そして彼女さんの返答も、だいたい分かる。
だから俺は どちらの顔色も伺ったりしない。
吉田 響
吉田 響
彼女さんの表情は分からない。長い髪が乱れても、それには取り合わず身動(じろ)ぎ1つせず佇んでいる。
___しかし響が再び言葉を発する前に、彼女さんの声が夜の風に乗った。
山川 のぞみ
やはり彼女さんも分かっていた。 __響は中途半端に開いた口を一度閉じ、再び開けた。
吉田 響
吉田 響
吉田 響
山川 のぞみ
___そして彼女さんは、「権利委託状及び被験者連絡先」を受け取った。
雨予報だと騒がれていたが、お天道様は空気を読んだようだ。
人生の門出、と言ったら少し大袈裟だが、甲斐甲斐しい「卒業式」の書体は澄んだ青空によく映える。
幾分温かくなった風が胸元の造花とリボンを揺らした。
山崎 孝太
西谷 春翔
__卒業式はつつがなく終わり、俺たちは無事卒業証書を手にする事が出来た。
今は校門前の広場にて、 生徒は持ち寄った衣装で飾り立て写真撮影に勤しんでいる。
どこを見渡しても、笑顔で溢れている。 __しかし撮影会の企画者は先程から咽(むせ)び泣いていた。
西谷 春翔
鳴沢 柚月
西谷 春翔
鳴沢 柚月
卒業証書を手にしている柚月も、同じく目に涙を浮かべている。
見渡す限りの笑顔。___だが彼ら彼女らの目には光るものがあり、抱き合って涙する者も少なくない。
___その人だかりを縫うように走る数人の生徒を見つけた。 俺は慌ててスマホで時間を確認した。
山崎 孝太
西谷 春翔
山崎 孝太
山崎 孝太
鳴沢 柚月
再び時間を表示させる。 ちょっと走らないと間に合わない時間だ。 俺は走_____
山崎 孝太
__走った。 遠く集団から離れた位置に
響の姿が見えたのは気のせいか…?
割とみっともねぇ感じで「委託状及び連絡先」を渡したってのに
特にアクションは無かった。
耳には入ってるはずだ。 __それでも柚月に、権利を行使しようとする気配は無い。
……それが答えか。 ならば、パチもん臭ぇ有象無象共の涙より柚月のそれが眩しく見えるのも頷ける…
……と、西谷と涙ながらに話してる様を遠巻きに眺めながら1人納得していると
不意に柚月と目が合った。 …特に何を言うでも無いし、そんな間も無かった。
柚月の視線は確かにオレの左の前髪を捉えた。__それだけだった。
日が暮れる前に家の玄関扉を開けるなど、以前ならあり得なかった。
春が近付きつつある外とは対照的に、家の中は暗くジメジメしている。
オレが帰っても「おかえり」とは言われない。 硬く閉ざされたリビングの扉から感じる拒絶感は、気のせいじゃない。
二階に上がると兄貴の部屋からゴチャゴチャした電波系のアニソンが漏れ聞こえて来る。
自室に入り、ゴミ箱に雑巾と上靴を、ベッドに荷物と卒業証書を投げ捨てると、形だけの学習机の椅子に腰掛ける。
吉田 響
まだ隣からアニソンが聞こえて来る。 リビングではハブにされた母さんが、「既読」や「いいね」を探してるんだろう。
吉田 響
糞みたいな空間でも、ここがオレの家だ。 オレは母さんの息子であり兄貴の弟だ。
吉田 響
これが現実だ。
____そして柚月がオレに示した答えがアレだ。
もう充分だ。 ペン立てからハサミを取り出した。
刃を開き、みっともなく伸びた前髪にあてがう。
吉田 響
刃を閉じた。
溝口 圭佑
山崎 孝太
山崎 孝太
溝口 圭佑
溝口 圭佑
山崎 孝太
春休みに突入した。4月からは高校生だ。
春休み明けのテスト、蒼陽高校は英語クラス編成テスト 、とそれぞれ試験があり俺たちは塾に集っていた。
、と言ってもまだ昼過ぎなのに もう帰路についているが。 今日はこれから用事がある。(先輩も午後からお父さんとテニスするらしい)
山崎 孝太
溝口 圭佑
