첫눈

한국 ┈ 서울 ( 韓国 ソウル )

吐く息が白く濁る 韓国の冬は噂通り冷え込みがきつい 俺はマフラーをきつく巻き直した

任務はとっくに終わって あとはホテルに戻って温かい風呂にでも入るだけ… …

太宰が立ち止まった それはホテルの灯りが遠くに見え始めた頃だった

ふわりと視界の端に白いものが落ちる 気のせいかと思った瞬間. もう一粒 そして. 降りしきる

初雪特有の軽い舞い方で 空からふわりと落ちてきやがる 街灯に照らされれば光るほど透けて まるでどっかの絵画の一部みてぇだ

太宰がクスリと笑った この男は. こういう時だけやけに素直に笑う 普段は皮肉と死にたい話ばかりなのに

太宰の視線は上 口にした「綺麗だ」という言葉の先は 俺のほうに向いていた ┈┈┈┈どういう意味だ. 太宰

問いただすのは簡単 けれど. その答えを聞くのは、きっともっと難しい だから俺は知らないふりをして歩き出した.

気づけば. 太宰が俺の手を取っていた しかもよりによって恋人繋ぎだ 手首から肘までびりつくような感覚が走る

そのまま俺の手を引っ張って. 自分のコートのポケットへ押し込んだ太宰は. 少しだけ笑った

その声音は. 何でもないようでいて わずかに探るような言い方だった 俺は思わず横目で太宰を見た 奴も. こっちを見た

気づいちまった 気づいたが ┈┈┈ 言えねぇ

なんで雪じゃなくて俺を見ながら 『綺麗だ』なんて言ったのか┈┈┈┈

言ったら何かが終わっちまう気がする いや. 変わっちまうのが怖い そんな情けねぇ理由なのかもしれない

"それ" を遠回しに伝えるコイツもヘタレだ

平然を装って返す 手は … … 繋いだままでいい ほどこうと思えばほどけるのに 俺自身が動かさなかった

ああもう … … その一言で心臓を掴まれたみたいに跳ねる 一線を越える前のこの曖昧さが心地よくて きっと太宰は気づいてる いや. 気づいてなかったらこんな顔して歩かねぇか

俺なんて┈┈┈ 身体だけ 都合よく呼ばれて 都合よく抱かれて そして太宰は平気な顔で女に声をかける 俺はそれを知ってて それでもこいつを拒めねぇ

馬鹿だって分かってる 弄ばれてるだけかも分からねぇ こいつが本当に欲しいのは別の美女で 俺なんかその隙間を埋めるだけの代用品かもしれねぇ それでも それでも. 太宰が振り向くたびに期待してしまう俺がいる. 馬鹿みてぇだ ほんとに.

知らねぇふりして聞くんじゃねぇよ 手を繋いでるくせに. 俺はゆっくりと息を吸った 雪の匂いがする

太宰は「そっか」と笑った その笑みが初雪より淡くて. 心臓に悪い 俺はそっと. 気づかれないように歩幅を太宰に合わせる 繋いでる手の力をほんの少しだけ強くした 気づかれたらきっと笑われるから でも. 離されるのはもっと嫌だった

俺はその横顔に向かって 誰にも聞こえねぇほどの小ささで呟く

太宰の手の温度を確かめるようにそっと指を絡ませたまま 俺たちはホテルへ向かった 初雪が. 静かに降り続ける まるでこの気づいてしまった恋を隠すみてぇに