あれは暗い 重い 夜のこと
満月が光り
私は
夜限定の恋をした
Midnight Love
絶望していた
周りの人の馬鹿さ加減に
猫をかぶる反逆者に
表では綺麗な心をしていても
少なくとも私を叩いた顔は汚かった
なにもかも
嫌になってしまった
だから気晴らしに外へ出た
暗闇の空を仰ぐように
全て忘れてしまうように
そんな時だった
毛に包まれた君を見たのは
鋭い牙が生えていた
目付きだけで殺されそうだった
……でも、それだけ綺麗だったんだ
…こんな時間に人間がどうしたんだよ
低く、轟くような声
赤い瞳を私に向けて言った
疲れただけ
……そうか
それだけ答えて、君は木の実を取り出した
食えば?
言葉通りに受け取って食べてみる
少しすっぱくて、苦かった
でも、その中には確かな甘さがあって
自然と、涙がこぼれてしまった
その想いと共に
あの子のように汚く泣いても
君は、話を聞いてくれた
鋭い、あの瞳には
優しさが、眠っていた
思い思いに話していると
急な眠気に襲われて
呆気なく、その場で眠ってしまった
夜明けが来た
傍に、君はいなかった
代わりに、花束が1つ
白く揺れる
胡蝶蘭
私が来た道には
細く、赤い血が着いていた
急に胸が苦しくなる
悪い予感が頭をすぎる
だって
そこに 毛が撒き散らされていたから
胡蝶蘭
こんなに綺麗な花ということは
店で貰ったものだろう
涙が溢れて
顔を汚くしても
そばに寄り添ってくれた君
締め付けられたように
苦しいんだ
全部
全部
見ると、花束のそばに紙切れがひとつ
そこには、たどたどしい字で
がんばって わらえるひはいつかくるよ じぶんをしんじて
そう書いてあった
疑惑は確信へと変わった
そう
私は 一晩だけ 恋をしたのだと
こんなに胸が苦しいのも
涙が溢れるのも
……全部、愛があるからなんだね…
教えてくれて
『ありがと……ッ』
胡蝶蘭の花束を握りしめて
私は、変わるために
1歩ずつ、進み出した
コメント
6件
その獣(狼かな?)さんは何者かに殺 さ れ てしまったのかな……💦 獣さんのおかげで新たな一歩を進み出すことが出来たんだろうね✨ え、胡蝶蘭って高いの……!?
初コメ失礼します。 雰囲気がとても好きです。 恋愛ものは大好きなので楽しく読ませていただきました!
胡蝶蘭 買うと高いらしいですよ