シン
おい、貧乏学生!
マイ
シンくん……。
マイ
あの、私にはマイっていう名前があるんだけど……
シン
はぁー?
シン
お前の名前なんか呼んだら貧乏が移るだろうが!
マイ
そんな言い方……。
シン
お前、生意気に今回も学年1位だったらしいな!?
シン
貧乏なお前は、勉強よりもすることがあるんじゃねぇの?(笑)
シン
ま、どうせお前はズルして1位になったんだろうがな!(笑)
マイ
ズ、ズルなんてしてないわよ……!
マイ
ちゃんと勉強して、テストに挑んだんだから……!
シン
どうだかなぁ(笑)
シン
貧乏人って、ズルい手はすぐに思いつくだろ?(笑)
シン
貧乏人は余計なことを考えずに、せっせと体を使って働けってんだ
マイ
貧乏という事だけを理由に肉体労働を強いらなくても……
シン
そもそも、この高校にお前みたいな貧乏学生が
シン
どうやって入学できたっていうんだよ!
シン
ありもしない金で入学をせびったのか?(笑)
マイ
そ、そんなことしてないよ……!
シン
この私立高校の親は医者、弁護士、大手企業の重役
シン
俺の父さんのように政治家として
シン
日本のために、大きな活躍をしている親ばかり。
シン
その子どもは、自然と日本のために働く
シン
有能な学生ばかりなんだ。
マイ
そうなんだね…
シン
それなのに、おまえみたいな貧乏学生……
シン
ウチの品格が下がるから、とっとと退学してしまえ!
シン
貧乏人はどこで勉強しようが一緒だろうが!(笑)
シン
ていうか、公立高校へ行った方が仲間が多いんじゃねぇの?(笑)
マイ
そ、そんなこと……!
マイ
もちろん、近所の公立高校へ入学した方が友達は多いけど、
マイ
私には目標があってこの学校へ進学したの。
マイ
だから、シンくんになんと言われようが、
マイ
学校をやめるつもりはないわ……!
シン
はぁー?
シン
金のない貧乏人のくせに、意地張りやがって!
シン
お前の家、みんなで破産するんじゃねぇの?(笑)
シン
あ、お前の家は母親しかいないんだよな?(笑)
シン
お前と同じで、ロクでもない女だから
シン
父親が出て行ったんだろ?(笑)
マイ
そんなんじゃない……!
マイ
お母さんのこと、バカにしないでよ……!
シン
チッ、うぜぇな!
シン
マジになってんじゃねぇよ!
シン
ま、いいわ。
シン
どうせお前、近々退学になるだろうからな(笑)
マイ
?
マイ
どういうこと……?
シン
ま、楽しみにしてろって!(笑)
翌日
マイ
ちょっと、シンくん……!
マイ
あなた、どういうつもり……!?
シン
あ?
シン
何だよ突然。
シン
ていうか、貧乏が移るからメッセージなんか
シン
送ってきてんじゃねぇよ。
マイ
私の机の中に、カンニングペーパーがあったって
マイ
報告があったらしいの。
マイ
で、もちろん私はそんなことしていない。
シン
はぁ?(笑)
シン
お前、毎回成績が良いと思ったらカンニングしてたのかよ?(笑)
マイ
し、してない……!
マイ
先生がカンニングペーパーを見せてくれたけど、
マイ
これ……
マイ
シンくんの字だよね……?
シン
はぁー?
シン
自分がカンニングを疑われたからって俺のせいにすんな!
シン
これだから貧乏人は嫌いなんだよ!
マイ
いや、だって……
マイ
数式が微妙に間違えていたし、クセ字の具合も
マイ
シンくんのものに似ていたんだけど……
マイ
シンくんじゃないの……?
シン
なんだよ。
シン
お前、確証がないのに俺のことを疑ったんだな……。
シン
ウチのクラスでもお前のことをいいように思っている奴は少ない。
シン
このLINEをクラスLINEに流して
シン
お前の本性をみんなに言ってやるからな!
マイ
そんな…
シン
お前、明日からマジで学校に来れなくなるな?(笑)
シン
これで、お前は退学。
シン
これまでの学費も全て水の泡だな(笑)
シン
お前のとこ、一家離散だな(笑)
マイ
一家離散になんてならない……!
マイ
そんな事はさせないんだから……!
