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臆病な君に、恋のエールを

第23話 - Episode 22 -ゆあんくん過去編③-

301

2023年09月12日

#krpt

#ゆあえと

いしろ

ー放課後ー

ゆあん(中学生)

…………

ゆあん(中学生)

…うーん…

ゆあん(中学生)

……あ、解けた！

ゆあん(中学生)

これで今日の分の自習も終わり…！

ゆあん(中学生)

んん〜…っ、疲れたぁ

ゆあん(中学生)

(………)

ゆあん(中学生)

(そろそろ部活も終わる頃だよな…)

ゆあん(中学生)

(志乃のとこ行って、声かけてみるか)

ゆっくり立ち上がって、あくびをひとつ。

オレンジ色の柔らかい光は、どうも眠気を誘って来て困る。

ゆあん(中学生)

…もう、夕暮れか

ゆあん(中学生)

この時期は、まだ夜の方が長いんだよね

ゆあん(中学生)

早く夏になんないかな〜…

ゆあん(中学生)

(えとさん達に…会いたい)

ゆあん(中学生)

(みんな…今頃、何してんだろう)

なんだか無駄にノスタルジックな気分のまま、

荷物をまとめて教室を後にした。

ゆあん(中学生)

(…えーっと)

ゆあん(中学生)

(吹奏楽部の教室って、確かここら辺に…)

曖昧な記憶を辿りながら、長い廊下を歩く。

ふと覗き込んだ教室の端に見慣れた後ろ姿を見つけ、暫し足を止めた。

ゆあん(中学生)

…お。みーっけ

ゆあん(中学生)

………

ゆあん(中学生)

(…あー、でも…なんか、)

…………

志乃

ーーーー…

ーーーー！ーー？

志乃

ーーーw！！

ーー…www

…………

ゆあん(中学生)

(友達と話してるっぽいな…)

ゆあん(中学生)

(邪魔したら悪いし…)

ゆあん(中学生)

(…まぁいいや、今日は一人で帰るか！)

常に一緒に居たいとか、まさかそんな事考えてるわけでもあるまいし、

友達が多いあいつの人間関係に、わざわざ俺が割って入る必要は無いだろう。

そう思って、踵を返そうとした…

…したの、だけど。

…あ、そういえばさ

お前、「ゆあん」って奴の嫌がらせがどうこう〜…って言ってたじゃん

結局どうなったの、あれ

ゆあん(中学生)

…………

ゆあん(中学生)

……えっ

ゆあん(中学生)

(俺の話…？)

にわかに耳を疑った。

ともすれば、自然と身体の方も止まってしまうわけで。

志乃と、その友達らしき人の会話が、次々と耳に飛び込んで来る。

志乃

どうなったって…まあ、

志乃

今のところは上手く行ってるよ

志乃

気付かれた素ぶりも無いし、

志乃

ゆあんくん本人だって、全然俺とは違う…別の人がやったって思い込んでるみたい

ふーん、？

でも、実際に嫌がらせしてんのはお前なんだろ？

志乃

うん。そだよ

志乃

俺、あいつのこと嫌いだし

……なんかw

完全にいじめっ子の台詞でウケるな

志乃

…あはは、

志乃

そう…かもね

ちなみに、純粋に気になるんだけどさ

なんで嫌いなん？

俺一回見かけた事あるけど、普通にいい人そうだったよ？

志乃

んー…まぁ、そこは俺も認めてる

志乃

優しくて良いやつなんだろうな…ってのは、一緒に居れば嫌ほど分かるし

志乃

…でも、

志乃

あいつの、たまに出る…なんだろ、

帰国子女アピール？

志乃

…が、すげぇ嫌だったんだよね、俺

志乃

「こないだまで海外だったから、その間の流行り追えてないんだ」とか

志乃

「みんな凄い凄い言うけど、やっぱりこっちの方が俺の性に合ってる気がする」とか

志乃

本当に…俺にとっては、

志乃

自慢以外の何でも無かったから

……そうか

まあ、しゃーないよな…

…………

ゆあん(中学生)

…………

ゆあん(中学生)

(…ぁ、はは…っ)

ゆあん(中学生)

(まじかぁ…)

ゆあん(中学生)

(そんな風に、思ってたんだ…)

ぱき、ぱき。

薄いガラス板が割れるような音が、繰り返し脳内にこだまする。

ゆあん(中学生)

………っ

ゆあん(中学生)

(…酷い、話だよ…志乃)

ゆあん(中学生)

(嫌いだと思ってたんでしょ…？)

ゆあん(中学生)

(…なら、どうして)

ゆあん(中学生)

(あんな態度なんか、取らなければ…っ！)

爪が食い込むくらいにかたく、拳を握る。

そうでもしないと、心の中で張り詰めていた糸が、真っ二つに千切れてしまいそうだった。

ゆあん(中学生)

