テラーノベルの小説コンテスト第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで

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LINE１４６９

第1話 - あ

2024年01月08日

#スカッと

タナカトシキ

トシミ

マキト！

トシミ

今度の試合、絶対に勝てよ！

マキト

いつもいつも...言われなくてもやるって

マキト

なんでそんな期待するんだよ

マキト

そんなに期待されても、困るんだよ！

トシミ

なんだよ、その言い方は...

トシミ

期待されることが自信につながることもあるじゃないか

マキト

俺には、プレッシャーしか感じないんだよ

マキト

知ってるだろ？

マキト

俺が本番に弱い、ってこと

トシミ

あぁ、そうだったな

トシミ

お前は肝心な時に、しょうもないミスをするやつだもんな

マキト

しょうもない、って...

トシミ

この前の試合の時だって、

トシミ

お前が最後ボールをキャッチすれば、得点は防げたものの、

トシミ

お前がずっこけたおかげで、最後チームは負けたもんな

マキト

まだそれ言ってんの？

マキト

俺なりに、あの失敗は反省してるし、

マキト

次はしない、って思ってるよ

トシミ

本当か？

トシミ

俺にはな、そんな風には見えないんだよ

マキト

そんな風には見えない、って...

マキト

俺の何を見てる、っていうんだよ？

トシミ

最近、練習してないじゃないか

トシミ

前は庭で素振りの練習してたのに

トシミ

サボってるから、あんなことが起きるんだろ

マキト

近所の公園でやってるよ

マキト

父さんが見てないだけだろ？

トシミ

高校に入るまでは、家でやっていたじゃないか

トシミ

なんでいきなり、場所を変える必要があるんだよ

マキト

だって、父さんがいちいち口出ししてくるのがうざかったんだよ

マキト

姿勢がなってないとか、もっとタイミング見計らえ、とか...

マキト

そんなの、俺だって分かってるよ！

トシミ

頭でわかってても、行動にうつせなきゃ意味がないだろ！

トシミ

もっとしっかりやれ！

マキト

なんで、そんな叱ることしかできないんだよ...

マキト

自分が野球部のエースだったから、って...

マキト

調子にのりすぎなんだよ

トシミ

俺は本当のことを言ってるまでだ

トシミ

だいたいな、選手だったら人からのアドバイスも、

トシミ

素直に聞き入れるもんなんだよ

マキト

父さんの言い方は、命令にしか聞こえないんだよ

マキト

逆にやる気失くす

トシミ

お前、これからずっとそういう理由で野球続けるつもりか？

トシミ

だから高校に入って、周りの生徒に差をつけられるんだろ

マキト

うっせえな

トシミ

本当に、いつからお前はそんな態度悪くなったんだ

マキト

野球は俺のペースで進めていきたいんだ

マキト

口出ししてくるなよ

～3日後～

トシミ

おい！マキト

マキト

なんだよ

トシミ

今日、学校の担任の先生から連絡があった

トシミ

お前、最近テストの成績、良くないらしいじゃないか

トシミ

赤点ばっかりなんだって？

トシミ

どういうことだ！？

マキト

俺だって、俺なりに頑張ってるんだよ

トシミ

文武両道でいれないなんて、だらしなさすぎるぞ

トシミ

野球だけで来ても、良いことなんてないんだ

トシミ

ろくな大学に行けないし、

トシミ

そうなったら就職先だって、良いところ就けないんだぞ！

マキト

分かってるよ、そんなこと

マキト

こっちだって、一生懸命やってこの結果なんだ

マキト

それに、自分だってそこまで良い企業につけれてるわけじゃないだろ

マキト

自分でもできなかったこと、子供の俺に押し付けるなよ！

トシミ

押し付けてるわけじゃないだろ

トシミ

いつまで野球を理由にして、そんなこと言ってるつもりなんだ

トシミ

いい加減にしろ！

マキト

分かったよ

マキト

野球を理由にしなければいいんだろ？

マキト

そんなんだったら、もう野球なんてやめてやるよ

トシミ

何言ってるんだ

トシミ

ちょっと壁にぶち当たったくらいで、そんなこと言ってるのか？

トシミ

情けないにもほどがある！

マキト

母さんがいなくなってから、家庭の権力握れたとでも思ってんの？

マキト

だから、俺のこと厳しく縛り付けるのかよ？

トシミ

そうやって言ってるんじゃない

マキト

もう、俺たち２人、話し合えないんだよ

マキト

どう頑張っても

トシミ

話し合おうとしないのはそっちだろ？

トシミ

父さんは話し合う気はあるぞ

トシミ

とにかく、学校のテストにも気を抜くんじゃない

トシミ

いいな

～４日後～

トシミ

マキト！

トシミ

今日の練習試合、休んだって本当か！？

トシミ

父さんが出張に行ってることを良いことに、

トシミ

サボるなんて勇気がお前にあるんだな

マキト

体調が悪かったんだよ

マキト

だから、休んだだけ

トシミ

体調が悪かった、って...