シン
でも、お前明日からしばらく停学処分だろ?(笑)
マイ
……何で知ってるのよ。
シン
お前の事、結構ウワサになってんだぜ?(笑)
シン
俺はお前がすぐにでも退学にならないかと
シン
期待してるんだ(笑)
マイ
そんな……
シン
お前には敷居の高い場所だったんだよ(笑)
シン
とっとと辞めて、公立に行け!(笑)
数日後
ゴウ
やぁ、マイちゃん。
ゴウ
久しぶりだね。
マイ
ゴウさん……
マイ
お久しぶりです。
ゴウ
実は昨日、マイちゃんのことを見てね。
ゴウ
……元気にしてる?
マイ
えぇ、それなりには……
マイ
ゴウさんもお母さんと仲良いですか?
ゴウ
あぁ、仲良くしてもらってるよ。
マイ
そうですか、それはよかったです。
ゴウ
それで、さっきの話だけど……
ゴウ
昨日、キミを駅前で見たんだ。
ゴウ
元気がなさそうに見えてね……
ゴウ
もし、相談とかあれば、聞ける範囲で聞かせて欲しいな。
マイ
いえ、そんな聞いてもらうほどのことは……
ゴウ
本当に?
ゴウ
マイちゃんは頑張り屋さんだからさ。
ゴウ
お母さんに心配をかけないように、
ゴウ
また頑張ってるんじゃないかなって思って。
マイ
ゴウさん……
ゴウ
でも、キミはまだまだ子どもでお母さんも俺も
ゴウ
心配してるんだよ。
ゴウ
だから、もし話してもらえるなら、教えて欲しいな。
マイ
あの……
マイ
1つ約束して欲しいことがあるんですけど……
ゴウ
なんだい?
マイ
お母さんには、言わないでもらえますか……?
ゴウ
もちろん、マイちゃんの嫌がることなんてしないよ。
マイ
実は、学校でカンニングを疑われているんです……
ゴウ
えぇ、カンニング……?
ゴウ
マイちゃんはさ、そんなことしなくても
ゴウ
テストで困るような成績を取らないよね……?
マイ
もちろん、カンニングなんてしていません……!
マイ
でも、私の机の中にカンニングペーパーを入れられて
マイ
それを先生に提出されて、疑われているんです……。
ゴウ
なるほどね……
ゴウ
犯人の目星はついているの?
マイ
えぇ……
マイ
恐らくそうだろうなって子に聞いてもシラを切られました……
ゴウ
まぁ、普通はそうだろうね。
ゴウ
自分でしておきながら、やりました!なんて
ゴウ
馬鹿正直に答える人はいないだろうから……。
ゴウ
マイちゃんがよければ、このことは俺に一任してもらえないかな?
マイ
え……?
ゴウ
俺に、いい考えがあるんだ。
マイ
いい考え、ですか……?
ゴウ
あぁ、きっといい方向に事が転ぶからさ。
マイ
そう、ですか……
マイ
それなら、ぜひ……。
マイ
私、この学校を退学になったら
マイ
お母さんに迷惑をかけちゃうから、やめたくないんです……。
ゴウ
あぁ。ぜひ俺に任せてくれ。
数日後
シン
おい、貧乏学生!
シン
お前、どういうつもりだよ!
シン
とんでもないことをしてくれたな……!
マイ
とんでもないことって……。
シン
なんでお前なんかが理事長と知り合いなんだよ!
シン
それに、俺よりもお前の方が信用があるって……
シン
納得できねぇんだよ!
マイ
お前なんかがって……
マイ
そりゃあ、私特待生だから。
マイ
いわば、理事長のおかげで無償で高校に通えてるの。
マイ
だから、理事長が私のことを知らないはずがないでしょ?
シン
へ?
マイ
知らなかったの?
マイ
それで散々私のことを批判していると思っていたのだけど。
シン
知らねぇよ……!
シン
それに、あの来客はなんだ!?
マイ
あの人は、お母さんの知り合いだけど。
シン
なんでお前の母親の知り合いが、
シン
俺のこと色々知ってるんだよ……!
マイ
探偵らしいよ。
マイ
私も、今日来るまで知らなかったけど……。
シン
お前、探偵なんかに調べてもらってたのかよ!
シン
ずるいだろ!
