こちらはすまないスクールの二次創作になります。 キャラメル様よりリクエストいただきました、銀さんが猫になるお話です。 大変お待たせしてしまい申し訳ありません。楽しんでいただけたら嬉しいです。それでは。
その男はむしゃくしゃしていた。彼は科学者で、様々な薬やポーションの開発に貢献していた。
しかしその功績は無常にも高飛車な同僚に横取りされ、上司にはその同僚のミスをなすりつけられる始末である。
そんなことだから男はやり場のない怒りとストレスを限界まで抱え込んでいた……秘密裏に怪しい研究を行い、開発した薬を使って民間人を巻き込んでしまうほどに。
これは……そんなはた迷惑で哀れな男に巻き込まれてしまった、1人の少年とその愉快な仲間達の話である。
すまない先生
ここはお馴染みすまないスクール。由緒正しきすまない一族であり試練を乗り越えて英雄となったこの男、すまない先生は現在すまないスクールで授業を通じて生徒たちの特訓をしているのである。
そして本日も生徒たちのために授業をするべく学校にたどり着いたのだが……
猫
すまない先生
すまない先生
校門前にいたのは一匹の小さな猫。深い翡翠色の目はくりくりで、ふわふわの長い毛並みは日光に照らされてほんのりと輝き、触り心地が良さそうだ。その猫はすまない先生が近づいてきても逃げるどころか、むしろ縋るように先生の足に前脚を伸ばす。
すまない先生
猫
すまない先生
猫
何かを訴えかけるような様子だが、すまない先生は空腹だろうと解釈して猫を抱き抱えて給食室へ向かってしまう。
ミスターバナナ
ミスターブラック
賑やかな朝のすまないスクール。同時に学校に着いたミスターバナナとブラックは、何やら廊下を歩きながら話し合っている様子だ。
ミスターバナナ
ミスターブラック
ミスターバナナ
ミスターブラック
すまない先生
2人が教室に入って真っ先に目撃したのは一匹のふわふわな子猫。そしてその子猫をデレデレ顔で抱き抱えるすまない先生。さらにそれを囲う様に猫に構い倒すミスターブルーとマネーの姿だった。
ミスターバナナ
すまない先生
ミスターブルー
猫
ミスターマネー
すまない先生
ミスターバナナ
ミスターレッド
あまりの骨抜きっぷりに思わず呆れ顔になるバナナに、これまた子猫に夢中になる弟に呆れ果てたミスターレッドがため息混じりに応える。どうやら教室に着いて早々に子猫にハートを射抜かれてしまったらしい。
ミスターブラック
ミスターブルー
ミスターマネー
ブラックの言う通り、ここ数日で街中の猫が妙に増えているのである。繁殖期か?と思ったものの、今は猫の繁殖期ではない。可愛い猫が増えること自体は目の保養なのだが、至るところでうろついているのだ。この子猫も急増した一匹だろうか。
つられて首を傾げるブルーの向かい側では、マネーが別方向で頭を悩ませている。猫用の拠点をだの糞尿の掃除だのと、今はそんなことを考えている場合ではないだろう。
ミスターバナナ
ミスターマネー
ミスターブラック
すまない先生
猫
すまない先生
ミスターブラック
教室には先生やブラック達とほとんどの生徒が揃っているが、ミスター銀さんと赤ちゃんがまだ来ていなかった。赤ちゃんはともかく、真面目なミスター銀さんは滅多に遅刻しない。いつもならすでに教室に着いている頃なのだが。
などと子猫に構いながら皆が話していると、子猫を眺めていたブラックがふと首を傾げる。
ミスターバナナ
ミスターブラック
ミスター赤ちゃん
と、ここで話題に上がっていたミスター赤ちゃんが到着した。これで残るはミスター銀さんとなったわけだが…。
ミスターブラック
すまない先生
赤ちゃんの姿を確認したすまない先生は、早速抱っこした子猫を見せている。子猫はもがくように小さい手をパタパタと動かしている。
赤ちゃんは動物と会話ができるのだ。早速先生は子猫の言っていることを聞き出そうとする。
ミスター赤ちゃん
ミスターブラック
ミスターブラック
すまない先生