___俺は先輩にしがみつき、先輩は心から嫌そうな顔で俺を引き剥がそうとしていた。 ____その横を
背の高い男の人が通りすぎた。
山崎 孝太
鳴沢 柚月
溝口 圭佑
山崎 孝太
鳴沢 柚月
溝口 圭佑
孝太と柚月はパタパタと遠ざかって行く。
圭佑は半ば呆気にとられながら見送っていたが__。
溝口 圭佑
二人の背中に迷いは無い。
圭佑は1つ息を吐くと、自身の帰路についた。
………誰か尾けて来てる。
アイツらかと肩越しに振り向いたが違った。
山崎 孝太
鳴沢 柚月
孝太と柚月はイタズラが見つかった子どものように、俺と目が合うとピタリと動きを止めた。
何してんだこいつら。 __俺は再び歩き出す。
孝太と柚月も歩き出したのが気配で分かる。
数歩進んだ所で振り返った。 先ほどと同じように孝太と柚月も動きを止める。
「……………」
歩く。歩き出す。 振り向く。止まる。
歩く。歩き出す。 振り向く。止まる。 歩く。歩き出す。振り向く。止まる。
歩___
「鬱陶しいな、なんなんだよ!」
根負けした。 孝太と柚月は、ダルマさんが転んだよろしくピタリと立ち止まる。
「何」
山崎 孝太
鳴沢 柚月
山崎 孝太
散々俺に偉そうな事言ってたくせに、眼前の2人は明らかに戸惑っている。 至極愉快だ。
そして2人の視線は左側の、前髪にスライドする。 左の前髪もバッサリ行ったが、それについては答えてやらない。
___俺は孝太から紙を受け取った。
孝太から貰った紙に記載されている番号に、心当たりは無い。
どういうつもりで俺にこれを寄越したのか、見当もつかない。 ___前髪があった頃は1も2も無く廃棄してたが
今は何故か、ほとんど勝手に指が動いていた。
7コールを数えても繋がらない。 あと1~2コールで切ろう、と思い始めた時だった。
本当に突然に コールが途切れ耳に_____
先生
吉田 響
ブルートゥースのイヤホンを付けていて良かった。 糞みたいな家でも、その声はよく聞こえるから。
忘れていたと思っていたのに、電話の相手が誰であるか、一瞬で思い出された。
先生
吉田 響
先生
吉田 響
先生
先生
先生
先生
先生
___審査員特別賞__
▶やむを得ぬ事情により参加が敵わなかった過去の作品に審議を経て与えられた賞である。 ▶PDF
息が止まった。 震える指は、貼り付けられたPDFデータに向かうのだが クリックもままならない。
それでも電話の向こうで、先生は昔と同じように背中を押してくれる。 __ついに一覧からPDFデータに飛んだ。
~審査員特別賞~ H31年度生 吉田 響 「家族」
吉田 響
先生
吉田 響
スマホ画面はもう見えない。
目を押さえた指の隙間から、涙が次々と零れ落ちる。
決壊したダムみたいだ。
先生
先生
先生
先生
先生
先生
吉田 響
先生
先生
先生
吉田 響
先生
吉田 響
山崎 孝太
山崎 孝太
吉田 響
吉田 響
山崎 孝太
吉田 響
山崎 孝太
吉田 響
山崎 孝太
吉田 響
吉田 響
山崎 孝太
吉田 響
山崎 孝太
山崎 孝太
吉田 響
山崎 孝太
吉田 響
山崎 孝太
山崎 孝太
吉田 響
山崎 孝太
山崎 孝太
吉田 響
山崎 孝太
吉田 響
山崎 孝太
吉田 響
吉田 響
吉田 響
山崎 孝太
吉田 響
山崎 孝太
吉田 響
山崎 孝太
吉田 響
山崎 孝太
山崎 孝太
吉田 響
吉田 響
もうボアのコートだと暑苦しい気候だ。
それでも俺の家だけは時が止まってる。 兄貴が蒼陽高校に落ちた日からずっと。
逃避する糞共の巣窟。 俺はあの家が大嫌いだ。
低地で燻ってくたばるなんて、真っ平御免だ。
だから俺は山に登る。
糞な糞共は、そんな俺の足を掴んで引き摺り下ろそうとするだろう 或いは でしゃばって先導して来るかもしれない。
その時は言ってやる。
吉田 響
山崎 孝太
吉田 響
きっと大丈夫だ。
____俺は吉田 響として生きていける。