マイ
ずるいって言われても……
マイ
そもそも、シンくんが私のカンニングを
マイ
でっちあげたのが原因だよね……?
シン
で、でっちあげたって……!
マイ
ゴウさんが証明してくれたけど、
マイ
廊下に設置されてた防犯カメラに、
マイ
シンくんが私の机にカンニングペーパーを入れてるところが
マイ
記録されていたの。
マイ
これをでっち上げたと言わずに、
マイ
なんといったらいいの?
シン
なんだよ……!
シン
貧乏人のくせに、生意気なんだよ!
マイ
生意気って……。
マイ
あのねぇ、私は理事長の期待に応えるために
マイ
入学が許可されたの。
マイ
あなたみたいに、親のお金に頼らないと入学できないような
マイ
お粗末な成績を取っている訳じゃないの。
シン
なっ……!
シン
お前、なんでそれも……!
マイ
これも、ゴウさんから教えてもらったの
マイ
元々疑問ではあったのよね。
マイ
特待制度を使わなくても、ウチの学校って
マイ
一般的には偏差値が高いと言われている学校なのに、
マイ
どうして、学力がそこまで達していないシンくんがいるのかなって
シン
お前、俺のこと見下してたのかよ!?
マイ
見下してはいないけど、疑問に思っていたの。
マイ
でも、今日のゴウさんの説明で納得したわ。
マイ
あなた、政治家のお父さんが多額の金額を
マイ
入学の採用担当に渡したんですってね。
マイ
だから、あなたでも入学が出来た、と。
シン
お前……!
シン
それ以上俺のことバカにしたら、父さんに言いつけるぞ!?
マイ
勝手にすればいいじゃない。
マイ
私も、ゴウさんが集めてくれた資料を元に、
マイ
あなたが裏口入学したということを
マイ
マスコミに言うから。
シン
なっ!?
マイ
人のこと脅してるんだから、
マイ
それくらいやり返されるつもりでいいなさいよ!
シン
くそ……!
シン
貧乏人が調子に乗りやがって!
マイ
それと、私のことをずっと貧乏人貧乏人って揶揄してるけど
マイ
あなたの家庭が裕福なのは、お父さんが政治家をしていて
マイ
色々と活躍しているからでしょう?
マイ
どうしてあなたの力じゃないのに、
マイ
あなたがそこまで偉そうに言えるの?
シン
は、はぁ!?
マイ
今回、私をハメようと企んだことや
マイ
普段の素行が風紀を乱してるって
マイ
理事長がおっしゃっていたよね?
マイ
それなのに、あなたはまだ同じことをやろうとするの?
シン
うるせぇ!
シン
なんでお前にそんなこと言われなきゃいけないんだよ!
マイ
たしかに、私にそんなこと言う権利なんてないわ。
シン
フン!
シン
そうだろうがよ!
マイ
でも、それはあなたも同じ。
マイ
少なくとも、あなたより勉強を頑張って
マイ
特待生として入学することができた私の事を
マイ
アンタにバカにされる筋合いなんてないわ!
シン
……あ?
マイ
私よりも良い成績取れるようになってから文句言いに来なさい!
マイ
ま、もう退学処分を食らっているから
マイ
金輪際会うことは二度とないでしょうけどね!
マイ
永遠にさようなら!
マイ
これからは、お父さんの力を借りなくても
マイ
自力でどうにかできるように、自分自身の
マイ
力を一生懸命磨くことね!
シン
クソッ……!!
シン
クソがぁあああっ!!!
後日談
マイ
シンくんは退学後、他の学校の編入試験を受験した。
マイ
しかし、私立高校、偏差値の高い公立高校、他の高校を受験したが
マイ
ことごとく失敗したらしい。
マイ
奇跡的に一校のみ合格することができたそうですが、
マイ
そこは喧嘩自慢の不良や素行の悪い生徒ばかりが通う男子校。
マイ
彼の人を見下した性格が、彼らの癪に障ったらしく、
マイ
彼は毎日不良達にイビられながら生活をしているらしいです。
マイ
私はというと、お母さんとゴウさんが良い関係になれるように
マイ
背中を押すのに精力を尽くしています。
マイ
もちろん、在籍を続けることができた高校で
マイ
勉強にも励んでいます。
マイ
これからも、テストで1位を取り続けられるよう
マイ
勉強に尽くしていきます!