猫
すまない先生
ミスター赤ちゃん
一旦落ち着くため、各自席に着いた面々。ミスター赤ちゃんだけは子猫、もといミスター銀さん翻訳のためにすまない先生の教卓に座っているが。
すまない先生
ミスターブラック
ミスターブルー
ミスターブラック
猫
しょぼくれた顔で項垂れるミスター銀さん。彼が項垂れたのは自身の不注意で猫に変えられてしまった不甲斐なさからなのだが、それよりも……
ミスター赤ちゃん
すまない先生
猫
笑顔で子猫もといミスター銀さんを抱っこする先生。実は状況整理の最中もずっと抱っこしたまま毛並みを堪能していたのである。当然ミスター銀さんは渾身の力で暴れるも、当然最強かつ最恐の英雄に叶うはずがなく、かれこれ数十分間抱っこされたままである。
ミスターブルー
ミスターマネー
猫
ミスターブルー
ミスターマネーの爆弾発言に一同騒然となる。特にびびりのミスターブルーの動揺っぷりは凄まじい。もちろんマネーはお茶目な冗談のつもりだが、けがわにするなど正直笑えたもんじゃない。命の危機を察知したミスター銀さんは更にすまない先生の腕の中で暴れ狂う。
ミスターマネー
ミスターバナナ
ミスターブラック
ミスター赤ちゃん
気前よく返事をしつつさりげなくミルクを催促するあたり、さすがミスター赤ちゃんと言ったところか。だがまあミルクで済むならとブラックは構わず翻訳を求める。
そして赤ちゃんはミスター銀さんの前に立ち、早速翻訳を始める。
ミスターブラック
猫
ミスター赤ちゃん
朝早くジョギング、これはミスター銀さんのいつものルーティンだ。この時点では特におかしい点はない。
ミスターブラック
猫
ミスター赤ちゃん
白衣の男、という突如現れた怪しいワードにミスターブラックの目の色が変わる。単なる白衣の男なら科学者か医者かだろうが、状況が状況だ。すまない先生も怪しいと感じたのか、今度は白衣の男について言及する。
すまない先生
猫
ミスター赤ちゃん
ミスター銀さんの翻訳された言葉に一同絶句する。つまりミスター銀さんは朝のジョギングの最中に誘拐され、拉致された場所で猫にされてしまったのだろう。そして話の中に出てきた白衣の男…おそらくそいつが犯人か。
すまない先生
ミスターブラック
すまない先生
見知らぬところで生徒を拉致された怒りか、すまない先生が勢いよく立ち上がる。抱っこした子猫…銀さんを勢いで飛ばさない程度に。
中には面倒くさそうなものもいたが、このまま放っておいて良い案件ではない。すまない先生に続くように続々と教室を抜け出す。
ミスターレッド
ミスターブルー
ミスターマネー
ミスターバナナ
すまない先生
勢いで飛び出してきた先生達だが、今のままで探すあてなどあるはずもなく。しかし今から途方に暮れては先生としての顔が立たない。ひとまず校門前に集まってどこへ向かおうかと話し合う。
ミスターブラック
すまない先生
女の子1
女の子2
すまない先生
ブラックの提案により早速街へ向かおうと外へ出向いた矢先、突如通行人の女の子達が押し寄せてくる。女の子達の視線の先にはすまない先生が抱えている子猫、もといミスター銀さんだ。彼女たちはキラキラした眼差しで猫銀さんを見つめている。
女の子1
女の子2
女の子3
すまない先生
大勢の女の子に囲まれるという、一見女の子好きには羨ましい光景だが、囲まれている側はたまったもんじゃない。特にミスター銀さんは完全にすまない先生の腕の中で硬直している。
ミスター赤ちゃん
女の子2
女好きのミスター赤ちゃんが早速声をかけるが、当然ばっさりと切り捨てられる。ず〜ん……と悲しげなBGMが流れてきそうな哀愁を漂わせてしゃがみ込むミスター赤ちゃんに、いつぞやにも見た光景だなと密かに思う数名。
ミスターレッド
ミスターマネー
猫
普段から眠たげなジト目を更にジト目にして赤ちゃんを見やるミスターレッド。その横でいつものテンションでありながらズバッと容赦なく言い放つミスターマネー。