トシミ

どうせ大したことないんだろ？

トシミ

父さんの時はな、頭痛くらいで休む奴は、

トシミ

根性なし、ってバカにされたんだ

マキト

だから？

マキト

いつの時代だよ

マキト

そんな古い教えに従う必要ないじゃん

マキト

今は令和ですけど

トシミ

お前、調子にのるのもいい加減にしろ

トシミ

試合でもミスしてばっかりだし...

トシミ

この状況が続くようなら、強制的に週末も練習させるぞ

マキト

は！？

マキト

何でそうなんだよ

マキト

だいたい、この前の試合でボール取り逃したのは、

マキト

ボロボロのグローブを使ってたからだよ

マキト

グローブが切れてたせいで、取ろうとしたボールが隙間から抜けてきたんだ

トシミ

だったら、新しいの買ってやったのに

トシミ

なんで言わなかったんだ

マキト

いえるわけないだろ！？

マキト

こんな貧乏な状況なのに

トシミ

貧乏なんてことはない！

マキト

あのさぁ、自分では気づいてないのかもしれないけど、

マキト

今月も金がない、とか...

マキト

そういう金に関する小言、多いんだよ

マキト

無意識で言ってんの？

トシミ

貧乏なんて、そんな言うほどのことじゃない

トシミ

最近、少し厳しいところはあるが...

マキト

なのに、グローブなんて頼めるわけないだろ

マキト

高いので２万くらいするんだよ

マキト

それは、父さんも知ってるだろ

トシミ

あのな、父さんだってグローブ買えるくらいの金はあるんだよ

トシミ

そんな強がることないだろ

マキト

この前、姉ちゃんと水道代が高いから節約しなきゃ、

マキト

とか話してるの聞こえたんだよ

トシミ

そんなことは、まだ子供のお前が気にすることじゃない

トシミ

金のこととか、家のことは父さんと姉ちゃんに任せておけばいい

トシミ

どうせ、子供のお前ができることなんてそんな大したことじゃないんだ

マキト

は？バカにしてんの？

マキト

俺だって、家族の一員だろ！？

トシミ

でも、お前は野球だけしてればいいんだ

トシミ

それしか取り柄はないんだから

マキト

信じらんねぇよ

マキト

もし、俺が野球できなくなったら、

マキト

何にも取り柄はなくなる、って言いたいのか？

トシミ

成績も最近落ちてきているしな

トシミ

そういうことだろ

マキト

文武両道なやつが、そんな偉いのかよ？

マキト

俺は父さんの求める人間になれなかった、ってこと？

トシミ

そこまで言ってないだろ

トシミ

いつまでも、ひねくれてるんじゃない

マキト

ひねくれてるのは、そっちだろ

～１週間後～

カナ

ねえ、マキト

カナ

お父さんと仲直りしたの？

マキト

俺は別に悪いことしてないし

マキト

謝る必要なんてないじゃん

カナ

まだそんなこと言ってんの？

カナ

ほんとに、手のかかる２人だな～

マキト

いちいち、俺の悪いところ見つけては、

マキト

ひたすら、そこを突っつく人なんだよ

マキト

だから、絶対に俺から謝んない

カナ

なんで、私が２人の橋渡ししないといけないのかな...

マキト

え？橋渡しって？

カナ

マキト、今日誕生日でしょ？

マキト

そうだけど、どうせ父さんは覚えてないよ

マキト

姉ちゃんは覚えてくれてたから、

マキト

今朝俺に、誕プレのグローブ渡してくれたんだと思うけど

マキト

父さんは勉強も野球も、劣ってる俺には興味ないんだから

カナ

お父さんがマキトのことどう思っているかは、帰ってきたら分かるんじゃない？

マキト

え？

マキト

どういうこと？

カナ

お父さん、今朝は仕事で早く出て行っちゃったけど、

カナ

今日の仕事、早く終わらせるためだったんだって

カナ

マキトの誕生日お祝いの準備するために

マキト

父さんが？

カナ

そうだよ

カナ

料理も、久々に俺がやる！って言い出して、

カナ

私に、今日は何があっても台所には立たなくていい！

カナ

って言うんだから

マキト

父さんから言ったの？

カナ

そうだよ

カナ

お父さん、料理はあんまり得意じゃないんだけど...

