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賭ケグルイ藍

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賭ケグルイ藍

第2話 - 『一ノ瀬彼方』という男

39

2021年10月25日

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ここは私立百花王学園

財政界の有力者である子女が多数通うこの学園で必要とされるのは、

勉強の成績、スポーツの出来

……など、生ぬるい物ではない

駆け引き、読心術、ここぞという時の勝負強さ

すなわち、ギャンブルの強さである

……なんて、今更ながらとんでもない学園に編入してしまったと思う

絶対この学園建てたやつ、頭狂ってるだろ

編入時に聞いた話によると、伝統みたいにギャンブルをしてるらしいし……

……っと、俺、一ノ瀬彼方です、高校2年生

1年生の途中くらいに、この学園に編入してきたよ

先生

それじゃあ、今日の授業はここまでね

彼方

（やっと放課後か……）

クラスメイトA

よっしゃ、終わったー！

クラスメイトB

今日何する？

クラスメイトC

一風変わって花札とかは？

クラスメイトの会話を横目に、俺はテキパキと帰り支度をする

……誰も、俺のことは気にも留めない

あぁ、別にいじめられてるわけじゃなくて、ここに来た時からずっと、周りと一切連んでこなかっただけだよ

彼方

（あの時は、一ノ瀬彼方です、としか言わなかったしなぁ……）

荷物をまとめながら、編入時にした自分の無愛想な挨拶を思い出す

ずっとギャンブルもしてないから、一見は賭け事嫌いなツレないやつ

普段かけてる黒縁メガネも相まってクラスの中では存在が薄いから、みんなには根暗なやつと思われてる

……っていうか、言われてる

彼方

（まぁ、それもしょうがないか）

自分で言うのもあれだけど、俺は世間でいう、“イケメン”の部類に入っていると思ってる

親には目立つなって言われてるし、こうでもして隠さないと、噂ってすぐに広まるじゃん？

彼方

（それも、今日でおしまいだけどね）

目立つな、と言われてたけど、それは昨日までの話

彼方

（せっかくだし、教室よりも広いところがいいか。）

彼方

（ここより広いと言ったら、どっかの賭場だけど……）

たしか、一番広いのは第6賭場だったような

彼方

（よし、そこに行こう）

目的地を決めたところで、カバンを持って教室を出た

廊下を歩いていると、屈強そうな男子を2人連れた、これまた屈強なリーダーらしき男子が前を歩いてきているのが見えた

その3人の後ろには、『ポチ』と書かれた名札を首にぶら下げている、傷だらけの男子も1人

学年は…… 男子3人は俺と同じ2年、家畜の子は、1年ってとこかな

彼みたいに家畜に成り下がった人はたまに見かけるけど、結構酷い扱いをされてることがほとんど

彼方

（かわいそうに……。）

彼方

（……そう考えたところで、俺にできることは何もないけど）

男子A

おっ、なぁそこのお前、俺とギャンブルしねぇか？

すれ違いざまに、リーダーの男子に声をかけられてしまった

彼方

……別にいいけど

根暗キャラを保ったまま、素っ気なくそう返す

男子A

じゃあせっかくだし、一番デケェ賭場でやろうぜ！

男子A

おいポチ、一番目立つ賭場はどこだ？

ポチ

え、えと、3階の……

男子B

答えんのが遅ぇよ！

怯えて吃る家畜のポチに、理不尽に怒鳴って殴った連れの男子

ポチ

ご、ごめんなさい……！

彼方

3階の第6賭場。そこが一番広い

ポチ君の代わりに答えて、案内するように歩き出す

男子A

お、そうか。じゃあそこでやろうぜ

初にして、一番人が集まる賭場

中々に良いステージを用意してくれたじゃん

第6賭場まで移動して、色々と準備をする

男子A

ま、無難にポーカーといこうぜ

彼方

分かった

トランプと、レートが1枚1万円のチップをお互い百枚ずつ用意する

つまり、2人合わせて200万円

どちらかのチップが無くなった時点で、ゲームは終了

……何だか、周りがざわつき始めたな

女子A

おっ、またあいつやってんの？

男子C

弱い者いじめも大概にしろよ〜

こいつ、しょっちゅうここでギャンブルをしてるらしいな

しかも弱そうなやつを相手に選んで、わざわざ人が多いこの賭場で、自分が勝って家畜に突き落とす

彼方

（汚いやり方だな……）

多分、あのポチ君も同じやり方で落とされたんだろう

……まぁせっかくの機会だし、存分に利用させてもらおう

男子C

あれ、相手側ってうちのクラスのやつじゃね？

女子A

え、マジ？

男子C

名前は知らねぇけど、ギャンブル嫌いで有名だぜ、あいつ

女子B

へ〜、根暗君……っと、未来のポチ君、かわいそー

くだらないことで有名になっても、俺にとって面白くない

男子A

ギャンブルしたことないらしいけど、流石にポーカーぐらい分かるよな？

明らかに、俺のことを見下した笑い方だ

そうしていられるのも今のうちだけどな

彼方

分かるよ

また素っ気なく返してから…… 徐に、この伊達メガネを外す

彼方

──じゃ、始めるか

そう言ってから、ニッと笑った

ここから、俺の学園生活が始まる