ミスター銀さんも流石に堪えきれなかったのか、おいおいというように一声漏らしてしまう。子猫特有の甲高い鳴き声で。そしてその鳴き声はバッチリその場にいた全員の耳に届いてしまったわけで…
女の子1
女の子2
女の子3
可愛らしい子猫の鳴き声にすっかりメロメロ状態に堕ちてしまった女の子達が更に迫り来る。猫銀さんはすっかりびびっており、仰反るように先生の腕の中で後ずさる。
先生たちも危機感を覚え、逃げるように雑踏を抜け出す。
すまない先生
必死に走ってきたすまない先生たち。なんとか目的の街にたどりつくが、ここでも波乱からは逃れられなかった。
すまない先生
人
人
人
津波のごとく子猫目掛けて押し寄せてくる村人の群れ。少女達の群れを全力疾走で駆け抜けてきた上のこの勢いと圧力だ、すまない先生達はあっという間に村人たちに圧されてしまう。
ミスターレッド
ミスターブルー
すまない先生
好き勝手に伸ばされる手を必死で払い除けるが、至る所からシャッター音まで響いてくる。非常に迷惑極まりないと徐々に怒りが込み上げてくる先生達。先生の腕の中にいるミスター銀さんは村人の圧にすっかり怯えてしまい、泣きそうな顔でしがみついている。
ミスターバナナ
このままでは問題解決の前に銀さんが圧死しかねない。そう判断したミスターバナナは止むを得ずロケットランチャーを取り出し、村人達に向けて構える。強引だが追い払えるのならこうするしかない。他の生徒達も同じ思いか、各々の武器を取りだす。だが…
人
ミスターバナナ
すまない先生
ミスターレッド
ドン引きした顔で後ずさるすまない先生に、短剣を構えたレッドが冷静につっこむ。しかし凶器にも銃火器にも臆さないのであれば、いよいよ手段を選んでいられないだろう。ミスターバナナは引き金を引き、砲口を村人達へ向けて…
ブシュウウウウウウッ!
すまない先生
突如放たれた煙幕にその場にいた村人達がパニックを起こす。蜘蛛の子散らすように逃げ惑うが、徐々にその声が高く、身体も縮まっていき…
すまない先生
煙が晴れたのを見計らって顔を上げるすまない先生とブラックが見たのは、先ほどまで大勢の村人が押し寄せてきた場所。そこには村人達の姿はなく、代わりにいたのは大量の猫。茶色の毛並み、虎模様の毛並みと様々だが、どの猫も皆戸惑うようにあたりを見回したりその場に縮こまっている。
ミスターブラック
???
突如現れた声に、先生達は一斉に目を向ける。そこに立っていたのは白衣を着た眼鏡の男。そしてその男の手に握られていたのは紐がついたボールのようなもの…煙玉だろうか。
ふと今朝の銀さんの話を思い出す。銀さんは朝、見知らぬ白衣の男に出会ったと言っていた。そしてついさっきの村人が猫に変わった光景。それらをつなぎ合わせると…
すまない先生
科学者
すまない先生
科学者
すまない先生
ミスターブルー
ミスターレッド
ミスターブルー
可愛い子猫達に傾きかけていたブルーだが、レッドの説得にハッと我に返る。レッドの言う通り、見た目は可愛い子猫でも中身は先程でフンフン言っていた村人である。
科学者
ミスターブラック
すまない先生
科学者
捕まえようとする先生の手をかわした男は、エリトラを装備し飛び立ってしまう。どうやらエリトラと花火を隠し持っていたようで、男はあっという間に空の彼方へ飛んでいってしまう。
すまない先生
ミスター赤ちゃん
ミスターブラック
憤慨する赤ちゃん達と共に追いかけようとする先生だが、肩に手を置いたブラックによって止められる。何か良い方法があるのかと尋ねると、ブラックはいつもの調子で答える。
ミスターブラック
すまない先生
ミスターブラック
ミスターバナナ
よくわからない単語に頭に?を浮かべる先生達をよそに、ブラックは隣に立つバナナに親指で合図を送る。バナナはそれに頷くと、構えていたロケットランチャーを男が飛び去っていった方向に向けると…ガチャっと引き金を引いた。
ヒュルルルルルル……
ズドォオオオオオン!!!
