コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
その後、俺は「俺の家らしき場所」に帰ってきた。
この家については何も分からない…いや、何も思い出せないの方が正しいと思う。
しかし、表札には「白鳥」…俺の苗字が記されていた。
とりあえず退院し、己の家に帰れたことに安堵したものの…
籠
…この恋人と名乗った怪しげな男、籠が俺の世話をするらしい。
籠については何も分からない、覚えていない。それ故に心配が募る。
籠
…お世話って言ったか?
麗
余計不安感を覚えながらも、俺は返事をし、リビングへと向かった。
麗
抜け落ちた記憶、怪しげな男、身体に溜まった疲労。それらが溜息になって口から漏れ出す。
冷たい布でできたソファを手でなぞりながら籠の方を見つめる。
…俺の着替えを用意している。本当に家事をしてくれているようだ。
この家について何も分からない俺からしたらぶっちゃけ助かっている。
…しかし、いつになったら記憶が戻り、こいつの事が分かるようになるのやら。
籠
麗
籠
そ、そんな事は言ってなかったような気がするが…
麗
正直あまり信頼していない籠の作った料理は食べたくない。
しかし、料理の仕方を忘れてしまった俺にとってはこれを食べるしかない…
大きな卵焼きにケチャップがかかっている…オムライス、だっけ?
麗
麗
口の中でケチャップの酸味と卵の甘味が程よく混じる…
噛めば噛むほど味が出てとても美味しい。
ケチャップライスの中にはグリーンピースと人参と…何かじゃりっとしたものが入っている。
じゃりしゃりとしたものは微かに甘いような塩辛いような味がする…恐らく調味料だろう。
麗
籠
籠がにやり、と笑みを浮かべる。
なにやら含みを持っていそうだが…きっと上手く作れて喜んでいるだけだろう。
それからというもの、籠が付きっきりでお世話をしてくれた。
籠
籠
籠
…ここまで尽くしてくれるとは予測できなかったけどな。
麗
籠
麗
男と密室で2人きり、しかもお互い裸だ。とても気まずい。
記憶を失う前はこんな事も日常茶飯事だったのだろうか?
…それにしても籠って、性格は気色悪いが、顔と体はいいよな。
俺の貧相な肉体とは異なり、鼻筋が通っておりまつ毛が長く、少し筋肉質な高身長の男である。
籠
籠がくすり、と笑う。なんだか可愛らしい。
…?なぜ俺は今こんな男のことを「可愛らしい」と表現したんだ?
まぁいい、きっとただ単に疲れてるだけだろう。
籠
そう言いながら籠が俺の右頬に手を添える。
麗
籠の意見に同意し、俺たちは風呂場を後にした。
この時の俺は知らなかった。
…いや、忘れていたと言った方が正しいだろうか。
この展開は全て、"籠の掌の上"という事を。