カナ

マキトに嫌なことを押し付けた自分が、嫌いなことから逃げていられない、って...

カナ

意地張っててさ

マキト

そんなのも、どうせ俺に対する当てつけだよ

マキト

俺はしっかり父さんやってるんだから、お前も野球に専念しろ、って...

マキト

特別な日だけに頑張って、自分の主張を押し通したいだけだって

カナ

そんなこと、ないと思うけどな

カナ

だって、これからもお父さんが家事はもっと手伝えるようにする、

カナ

って約束してくれたもん

マキト

そうなの？

カナ

そうだよ

カナ

私も、聞いた時意外だったよ

カナ

でも、マキトとしっかり向き合うためには、

カナ

自分から変わることも必要なんだ、って思ったんだって

カナ

お父さんも、本気なんだよ

マキト

家事を手伝う、って言ったって、

マキト

どうせ、そんなの数日しか続かないに決まってる

カナ

もう～じれったいんだから！

カナ

お父さんからは言わないで、って言われてたけど...

カナ

もう言うことにした

カナ

今朝、私があげたグローブだけど、

カナ

それ私が買ったものじゃないんだよ

マキト

え？じゃあ...

カナ

お父さんがお金出して、買ってくれたの

カナ

しかも、全額ね

マキト

え...

マキト

まじで？

カナ

本当だよ

カナ

最初はね、お父さんがグローブ買える余裕はないこと、

カナ

知ってたから、私もお金出すよ、って言ったの

カナ

そしたら、俺が全額出すんだから、

カナ

気にしなくていい！って、聞かなくてさ

マキト

そう、なんだ...

カナ

お父さんね、マキトが野球頑張ってたこと、知ってたよ

カナ

でも、期待しすぎると、ちょっと過剰になり過ぎちゃうだけだと思うんだ

カナ

だから、ちょっと許容してあげて

マキト

ありがとう、教えてくれて

カナ

ううん、全然いいよ

カナ

あとは、お父さんと仲直り、ちゃんとしてよ

~10分後～

マキト

父さん

マキト

俺さ、あと10分ぐらいで家着くよ

トシミ

そうか

トシミ

気を付けて帰って来いよ

マキト

あとさ、グローブ買ってくれてありがとう

マキト

俺、てっきり姉ちゃんからだと思ってた

トシミ

あんなの、どうってことないんだ

マキト

値段見たけど、結構したじゃん

トシミ

お前が気にすることじゃない

トシミ

分割払いにしてもらったんだから、存分に使え

マキト

俺、父さんはずっと俺に興味ないんだと思ってた

マキト

でも、違ったんだよね

マキト

俺が、父さんと向き合おうとしてなかっただけだ

マキト

ごめん

トシミ

父さんこそ、マキトに期待しすぎてたんだ

トシミ

もっと、お前ならやってくれる、って...

トシミ

でも、道具のことなんて親のくせに、気づけてやれなかった

マキト

そのこと何だけど、俺費用がこんなにかかるんだったら、

マキト

もう、やめようと思う

マキト

もう、受験も近いし、ちょうどいい時期になるかな、って

トシミ

もし、費用のことで心配しているんだったら、

トシミ

そんな必要はないよ

トシミ

だって、父さんもっと給料が良い会社に転職したんだ

マキト

え？そうなの？

トシミ

マキトだけに何か押し付けるのは、大人げないだろ？

トシミ

だから、転職活動始めながら、

トシミ

今の仕事もしてた

トシミ

休みが取れなくて、イライラして姉ちゃんや、

トシミ

マキトに当たることもあった

トシミ

本当に、申し訳ない

マキト

やっぱり、父さんはやる、って決めたら最後までやり切るよね

マキト

そういうところ、尊敬してるよ

トシミ

お前の父さんだからな

トシミ

まっ！とにかく...料理の準備して待ってるから、早く帰ってこい

～後日談～

マキト

その後、俺は父さんと仲直りをし、誕生日をお祝いしてもらいました

マキト

俺は結局、野球部を2年生の引退まで続け、大学でも野球部に入ろうと考えています

マキト

父さんと喧嘩したことが原因で、今まで以上に絆が強まったと感じでいます

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タナカトシキ

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