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ねこねこにゃんこ
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#〔インターネット少年/少女〕
狸野 ゆゆせ
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事務所の会議室は、いつ来ても少しだけ落ち着かない。 朝比奈ひかりは、長机の向こうに並ぶ大人たちを見ながら、手元のペットボトルをそっと握りしめた。 向かいには月城レイが座っている。 いつもと同じ、余裕のある顔。 ……のはずなのに、今日はその横顔が少しだけ気になる。
「ええと、まずは先日のコラボ配信、お疲れさまでした」
マネージャーが資料をめくりながらそう言うと、ひかりは反射で背筋を伸ばした。
朝比奈 ひかり
「かなり反応が良かったです。コメントも切り抜きも、想定以上ですね」
朝比奈 ひかり
レイがさらりと返す。
月城 レイ
その言い方に、ひかりは一度だけレイを見た。 レイは平然としている。 その平然さが、なんだか少し悔しい。 マネージャーは、そんなふたりのやり取りを見て、なぜか満足そうに笑った。
「だからですね。次の企画、少し早めに進めようかと思いまして」
朝比奈 ひかり
ひかりが聞き返すと、机の端にいた別のスタッフが資料を一枚差し出した。 そこには、簡単な企画案がいくつか並んでいる。 ゲームコラボ、雑談配信、視聴者参加型、歌ってみた企画。 その中でも、ひとつだけ赤い印がついたものがあった。
朝比奈ひかり × 月城レイ 定期コラボ案
ひかりは、その文字を見て、まばたきした。
朝比奈 ひかり
「そうです」
マネージャーは何でもないように答える。
「このふたり、相性がいいので。せっかくなら、継続して見せたほうが面白いかなと」
朝比奈 ひかり
ひかりは思わずレイを見る。 レイはペンを指で回しながら、少しだけ眉を上げた。
朝比奈 ひかり
「雑ではないですよ。事実です」
その即答に、ひかりは何も言えなくなる。 事務所の人たちは、どうやら本気でふたりをセットで見ているらしい。 いや、見ているどころではない。 見せたいのだ。 はっきりと。
「たとえば、月1での雑談コラボとか」
朝比奈 ひかり
「回数、少なめですか?」
朝比奈 ひかり
ひかりは言葉を探して、それから視線を落とした。 少し前までなら、ただ“やりやすい同期”だと思っていた。 けれど、最近はもう少し違う。 同じ企画に入ると安心する。 隣にいると、空気の流れが分かる。 少しの間があっても、自然に埋まる。 そのことを、周囲にこうもはっきり言われると、どうにも落ち着かない。 レイはそんなひかりの様子を見て、わざとらしく肩をすくめた。
月城 レイ
朝比奈 ひかり
スタッフが、少しだけ笑いを含んだ声で返す。
「レイさん、嫌そうには見えませんけど」
月城 レイ
「じゃあ、やります?」
月城 レイ
その“まあ”が、やけに短かったせいで、ひかりは思わず横を向いた。 レイもこちらを見ている。 目が合った瞬間、どちらともなく視線を逸らした。
「では、初回はこの三つのどれかでどうでしょう」
マネージャーが候補を指で示す。
「ひとつは、ふたりでの雑談配信。もうひとつは、事務所内の新人紹介企画。最後は、視聴者参加型のゲーム配信です」
月城 レイ
レイが言うと、マネージャーは少しだけ笑った。
「無難、で済ませられるなら、そうしたいところなんですが」
朝比奈 ひかり
ひかりが聞くと、スタッフのひとりが、わざとらしく咳払いをした。
「いや、最近、ふたりの名前が一緒に出ること多いので」
朝比奈 ひかり
ひかりの声が少し上ずる。
「コメント欄とか、ファンの感想とか。あと切り抜きの反応も。かなり“セット感”があります」
