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No.11
落っこちた先は天国
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森本慎太郎
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森本慎太郎
そんな会話を繰り広げたのは 多分11時前だと思う。
それから私は自室と慎太郎の 部屋を行ったり来たり。
次第に漫画を持って 行き来するのが面倒になって、 慎太郎の部屋のベッドと本棚の 間の床に座って読み始めたら、 まぁこれが最高だった。
隣には読み終えた本と、 飲みかけのペットボトル。 トイレに行くのも面倒に なるほど読み込んでいると、 ガチャ、と扉が開く音に 飛び上がってびっくりした。
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森本慎太郎
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森本慎太郎
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森本慎太郎
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『そんなことより、 電気つけないと目悪くなるぞ』 という声とともに明るくなった 部屋。時計を見ると17時。 大変だ。 6時間も漫画読んでる。
森本慎太郎
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森本慎太郎
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少しして背もたれにしている ベッドが揺れて、寝そべった 慎太郎が、わたしの肩越しに 漫画を読んでいるのが分かる。
わざとページをめくらずに いると、後ろから伸びてきた 手が次のページへ。
そして、最後のページまで その手は肩に乗っかったまま。
6時間かけて読み終えた漫画の 最後の1冊を閉じると、 謎の達成感とじんわりとした 幸福感に包まれる。
腕を持ち上げて伸びをして、 そのまま後ろに倒れ込む。
慎太郎のきゅるきゅるとした 瞳が、『面白かった?』と、 感想を求めているので、 「面白かった」と返すと、 『もう喋っていい?』と うずうず。
待ってましたと言わんばかりに 漫画の補足情報と慎太郎の 熱い思いが溢れ出した。
なんだかまるで、夏休みの 彼氏の家に遊びにきた みたいな気分だ。
沢山の漫画に囲まれた 騒がしい柄のシーツ。
ここが妙に落ち着くのは、 よく知っている匂いがするから なのかもしれない。
本棚に並ぶ、沢山の 読んだことない漫画たちから 次のおすすめを聞く。
次のお休みの楽しみを 予約すれば、 『なぁ、○○、腹減らねぇ?』 と楽しげな声が降ってきた。
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森本慎太郎
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慎太郎が作る親子丼の 美味しさを思い出して、 一層空腹が増す。
おかしいな、ずっと家で漫画を 読み込んでいただけなのに。
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森本慎太郎
慎太郎が手際よく作業するのを 見ながら、なんとわたしは インスタントのお吸い物に お湯を注いだ。
片方、うっかりお湯を 入れすぎたので、まともに 出来た方を彼へ。 これも愛情のひとつだ。
丼のご飯も、ひとつは少なめ、 ひとつは大盛り。 夏休みの彼氏の家にしては 上出来すぎるな、と思いながら 向かい合わせに座って、 お吸い物を啜る。 うん、やっぱり薄い。
話は漫画の内容から、 今日の撮影の話へ。 お喋りは止まらないのに、 彼の手元のご飯は みるみるうちに減っていく。
ころころ変わっていく話題に 笑いながら、あの本棚の中身を 全部読んだって、慎太郎と こうしている時間の方が 楽しいんだろうな、なんて 思ったり。
あぁ、夏休みを彼の家で過ごす 女の子は、こんな時間のために 彼の趣味に染まるのだろうか。
うん、きっとそうだね。
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