僕らは各々昼食を注文し同じ席に腰掛けた。 向かい合うカヤはいつにも増して眩しい笑顔でこちらをニコニコと見つめていた。
アキラ
……?
アキラ
ど、どしたの?
カヤ
んー?
カヤ
へへへ
アキラ
……?
カヤ
アキラくん、さっき
カヤ
あたしのこと「カヤちゃん」じゃなくて「カヤ」って呼んでくれたね!
アキラ
……!
アキラ
い、言われてみれば……
カヤ
嬉しいんだ〜
えへへ〜
えへへ〜
カヤ
ちゃん、って歳じゃないもん。それに、なんか距離感じちゃうし。
アキラ
……そうだね
アキラ
てか、カヤって僕の後輩だったんだ
カヤ
そうだよ〜
だから、あたしは「アキラくん」なの
だから、あたしは「アキラくん」なの
アキラ
……カケルは?
カヤ
カケルって幾つなんだろ
もうアプリ消しちゃったから年齢見れないや
もうアプリ消しちゃったから年齢見れないや
カヤ
でも、平日忙しいって言ってたし、車乗ってるし多分あたし達より上なんじゃないかなぁ
アキラ
……。
アキラ
じゃあなんでカケルは「カケルくん」じゃないんだよ……。
カヤ
えぇ〜?アキラくんもしかして妬いてんの〜?
アキラ
別にっ……!
カヤ
あはは笑
冗談冗談!
冗談冗談!
冗談と言われても、カケルと僕の間に差があるのは簡単に割り切れない……。
アキラ
いいよ、もう
海の計画立てようよ。
海の計画立てようよ。
カヤ
ごめんって〜!笑
でもそうだね笑
でもそうだね笑
アキラ
……気になってたんだけど、なんで三人で?
カヤ
ん〜……。
カヤ
……怒んない?
アキラ
怒んないよ笑
カヤ
……。
カヤ
二人を待たせたまんまも良くないってずっと思ってたから
カヤ
あたしからもっと二人と積極的に関わって、二人のことちゃんと知って好きを見つけたいな……って。
カヤ
でも、それって二人からしたらすごいやりずらいでしょ……?こないだの……みたいな。
アキラ
……っ。
カヤの一言であの熱い夏の夜が思い出される
アキラ
……たしかに。
カヤ
それに、お互いバチバチ〜!ってのも嫌だからあくまで楽しみたいなっていうのがあたしの気持ちなんだけどね……。
アキラ
なるほど……。
カヤ
い、嫌だったら言ってね!
いつものあたしのわがままなんだから!
いつものあたしのわがままなんだから!
アキラ
嫌じゃないよ
カヤ
……?
アキラ
嫌なんかじゃない
アキラ
誘いが来た時すごく嬉しかったんだ
アキラ
初めてカヤから誘ってくれた、って。
カヤ
……!
アキラ
それに、一度でも多くカヤに会いたいんだ。
カケルがくっついてきたくらいでどうこう騒いだりしないよ。
カケルがくっついてきたくらいでどうこう騒いだりしないよ。
カヤ
……。
カヤ
あはは!笑
くっついてくるって笑
なんかカケル犬みたい!笑
くっついてくるって笑
なんかカケル犬みたい!笑
アキラ
ぷふっ!笑
そうして僕らはそんなカケルを他所に談笑しながら昼食を取り、当日の計画を立てカヤがカケルにメッセージしてくれた。
ハルナ
……。
講義を終え講堂から出ると見知った男が誰かと話しているのが聞こえたので、私は咄嗟に隠れてしまった。
あの日以来私はまだ前に進むことが出来ず アキラを忘れられた夜はなかった
そんな彼が見知らぬ女性と話している姿を見てしまい思わず後をつけてしまったが……。
ハルナ
(アキラ、海に行くんだ…)
ハルナ
(ここからだと1番近いのって…。)
ハルナ
(……。あの子、か。)
天真爛漫に明るい笑顔でアキラと話す女性 アッシュの髪に光る笑顔が眩しく、思わず私は目を伏せた。
いや、ちがう。ここまで振り切れない自分の醜さに涙がこぼれないように俯くことしか出来なかったのだ。
ハルナ
(……いいなぁ。)
今はどんな形でも、アキラを見ていられるだけで私の胸の中の棘が浅く引いていった。
醜い自分など捨ておけと言わんばかりに 気がつくと私は昼食などそっちのけでアキラを目で追っていた。
ハルナ
(ストーカーに盗み聞き…。)
ハルナ
(……最低だなぁ、私。)
嫌気が差した自分に鞭打つように 私は昼食をさっと平らげ二人を置いて食堂を出た。