朝比奈 ひかり
「そうそう。なんというか、もう“同期”というより、“組み合わせが完成してる”というか」
朝比奈 ひかり
ひかりは、思わず両手を上げた。
朝比奈 ひかり
「どういう言い方ですか?」
朝比奈 ひかり
ひかりは言いよどむ。 だって、明確に否定するのも変な気がする。 でも、完成してるとか組み合わせがどうとか、そこまで言われると、妙に恥ずかしい。 その横で、レイがさらりと言った。
月城 レイ
ひかりは、ぎょっとしてレイを見る。
朝比奈 ひかり
月城 レイ
朝比奈 ひかり
月城 レイ
朝比奈 ひかり
ひかりは思わず顔を覆いそうになる。 この人は、どうしてこういうときに平然としているのだろう。 いや、平然としている“ふり”をしているのかもしれない。 それがまた、余計に腹立たしい。 マネージャーはそんなふたりを見て、にやりと口元をゆるめた。
「ほら、今のもいい感じですね」
朝比奈 ひかり
ひかりが即座に返す。 すると、別のスタッフがさらりと追い打ちをかけた。
「息ぴったりですよ。もうちょっと隠してもいいんじゃないですか?」
朝比奈 ひかり
「そこはご想像にお任せします」
朝比奈 ひかり
会議室に、くすくすと笑いが広がる。 ひかりはもう、どう反応していいのか分からなかった。 隣を見ると、レイは腕を組んで、少しだけ目を伏せている。 でも、その口元はほんの少しだけ笑っていた。 ……絶対に楽しんでいる。
朝比奈 ひかり
ひかりが小さく言うと、レイはようやく顔を上げた。
月城 レイ
朝比奈 ひかり
月城 レイ
朝比奈 ひかり
月城 レイ
朝比奈 ひかり
月城 レイ
朝比奈 ひかり
そこでひかりは詰まった。 会議室の空気が、自分だけを見ているみたいに感じる。 いや、実際そうなのかもしれない。 マネージャーが、資料を閉じながら穏やかに言った。
「無理に距離を詰めろとは言いません。けど、ふたりが並ぶと強いのは確かです。そこはもう、事務所としても推していきたいところなので」
朝比奈 ひかり
ひかりがつぶやく。
「まあ、自然な範囲で、ですけどね」
その“自然な範囲で”が、いちばん怪しい。 ひかりはそう思ったが、口には出せなかった。 会議が終わったのは、それからしばらくしてからだった。 ふたりは資料を受け取り、会議室を出る。 長い廊下に出た瞬間、ひかりはようやく息をついた。
朝比奈 ひかり
月城 レイ
レイが即座に返す。
朝比奈 ひかり
月城 レイ
朝比奈 ひかり
月城 レイ
朝比奈 ひかり
月城 レイ
ひかりは、ぐっと言葉を飲み込んだ。 こういうときのレイは、妙に落ち着いている。 こっちだけが過剰に意識しているみたいで、それも少し悔しい。 廊下の窓から、午後の光が差し込んでいる。 その横を、ふたりの影が並んで伸びていた。
朝比奈 ひかり
ひかりが少しだけ声を落として聞く。 レイは前を向いたまま、少しだけ肩をすくめた。
月城 レイ
朝比奈 ひかり
月城 レイ
朝比奈 ひかり
月城 レイ
ひかりは、その質問にすぐ答えられなかった。 嫌、ではない。 むしろ、その逆だ。 レイと組むのは、思っているよりずっと楽しい。 だけど、事務所の人にああもにやにやされると、妙に意識してしまう。
朝比奈 ひかり
月城 レイ
朝比奈 ひかり
レイはそこでようやくひかりを見た。 その視線が、思ったよりやさしい。
月城 レイ
朝比奈 ひかり
月城 レイ
朝比奈 ひかり
月城 レイ
朝比奈 ひかり
月城 レイ
ひかりは、思わず足を止めた。 レイも数歩先で立ち止まり、振り返る。
月城 レイ
朝比奈 ひかり
月城 レイ
朝比奈 ひかり
言葉が出ない。 だって、今のは少しだけ、妙に本音っぽかった。 “まったく違うとも思ってない”なんて、そんなの、どう受け取ればいいのだろう。 レイは、ひかりの様子を見て、少しだけ目を細めた。
