千明
とある春の桜が咲く頃、 私は1人の女の子に告白された。
愛
千明
愛
この子の口は可愛くなかった。
千明
愛
ガシッ(千明が愛の両腕を掴む)
愛
私は彼女に追い詰められ、 思わず固まってしまった。 彼女の丸い目とほんのり赤く染まった頬にドキッと胸が高鳴る。
そして、その高鳴りに 初めて女の子から告白された 興奮も相待って、
私は反射的に首をこくんと 縦に振った。
千明
愛
千明
千明
愛
付き合うことが決まった その日の帰り道。
千明はニヤリと笑いながら 意図の読み取れない質問をしてきた。
愛
千明
愛
千明
愛
そう言って拳をつくると、 千明がやだこわ〜い!と うるさく騒いで逃げた。
そして、私はそんな彼女を 追いかけようとすると前は走る。
すると。
愛
お気に入りのスニーカーの靴紐が 切れた。それも両方。
愛
愛
千明
愛
千明
愛
千明
千明
愛
千明が指さす方向を見ると、そこにはメルヘンチックな馬車があった。
千明
愛
愛
千明
愛
千明
愛
千明
とにかく千明が「乗って」を連呼するので私は仕方なく馬車に乗り込んだ。
中には宝石の飾りがたくさんついていて、乗った瞬間、御伽の国のお姫様になった気分になる。
キラキラとした馬車の内部に 私は自然と口を開けて 綺麗だなー。
これめっちゃ お金かかってるんだろうなー。と 馬車の飾りに見惚れていた。
すると、突然隣のドアが閉まり 馬車が驚くほどの速さで進み出した。
愛
愛
席が二つあったことから、 私はてっきり千明も馬車に 乗るものだと思っていた。
愛
私は慌てて外にいるであろう 彼女を見た。
するとそこでも 不思議なことが起きた。
なんと千秋がいなかったのだ。
それどころか、外はただ真っ暗な 闇ばかりが広がり何も見えなかった。
愛
私は急に怖くなり馬車を降りようと試みた。しかし、どれだけ強く引っ張っても扉はびくともしない。
愛
そう内心で呟くいた時、 千明の言葉を思い出した。
「私の存在が夢だったらどうする?」
愛
彼女の言葉を思い出したその数秒後、私は病院のベッドで目を覚ました。
看護師
状況を理解できない私の元に1人の看護師がやってきた。
看護師
看護師
愛
愛
愛
その瞬間、私は全てを理解した。
私、大野愛は有名な富豪の跡取り息子と結婚することが決まっていた。
それも、恋愛結婚ではない 家族が決めた勝手な方法で。
実際、婚約者と私の関係は最悪だった。なのに、不仲な私達を見て双方の両親はニコニコとしてばかり。 それが見ていて反吐が出るくらい 気持ち悪かった。
婚約を破棄することができず、 精神的に病み、これからの人生に不安になったある時、私は自殺を図った。
しかし、運悪く死に切れず、 私は入院してしまったのだ。
そして、そこで出会った看護師の 【蝶野千明】という女性に 私は恋をした。
しかし、
そのことがすぐに義両親バレてしまった。そして、彼らが千明さんに何かを言ったのだろう。 千明さんは看護師を辞めてしまった。
「私の存在が夢だったらどうする?」
愛
愛
明るくて、悩みを真摯に聞いてくれて、たまに大げさに騒ぐ声がうるさくて…でも心地よかった。
あの人じゃなく、彼女と結婚できたら どれだけ幸せだろうかと 何度も考えた。
でもその身勝手な夢のせいで 私は彼女を傷つけてしまった。
…実は
千明さんは、 私の密かな気持ちに全く 気づいてなかったのだ。
彼女にとって私は“ただの患者”。
彼女が夢を捨てたのは 自分が彼女に夢中になったせい だったのだ。
私の抱いた愚かな夢が、 彼女の夢を壊してしまったのだ。
愛
愛
看護師の女性がゆっくりと 窓のカーテンを開ける。
綺麗な青空が目に入ったその時、
青白い頬が涙で濡れた。
コメント
16件
靴紐が切れる暗示や馬車に(実際に乗ってみたいぐらいに素敵)乗った後のじわじわとした不安感がリアルな夢の中にいるようで素敵でした🤭✨最後の青空を眺めて蝶々結びだった靴紐を思い出す所もどこか静かで心地よく、一瞬になって彼女の気持ちを体験したかのようでした✨✨
執筆お疲れ様です😭😭😭 GLはあまり触れてこなかったのですが、凄く心に刺さりました… 女性ならではの思考回路とか、それ等が儚くも美しくて、思わず前のめりになって読んでいました…