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じゃじゃ馬奥様 只今 気楽に脱走中

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じゃじゃ馬奥様 只今 気楽に脱走中

2 - 壱話目「朝の光景」

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2025年01月09日

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壱話目「朝の光景」

朝日が部屋に差し込む中 襖が開く

女中

おはよう御座います。千暁様

女中

朝餉の御用が済みましたのでお着替えを…

千暁

んー…

少し寝ぼけた様な声がし、それと共に少し布団が動く

女中は少し呆れた様な表情をし、 大きく息を吸う

女中

千暁様!!!!!!!(大声)

千暁

んえぇッ!?

女中の大声にビックリして千暁が飛び起きる

顔を洗う様の水をくんだ桶を千暁の目の前に起き 千暁がそれを使い顔を洗う

千暁

手ぬぐい頂戴

女中

どうぞ

千暁

ありがとう

顔を拭い、少しだけさっぱりした様子になる

女中はすかさず千暁を立たせ、 着替えの手伝いをする

帯を強く締められ、「ぐえっ」と声を出し、 目を擦る

千暁

あー、、まだ眠いぃ…

女中

おや、その様でしたら

女中

目覚ましの為にも本日は正妻教育の時間を早めましょうか

千暁

クッ…

千暁

ものすっごくいい目覚め〜…

女中

左様でございますか

女中

千暁様、本日は洋食の作法のお勉強をしましょうか

千暁

はーい

千暁

(朝餉と同時に済ませるのか…)

千暁

(ま、なんとかなるでしょ!)

そんな脳天気な考えを持ちながら 女中の話を右から左へ受け流す

女中

千暁、其方を持つ際は…

千暁

はーい

女中

千暁様、音を立てないように

女中

千暁様、順番を頭に入れるよう…

女中

千暁様、其方は…

女中

千暁様…

女中

千暁様

女中

千暁様!!!

千暁

うぅぅぅぅ……

ナイフとフォークを覚束無い持ち方で使い、 その様子をまた女中に叱られるの繰り返しで

少ししょんぼりとした表情になる

因みにこれは自分の容姿を活かした千暁の戦術で 実際は「早く終われ〜」としか思っていない

しかし女中は無慈悲に作法の教えを続ける

千暁

お、終わったぁ…

千暁

ご飯の味あんま感じられなかった…

千暁

…(脱走するか)

そう決めたのなら実行は早いもので

先程女中が着付けた いかいも高級そうな着物を雑に脱ぎ捨て

箪笥の奥底にしまっていた箱から 特別甘美でもないシンプルな着物を取り出し 慣れた手つきで着る

全てが終わるとくるりと一周回る

千暁

よし

部屋の窓と屋根を器用に伝い 地面に着地する

少し崩れた髪をかきあげ 一つに結ぶ

予め持っていた下駄を取り出し 足袋と一緒に履く

少々砂が付いていたのを叩き 足早に屋敷から出ていく

千暁

ごめんくださ〜い!

暖簾を捲り自慢の笑顔を輝かせ入店する

すると一人の店員が振り返る

???

いらっしゃいませ、て…

???

千暁さん!

千暁

梢さ〜ん!食べに来ました〜!

この店員は千暁のよく来る飯屋の店員の篠原梢

女性にしては高い背丈がよく目立つ 冷静な性格だが負けず嫌いという特徴がある

その性格のせいか、又は千暁が懐いているせいか 千暁の兄達と千暁の夫の華扇にはあまり好かれていない

因みにここらの近所の娘の多くは彼女にどうもお熱らしい

また抜け出したんですか?

千暁

うん!だって酷いんだよ!?

千暁

朝餉をゆっくり食べられないだなんて…拷問だよぉ……

それは大変でしたね

千暁

そう!てことで定食お願いします

はい、かしこまりました

お好きな席にどうぞ

そう言い軽く一礼して梢は厨房の方に歩いていく

ぼけーっと千暁が席に座ったまま 食事が来るのを待っていると 一人の男がやって来た

???

こんにちは…千暁さん

千暁

千暁

あぁ!秋一くん!

秋一

お久しぶりです…

少し微笑むこの少年の名前は七原秋一

千暁より一つ歳が下の齢十六で本屋を営んでおり 千暁とは良き友人

極度の人見知りで無口に見えるものの根は優しい少年 ちなみに怖い物は鯉の絵で何故か鯉本体は平気だ

千暁

あ、座る場所無いならここ座りな〜

そう言い自分の向かい側の席を指差し 秋一を座らせる

千暁

珍しいね!ここで会うの

千暁

という事は今日は本屋さんおやすみ?

秋一

はい、そのつもりです

秋一

千暁さんはまた…?

千暁

現在脱走中

秋一

ですよね…見つかって連れ戻されてしまっては大変ですよ?

秋一

千暁さん…ただでさえ目立つので…

千暁

え?何が?

秋一

あー……

秋一が少し曇った顔で方向を指差し 千暁がその方向に目を向ける

すると、男女問わすほぼ全ての人が千暁の方を見て まるで見惚れている様な表情をしていたのだ。

千暁

あーね

千暁

まぁ…仕方ない

千暁

私、女神や天女よりも可愛くて美しいからね

千暁

見惚れちゃっても仕方ないよね

そう自慢げに秋一に言い、 客の方に笑顔を向ける

すると、数名の顔が林檎の様に赤く染まり そのまた何人かが黄色い悲鳴をあげる

秋一

あぁぁ…反応が凄い

千暁

だね〜、はぁ…私が可愛いばっかりに…

絶対反省してませんよね?

