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最高でした😭視界が常にぼやけてたから、何回も読み返して読んでました😭切ねえ😭
東屋に着いた。 この間来たのは、確か8月の頭。 圭介が喧嘩に行く前は必ず来て、 お祈りしていた。
澪葉
全ての始まりはここからだったな、と思い出す。 付き合ったのも、キスしたのも、
初めて、ペヤングを一緒に食べたのも ここだったっけ。
秋の香りが鼻をくすぐる。 椅子に腰をかけ、目を閉じる。
澪葉
無意識にそんなことを思った。
澪葉
そして、また、 涙が溜まる。 これで何度目だろう。
澪葉
澪葉
ふと、圭介の言葉が脳裏をよぎる。
母の法事のとき、私が信じれず、泣けずにいるのを圭介は、「泣けよ。」と、胸を貸してくれた。
そして、 「辛いことがあっても向き合え、そうしないと前に進めなくなる。」 と言った。
彼は覚えていないかもしれないが、 私の胸にはずっと深く刻まれたまま。
彼がいなかったら、立ち直れていなかった。断言できる。
澪葉
澪葉
澪葉
澪葉
???
澪葉
後ろから、声がした。
風が少し強く吹いた。 それにのって、嗅いだことのある 柑橘系の香りがした。
もしや、と思った。 でも、そんなこと、ある訳ない。
澪葉
でも、この香りは間違いなかった。 声も、よく響いて低かった。
ゆっくりと、後ろを振り返る。
そこには、私に背を向けるようにして座った、大きな背中が、あった。
髪は、長くて、黒髪だった。
驚きで言葉が見当たらない。 ただ、その後ろ姿が愛おしかった。
澪葉
澪葉
澪葉
場地 圭介
場地 圭介
場地 圭介
澪葉
まさか、彼も同じことをしていたとは。思ってもみなかった。
この場所を大事に思ってくれていたのが、どうしようもなく嬉しかった。 そして、虚しかった。
場地 圭介
場地 圭介
澪葉
澪葉
場地 圭介
澪葉
澪葉
私たちは、背を向け合っていた。
ただ、居るだけの関係。 どちらかがいなくなったら、それまで。
今は、彼がいついなくなってしまうかが怖い。 ふっ、、とどこかへ消えてしまいそうで。
澪葉
澪葉
場地 圭介
場地 圭介
場地 圭介
場地 圭介
喉の奥がきゅうっと締まる。 苦しくなる。 そして、涙が溢れる。
すぐにでも、向きを変えて抱き締め合いたい。ぬくもりを感じたい。
澪葉
澪葉
場地 圭介
澪葉
だめだ、このまま居たら、「会いたかった」「大好き」「苦しい」 胸の中の言葉が全部溢れてしまう。
烏が鳴いた。 太陽は消え、空の明るいところが、闇に包まれていく。
澪葉
澪葉
澪葉
後ろから、ふわりと何かが私を包み込んだ。暖かかった。
場地 圭介
場地 圭介
場地 圭介
場地 圭介
澪葉
場地 圭介
場地 圭介
場地 圭介
澪葉
大粒の涙が、 胸にまわった彼の腕に落ちる。
突き放さなきゃいけないのに、 そうしなきゃ彼を守れないのに、 できない。
そうしたくない。
最後だから、彼はそう言った。 そうだ、最後なんだ、これで。 もう一生涯、彼のぬくもりに包まれることはないんだ。
澪葉
私は、彼の手をそっと解いた。
そして、彼に向かい合うように立ち上がった。
彼の顔をじっと見上げる。 彫りの深い、鼻、目、眉。 そして、口。 全てが酷く愛おしい。
彼は苦しそうな顔で、こちらを見ている。目が、泳いでいる。
場地 圭介
場地 圭介
澪葉
澪葉
澪葉
場地 圭介
すっと彼の腰に手を回し、 ハグをする。
やっぱり暖かい。 そして、圭介の落ち着く匂い。
場地 圭介
澪葉
場地 圭介
彼の腕が、私に抱きつくのを躊躇っているのがわかる。
澪葉
澪葉
場地 圭介
彼の左腕が腰に回り、 右手が私の頭をそっと包む。
澪葉
澪葉
場地 圭介
場地 圭介
澪葉
「私も」 と言いそうになるのを堪えた。 それは、できない。
澪葉
場地 圭介
澪葉
場地 圭介
場地 圭介
澪葉
澪葉
場地 圭介
場地 圭介
澪葉
沈黙が訪れる。 ただ、お互いのぬくもりを感じ合っている時間が過ぎていく。
私はそっと、彼から離れた。
顔を見上げると、すぐに目が合った。
お互い、想ってることは 一緒だったようだ。
私はそっと圭介の愛おしい顔を撫でる。そして、ふわりと唇を重ねる。
珍しい私からのキス。 最後はこうしたかった。
少し背伸びして、やっと届く彼の唇。
そして、そっと離す。
場地 圭介
場地 圭介
彼の大きな手が私の頬を包み込み、唇が降ってくる。私は彼の首に手を回す。