科学者
ロケットランチャーをもろに受けた男は、煙を上げながらヒュルヒュルと墜落し、大きなキノコ雲をあげて爆発した。
ミスターブラック
すまない先生
10分後。がんじがらめにふん縛られてすっかりおとなしくなった男を囲むようにして、すまない先生は男に尋問する。
すまない先生
科学者
話によると、男はとある製薬会社に勤めていた有能な科学者で、ある日難航していた新薬の開発を成功させた。だがその成果は性格の悪い同僚に横取りされた(裏で寝取られた恋人も関与していたらしい)。
挙句上司に身に覚えのない重大なミスを押し付けられ、退職に追い込まれたことで男の不満はついに爆発し、今回の事件を引き起こしたと言う。
科学者
ミスターレッド
すまない先生
科学者
唸るように吐露する男の言葉に、なるほどと頷く。安心と信頼が命の製薬会社で猫になるなんて怪しい薬を開発しているとなれば、民間人は不信感を抱きその会社の薬には手をつけなくなるし、病院も安全を考慮して取引をしなくなるだろう。
すまない先生
そう言うすまない先生だが、思うところがあるのかその表情は苦々しい。猫化事件だけを見れば男の自業自得だが、そこに至るまでの経緯や動機があまりにも不憫すぎる。生徒達も同じ思いなのか複雑な顔をしている。一部の生徒は変わらず男を睨んでいるが。
だがここで一つ気になったのがミスターブラックだ。ブラックは画面越しの無機質な目でじっと見つめ、淡々とした口調で男に問いかける。
ミスターブラック
科学者
ミスターブラック
科学者
そこまで言って男は座り込んだまま、裁きを受ける罪人の如く頭を差し出す。
科学者
すっかり気力を無くしてしまった男に、すまない先生たちは何とも言えない顔をしてしまう。だが決して野放しにはできない。
仕方ないと警察を呼ぶためにスマホを取り出すが、ここで飛び出したのはなんとミスター銀さんだ。銀さんは子猫の姿のまま、先生の腕から抜け出し、座り込んだ男の元へ駆け寄る。
猫
科学者
今更許してくれとは言わない、そう言って子猫の頭を撫でる男の手つきはとても優しい。そんな男に子猫…銀さんは何かを訴えかけるようにミャーミャーと男の足によじ登る。
猫
すまない先生
ミスター赤ちゃん
科学者
ミスター赤ちゃん
ミスター赤ちゃんが翻訳した言葉に、男は目を見開き硬直する。いくらお人好しのこの少年だとしても恨まれて当然だと思っていたのだろう。だがミスター銀さんはそんな男すら許してしまうくらいにお人好しなのだ。
たとえいじめられようと、身体を乗っ取られようと、そのいじめっ子すら助けて改心させてしまうその清らかさは、神をも揺るがすほどなのだから。
科学者
猫
銀さんの優しさに、男は心から後悔し涙した。そしてぼろぼろと泣きながら、心からの詫びをする。すまなかったと、何度も。そして銀さんはそんな男に、気にするな、大丈夫だと言うように前足を添える。
ミスターバナナ
ミスターマネー
銀さんのお人好しっぷりに呆れた様子のミスターバナナを宥めるように、ミスターマネーがバナナの肩に手を置く。マネーは上機嫌な様子で1人と一匹の様子を眺めている。
やがてすまない先生が呼んだ警察が到着し、男は警察に連行された。その際男は猫化を戻す薬をブラックに手渡し、これを銀さんや村人達にかけて欲しいと頭を下げていた。
ブラックは装置を使って猫になった村人達やミスター銀さんに薬を振りかけ、数分後村人達や銀さんは元の姿に戻ったという。
後日、すまないスクールにて…
ミスター銀さん
ミスターバナナ
ミスター銀さん
放課後、ミスター銀さんとミスターバナナは2人で教室に残って語り合っていた。先日の猫化騒動についてである。
例の男についてだが、曰く警察に連行された男は心から反省している様子だったため、執行猶予が言い渡されたようだ。そして元々猫好きだったのもあり、転職先の猫カフェで真面目に働いているようだ。
ミスター銀さん
ミスターバナナ
ミスター銀さん
自分を猫に変えた男に招待されて遊びに行くなど…それができるのは目の前にいるこのお人好しくらいだろうな、とバナナは密かに思う。だが滅多に人を信用しないバナナも、他よりも銀さんと行動することが多いくらいには嫌いではない。人が良すぎるのは心配だが。
ミスター銀さん
ミスターバナナ
手を振りながら教室を抜ける銀さんを見送り、バナナも銃の特訓をしなくてはと、懐のピストルに手をかける。
余談だが、例の男が務めていた会社の上司は資金の横領がばれて賠償金を支払わされた上でクビになり、男の功績を奪っていた同僚も仕事ができず元恋人との浮気もばれて揃ってクビになったそうな。
ここまで読んでくださりありがとございました!
コメント
30件
上司さん自業自得ですね笑笑