千暁

梢さーん

千暁

お客さんが増えるなら良いじゃないですか!

ま、そうですけどね…

千暁さん、秋一さん、どうぞ御注文のお品です

秋一

ぁ、ありがとうございます…

では私はこれで…

と、その前に…

梢が客の方をくるりと向く

……おい
…千暁さんに…手ぇ出すんじゃないよ?

そう言っていると誤認する程の 強い殺気を男に向ける

千暁

えぇ!?梢さんどうしたんですか?

あぁ…あそこの人…あまり良い噂聞かないので

少々威圧をと

千暁

ほへぇ

秋一

成程……千暁さん、気を付けて下さいね

秋一

ただでさえ名家の跡継ぎの妻と言うだけでも危険なのに…

千暁

天下一の絶世の美女となれば尚更…

秋一

まぁ、そうですね

千暁

ごめんくださーい

???

やっほ、千暁

千暁

廉音、私今日はお客さんとして来たんだけど?

廉音

お、そうか。なら

廉音

いらっしゃいませ

この男は洋裁を生業としている仕立て屋 の廉音という者で

少々口が悪いが、腕は確かなものであり

度々こうやって千暁が買い物に来るお店の店主だ

廉音

今日は何がお求めで?

千暁

んとねー

千暁

良い感じに地味で安っぽいの!

廉音

なんでだよ

そう華麗なツッコミをを入れる

すると真剣そうな表情で千暁が口を開く

千暁

ねぇ…廉音

廉音

な、なんだ?

千暁

…私の夫ね

廉音

…おう、

千暁

……私に

廉音

私に……?

千暁

めちゃめちゃ甘いの

廉音

いや知ってる、軽く引いた

千暁

だから高級品しか買わないからこうやって街に来る時に着るものがないの!!!

千暁

これだって見た目は大丈夫だけど生地とか知ってる人が見れば高級品だし!

廉音

何だよ庶民へのあてつけか?

千暁

そんなの言ったら買わないよ!?

廉音

はいはい

廉音

良い感じのやつ探してきてやるからちったぁ待ってろ

そう言い廉音は店の奥の方に引っ込んで行った

その隙に千暁はひょいと隣りの店の方に行く

千暁

ししょー!刀の作り方教えて〜!!!

???

ん、その声は千暁かいな!

千暁が「師匠」と呼ぶ男は神楽和羽という凄腕の鍛冶屋

剣術の腕、鍛冶屋としての能力の両方が一流 オマケに気さくな美男子となれば女子は黙っていない

和羽

まーた抜け出して来たんかいな?

千暁

そう!廉音のお店で着物買うから待ってる間の暇つぶしに来たの!

和羽

師匠の店を暇つぶしの場所にする弟子って…そうおらんわ

和羽

お茶でも飲んでき、持ってくるわ

千暁

ありがとございまーす!

そう言って千暁は畳の上に寝転がる

天井のシミを数えて暇つぶしをしようかと思っているのだろうか

???

あの

???

そんな所に居たら踏まれるよ?

千暁

んぇ?

千暁

あ、やっほ〜黎

「やっほ〜」じゃ無くて…

千暁にそう言うのはこの時代には珍しく六尺一寸もある男

商人の睦月黎、千暁の兄関連での友人で稀に こうやって会った時に雑談を交わす仲だ

千暁

ししょーなら今お茶とお茶菓子持ってきてくれてるけど

わがまま娘だねぇ…

千暁

そーお?

軽い雑談をしている中 お茶を持ってきた和羽がやってくる

和羽

持ってきたでー、て

和羽

黎はんやありまへんか!御注文の品は出来てまっせ

和羽

ちぃと待っといてください!

ありがとうございます

千暁

お店の商品?

そう

「へー」と興味があるかないかよく分からない口調で千暁は言う

お茶を啜りまた暫く暇を持て余す

廉音

千暁〜?どこ行った〜?

千暁

あ、廉音〜!ここ〜!!!

着物を何着か持って来た廉音が呆れた表情で言う

廉音

なぁーんで隣の店に行ってんだよ

千暁

暇でね

廉音

暇って…幾つか見繕って来たからどーぞ

千暁

はぁーい

千暁

お、良いじゃん

着物を手に取ってまじまじと見ながらそう言って笑う

すると和羽がひょこりとやって来る

和羽

あ、あのー…千暁

千暁

?なに?

千暁

……あ

女中

千暁様

静かな怒りを感じさせる声で女中が千暁の名前を呼ぶ

先程まで呑気な様子だった千暁が冷や汗を垂らし焦っている

千暁

あ、あーーー…

和羽

廉音

千暁は三人に目配せしたものの 全員目を逸らし 「頑張れ」 と心の中で言うばかり

女中

また、脱走されたのですね

千暁

…はい

女中

……

千暁

女中

帰ったらみっっっっちりお勉強ですよ

廉音

ありゃぁ…

和羽

可哀想に…

くわばらくわばら…

千暁

や、やだぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!

そんな千暁の悲痛な叫びは すぐに女中によって止められるのであった

これで一体何回目なのかは 女中もとうに数えるのを諦めている

次回 弐話目「妻としての」 投稿日…未定

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