そして、ゆっくりと、舌を絡め合う。
今までで一番深く、濃厚だった。
澪葉
場地 圭介
しばらく、そうしていた。
そして、とうとう彼の唇が離れた。
澪葉
場地 圭介
澪葉
場地 圭介
私たちは、何も言わずに手を解き、 向きを変えた。 椅子に置いていたバッグを肩にかけて、歩き出した。
彼の足音も少しずつ遠ざかる。
澪葉
場地 圭介
そっと呟いて、微笑んだ。
それは、突然の悲報だった。
その日はよく晴れていたのに なんとなく気分が乗らず、もやもやしたハロウィンだった。
出かける予定などある訳もなく、 部屋で、ぼっと考え事をしていた。
午後になり、外に散歩でもしに行こうかと思い、玄関から出ようとした時だった。
スマホが鳴った。
澪葉
なんとなく不吉な予感がしたのは いうまでもない。
澪葉
千冬
千冬
澪葉
澪葉
千冬
胸がどきっと音を立てて鳴った。今日のもやもやはこれだったのだろうか。
澪葉
千冬
電話が切れる音がした。
スマホを持っていた右手が力を無くしてただれる。
澪葉
スマホと財布だけ持って、慌てて家を出た。
そこで聞いた話は、 ほとんど覚えていない。
ただ、病院に着くや否や案内されたのが霊安室だったことは覚えている。
薄暗い質素すぎる部屋には簡易的な台と線香があり、そこに、白い布を被った何かがあった。
私は持っていたバッグを落とし、力のない足取りでそこに向かった。
千冬
近くでは千冬が座り込んだまま泣いていた。あの光景は、ずっと刻まれている。
近づいて、布をめくる。
もう、何も驚かなかった。 そこには、眠ったままの圭介の顔があった。とても、穏やかだった。
ただ、私は放心状態で涙が出ているのかすら分からなかった。
ただ、その場に立ち尽くすだけだった。
それから、1週間。 学校も行く気になれず、家に籠っていた。
母が亡くなった時と同じ気分だった。とんでもない喪失感に追われていた。
そんな矢先だった。千冬から連絡があった。
千冬
千冬
澪葉
千冬
千冬
千冬
澪葉
千冬
千冬
澪葉
澪葉
千冬
千冬
千冬
澪葉
千冬
千冬
澪葉
澪葉
千冬
千冬
千冬
千冬
澪葉
澪葉
澪葉
千冬
千冬
澪葉
千冬
澪葉
千冬
千冬
澪葉
黒の礼服に身を包み、 木陰で待っていた。
外に出ない間に、随分と寒くなったように感じた。
澪葉
千冬
澪葉
千冬
澪葉
澪葉
千冬
千冬
澪葉
千冬
千冬
千冬
澪葉
動揺が隠せなかった。 自分で刺した?どういうこと? 頭の中がパニックになる。
千冬
千冬
千冬
澪葉
千冬
千冬
千冬
千冬
千冬
千冬
圭介なら、やりそうなことだと思った。だが、にわかには、信じられなかった。
突如に、喉が苦しくなる。 視界も霞む。 ぶわっ、と実感が湧き立てる。
圭介が、死んでいく姿が、脳裏に浮かぶ。きっと、笑っていたのだろうな、と思った。
澪葉
その場で立ちすくむ。
殺していた想いが、耐えきれなくなって、全て溢れる。
澪葉
澪葉
澪葉
澪葉
千冬
どれくらいそうしていたのだろう。 気がついたら、葬儀場にいた。
そこには、棺があった。 千冬と一緒に、焼香をしに行った。
親族は少なかった。 みんな各々で話をしている。 もう、焼香は済ませたのだろう。
私は、顔のところだけ空いた棺をのぞく。 そこでは圭介が眠っている。 後悔の念はなさそうな、すっきりとした寝顔だった。
澪葉
澪葉
気持ちは落ち着いていた。 泪が溢れてくるのもわかる。 もう、取り乱したりはしない。
菊の花を添え、そっと顔を撫でる。 昨日まであったぬくもりは、もう、ない。
''またね'' と最後に呟いたのに、届かなかった。その言葉の儚さにまたも泪があふれる。もう、叶わない約束。
それでも、私の楽しい記憶の中には、 いつも圭介がいる。
顔をよく見ておきたいのに、拭っても拭っても涙が止まらない。
何度も傷つけ合ったけど、何度も笑い合い、愛し合ったあの時間は、偽物ではない。
想うことは、ただ ''ありがとう'' だった。
澪葉
澪葉
澪葉
澪葉
澪葉
澪葉
澪葉
そして、そっとその場を去った。
ー8年後ー ー10月31日ー
今日は、圭介の命日。 墓参りの後、海にやってきた。
いつか、圭介と共にみた海。
澪葉
澪葉
澪葉
彼の笑い声が、波の音に乗って聞こえたような気がした。
澪葉
澪葉
澪葉
澪葉
澪葉
澪葉
そう呟き、白いカーネーションを海に投げた。
主
主
主
主
主
主
主
主
主
主
主
主
主
主
主
主
主