『あの夏が消し去った透明な君と恋をした』
夢を見ていた
白くぼんやりとしたあやふやな夢だ
『__さん…ッなんで…泣』
どれだけの間そんな日々を過ごしているのだろうか
いつから夢を見ているのか
どれくらいの間、夢を見ているかさえ分からなかった
もう時間という概念がなくなって_、
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そんな自分も何となく察していることがあった
それは、意識を覆う白い靄がだんだん濃くなっていること
”当たり前”の人生を過ごすことも許されなく
もうすぐ、夢を見るのも許されなくなる
混濁された意識の中でふと思っていたことだ
私の世界はもうすぐ終わる
自分が自分で無くなる
自我がなくなり、自らの希望や願い
そして、記憶さえも全て消え去ってしまうのだ
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ねぇ待ってよ…
そんなの…嫌だよ
抗うように不満を呟く
どうして私だけこんな目に会わないとなの?
どうして私だけ、皆が知っているものをしれないの?
経験できないの?そんなの…不公平だよ
不平不満を訴え続ける
そんな事しても何も変わらないのはわかってる
だけど…少しでも抗わないと
自分が自分でいられなくなる
お願い神様
私に時間をください
ほんの少しでいいから私に希望を持たせて…ッ
お願い……
お願いッ!!
最後に見る夢は
何だか暑い
そこは、意識が混濁するまで
毎日通っていた公園
そして毎日着ていた高校の制服を身にまとっていた
”夢”だとわかっているのに”夢”だと思えなかった
状況どころか日付さえも分からない
ポツポツ
ザー
どこかに行かなければ行けないのは分かっていたが
いきなり、外に放り出されて、
何も情報がなければどこにも行けない
おまけにスマホも財布もない
何分後だったのかは、分からないが
突然雨が当たらなくなった
そこには同じ学校の制服を着た、
男子生徒だ
彼は、心配そうな顔で、自分を見ていた
彼を見たのは、初めてだったが、その優しそうな顔には
自然と惹かれていった
泣いているのを隠しながらハンカチを受け取る
不器用な優しさに心が温まった
咄嗟に自分の本名を言うところだったが、
何となく危険な気がして止まった
誰かと笑いあった自体が久しぶりだったので
それだけで胸が温かくなった
この優しい少年がきっと自分にとって 最後の奇跡なんだろう
私はそれを確信して
新しい自分の名を告げた_。
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