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ユウヤ
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その日はあいにくの曇り模様だったが、外の空気は暖かい。
上着が必要ないくらいには過ごしやすい気温だった。
ユウヤ
膝がぎりぎり隠れるくらいの丈のニット生地のワンピースに黒タイツ。
ザ・女子という表現が相応しいファッションだ。
さらに足元にごつめのブラックのブーツを持ってくることで、 甘さの中にもアクセントを加えている。
眺めているだけで目の保養になるようなその姿を横目で堪能しつつ、歩を進める。
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僕たちは馬車道駅から10分ほど歩いたところにある、 『MARINE&WALK YOKOHAMA』という、海辺のオープンモールに来ていた。
シンプルかつスタイリッシュな、どことなくヨーロッパの島国を彷彿とさせるような空間だ。
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立花さんはとても話しやすい女の子だ。
性格は明朗快活。
好奇心旺盛でおしゃべり。
そして場の空気を暖めるのが上手い。
今みたいに僕をからかって、 会話を楽しくしてくれるのもその一つ。
些細なことにも目をキラキラさせたり、オーバーに反応したりと、見ていて飽きないのだ。
ユウヤ
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もう舌を巻くしかない。
ユウヤ
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その上家庭的ときた。
彼女には『男の理想像欲張りセット』の称号を与えるべきだろう。
ユウヤ
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彼女の手料理。
そんな最上級の幸せを、僕なんかが享受していいのだろうか。
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立花さんはそう言って、いたずらっぽくニヤリと笑う。
ユウヤ
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やはりそう思ってしまう。
その考えを見越してのニヤケ顔なんだろうけど。
ユウヤ
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そんな他愛のない話をしながら、目的地に向かう。
そんなちょっとした時間でも、僕にとっては幸せだった。
しかし同時に、僕は機会を窺っていた。
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それは無論、“あの言葉”の真意を確認する機会である。
『もう二度と、好きって言わないで欲しい』というあの言葉。
ユウヤ
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それを確かめたいと思う一方、本能的に恐れてもいた。
それを聞いたら……、
何かよくない事実が発覚してしまうのではないか、と。
ユウヤ
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ユウヤ
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話を変えるために言ったが、本心でもあった。
恋人に名前を呼んで欲しいというのは、ごくごく自然なことじゃなかろうか。
まあ、待ってほしいというなら、いくらでも待とう。
それに気になるのは“あの言葉”の方だった。
ユウヤ
そう心に決めて、一旦そのことは頭の隅に追いやることにする。
今は彼女との時間を楽しむべきだ。
ユウヤ
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ユウヤ
彼女の肩にかかった黒のハンドバッグ。
その留め具が外れて、上部のカバーがプラプラしている。
普通に歩いてる分には大丈夫そうだが、何かの拍子に中身を落としそうではあった。
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僕がそう言うと、彼女は素早く上カバーをバッと押さえた。
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