月城 レイ
朝比奈 ひかり
月城 レイ
朝比奈 ひかり
月城 レイ
朝比奈 ひかり
ひかりはそこで止まる。 否定できない自分に、少しだけ腹が立つ。 その横で、レイはふっと笑った。
月城 レイ
朝比奈 ひかり
月城 レイ
朝比奈 ひかり
月城 レイ
朝比奈 ひかり
思わず声が大きくなって、ひかりは自分で少し驚いた。 レイはそんなひかりを見て、今度は声を立てずに笑う。
月城 レイ
朝比奈 ひかり
月城 レイ
朝比奈 ひかり
月城 レイ
朝比奈 ひかり
即答だった。 レイは、それを聞いてさらに笑う。 ひかりはもう、完全に負けた気がした。 でも、なぜだろう。 悔しいのに、少しだけうれしい。 周りに煽られているだけなのに、それでも“並んでいる自分たち”を意識してしまう。 それが、かなり危ないことだと分かっていても。
朝比奈 ひかり
ひかりが気を取り直して聞くと、レイは少しだけ考えるふりをしたあとで言った。
月城 レイ
朝比奈 ひかり
月城 レイ
朝比奈 ひかり
月城 レイ
朝比奈 ひかり
レイは、ふっと笑って歩き出す。 ひかりもその横に並ぶ。
朝比奈 ひかり
ひかりは、少しだけ視線を横に向けた。
朝比奈 ひかり
レイが、前を向いたまま答える。
月城 レイ
朝比奈 ひかり
月城 レイ
朝比奈 ひかり
月城 レイ
朝比奈 ひかり
月城 レイ
ひかりは、一瞬だけ黙った。 ……逃げられない。 その言葉が、妙に胸に残る。
朝比奈 ひかり
月城 レイ
月城 レイ
朝比奈 ひかり
月城 レイ
ひかりは、少しだけ唇を尖らせた。
朝比奈 ひかり
レイは、そこで初めて足を止めた。 それから、ひかりのほうを向く。
月城 レイ
朝比奈 ひかり
月城 レイ
朝比奈 ひかり
月城 レイ
その一言が、やけに静かに落ちた。 ひかりは、レイの顔を見る。 レイはいつも通りの顔をしている。 でも、ほんの少しだけ、目がやわらかかった。
朝比奈 ひかり
レイが、少しだけ目を見開く。 ひかりは慌てて視線を逸らした。
朝比奈 ひかり
月城 レイ
朝比奈 ひかり
最後の言葉は、ほとんど声にならなかった。 けれどレイにはちゃんと届いたらしい。
月城 レイ
たったそれだけ。 なのに、その一言が妙にあたたかい。
レイは何でもないように歩き出す。 ひかりも、少し遅れてそのあとを追う。 廊下の先には、もう午後の光が傾き始めていた。 ふたりの影は、さっきよりも少しだけ近い。 会議室で煽られたことは、たぶんしばらく忘れられない。 でも、ああやって周りから見られていることを知ると、逃げたくなるどころか、少しだけ認めたくもなる。 ひかりは横顔を見ないようにしながら、そっと息を吐いた。
事務所の人たちは、たぶん本気でふたりを面白がっている。 けれど、その“面白がり”の中に、少しだけ正しさが混じっている気がした。 だって、隣を歩くレイは、やっぱり落ち着く。 だからきっと、ひかりもレイにとって、そういう相手なのだろう。 ……そうであってほしい、と、少しだけ思ってしまう程度には。
コメント
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第6話お疲れさまです! 会議室の空気感とか、事務所のスタッフにからかわれてる感じがすごく伝わってきて、読んでてこっちまで照れちゃった(笑)。 ひかりが「恥ずかしいの!」って思わず本音を出すところとか、レイの「それ、ずるい答え」に「ずるくない」って返す掛け合い、地味にリズムが良くて好き。 あと、廊下で「レイとなら、やりやすいし」って小声で言うひかり、それに「そっか」とだけ返すレイ…その“たったそれだけ”の温かさが、めちゃくちゃ刺さった。 周りに煽られて意識し始めるふたり、これからどう距離が変わっていくのか気になる!🔥