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夜の湿った夜風が街路樹を揺らし、レジ袋を片手に帰り道を歩く
それはごく普通の見慣れた日常で、もはや前を見なくとも感覚で歩けば家についてしまうという始末
スマホ片手に暗闇の中を進み続け、薄暗い路地の横を通り過ぎた時、ある声が聞こえた
『みゃぁ…』
シヴァ
足を止め、耳を済ませてみる
後ろの路地の奥から微かに聞こえた。それは声というよりか、鳴き声に近い
『みゃぁあ…』 『にゃっ…』 『みゃーぁ、』
シヴァ
しかも、一匹や二匹の声じゃない
何なんだ、猫達で合唱団でもやってんのか…?
不審に思いながらも、好奇心と可愛いもの見たさに勝手に体が動いてしまう
シヴァ
…俺は、大の動物好きだった
路地の奥にあったのは、ガムテープで半端に閉じられた大きな段ボール
恐る恐る、俺は半開きの段ボールを開こうと手を掛けてみた
シヴァ
中には黒や白、茶色のうごめく影
柔らかそうな毛並みをしたそれらは、無常にも弱々しい鳴き声を漏らしてこちらを見ていた
シヴァ
腕の中に簡単に収まるような小さな子猫が、段ボールの中にぎゅうぎゅうに詰め込まれている
黒猫、白猫、トラ、ミケ、どれも未熟で小さくて、頼りなげな体を震わせ鳴き喚いていた
シヴァ
シヴァ
正直、これは心臓が締め付けられるくらい胸が痛くなる光景だ
俺はその場にしゃがみこみ、段ボールの縁を握る
シヴァ
ふと、頭の何処かで見知らぬ声が響く
『11匹は無理だろ』
『どうせ家の中が荒れるだけだ』
『動物病院に連れて行ったほうがいいんじゃ…』
不快にも、現実的な言葉ばかりが頭に浮かぶ
『…にゃあ』
しかし、途端に小さな鳴き声が一斉に耳に届いた瞬間、その理屈すべてが吹き飛んだ
シヴァ
深くため息をつき、段ボールを抱え立ち上がる
子猫たちは揺れる段ボール箱の中で、互いを守るかのように小さな体を寄せ合っていた