…あーあ

ゆあん(中学生)

…折角…見ないようにして「あげてた」のに

ゆあん(中学生)

あと少し…何もなければ、平和に済んだはずだったのにな……

ゆあん(中学生)

…………

ゆあん(中学生)

…帰ろ、

心の中に岩が乗っかったような、重たい気持ち悪さを感じながら、

俺は今度こそ、くるりと教室に背を向けて、

帰路を辿ろうと歩き出した。

＊＊＊

その日は、家に帰ってすぐさまベッドに倒れ込み、眠りについた。

朝まで眠れば、この気持ちもリセットされるだろうと思った。

…でも、違ったんだ

次の日の朝から、俺は2度とその学校に足を踏み入れることは無かった。

＊＊＊

えと

……そっか

えと

そんなことが…あったんだ

えと

(……あれ？じゃあ、)

えと

こないだまで海外だった、っていうのは…

ゆあん

あぁ、そうそう

ゆあん

嘘ついてたっていうのは、それね

えと

……えーっと…つまり…？

ゆあん

…ふふ、

ゆあん

本当は、海外に居たのは中3の半ば頃まで

ゆあん

それからず〜っと、不登校状態なんだっ

笑いながらおどけたように言うので、一瞬先程の話は作り話だったのではと疑いたくなるくらいだった。

えと

…ちなみにさ

えと

こんな質問をするのは…本当は、野暮なんだろうけど

えと

ゆあんくんは今、大丈夫なの？

ゆあん

え？

ゆあん

大丈夫って、何が？

えと

いや、その…

えと

辛い目にあったんだよね…？仲良いと思ってた人に、裏切られて

えと

そのことを今も思い出して、負のループに陥っちゃうとかは、もう無いんだ？

ゆあん

あ〜…そういうこと

ゆあん

…うん、今はほとんど無いかな

ゆあん

結構時間も経ったし…自分の中では、もう割り切ってるつもりw

えと

…そう、なんだね

えと

良かった…

えと

……でも、凄いなぁ…ゆあんくんは

えと

(私だったら、絶対引き摺っちゃうもんな…)

ゆあん

………

ゆあん

…流石に、最初は落ち込んでたけどね

ゆあん

落ち込むというか…怒ってたかも

えと

…怒ってた？

えと

へぇ〜…あんまり想像できないけど、

ゆあん

俺だってたまには怒るんです〜

ゆあん

……その時は、『なんであんなことしたんだろう』とか

ゆあん

『ただの言いがかりじゃないか』とか考えてたな

ゆあん

なのに、なんか…段々落ち着いてくるにつれて、

ゆあん

あいつのこと、やっぱり完全には憎めないなって思い始めて…

えと

……？

えと

なんで…？

ゆあん

…確かに志乃は、倫理から外れた行動をしてたよ

ゆあん

一般的に見たら非難されるようなことを、平気でやってた

ゆあん

でも、その中にほんの少しでも正当性があったから…

ゆあん

…それが真っ当な行いに、見えちゃったんだ

えと

…正当性……

えと

…私には、分かんないよ…ゆあんくんの考えてることが

えと

話を聞く限り、その志乃っていう人は、

えと

ただ単に、ゆあんくんの言葉に難癖をつけて

えと

一方的に嫌悪を向けているようにしか見えない…

ゆあん

…あはは

ゆあん

はっきり言うな〜…えとさんは

えと

…えぇ…？

ゆあん

…少なくとも、俺の発言があいつにとって

ゆあん

自慢に聞こえた…あいつの言葉を借りるなら、
「帰国子女アピール」してるように見えたっていうのは

ゆあん

しょうがないよ…それは間違いなく俺が悪いし

ゆあん

志乃が俺を嫌ってたのも、まぁ分からなくはないかな…って感じ

えと

…！

えと

それはっ…！

えと

……違う、よ…

ゆあん

…………

咄嗟に飛び出た反論をそっと否定するように、ゆあんくんは黙ったままで私をじっと見つめている。

えと

(…本当に、違うんだよ)

えと

(これは、誰が悪いとか、誰のせいだとかいう問題じゃ…)

えと

…うまく、言えないけど

えと

そんなの、不可能じゃん…！？

ゆあん

ふ、ふかのう…？

急に斜め上から降ってきた単語に、目の前の彼は面食らったような顔をした。

えと

そ、不可能。出来るわけない

えと

私たちは何かを言う度、どこかしらの人に嫌われたり…傷つかれたりしてるんだから

えと

…しょうがなかったんだよ…たまたま、ゆあんくんが嫌われちゃっただけで

ゆあん

……っ

えと

だってそうでしょ、

えと

世の中こんなに人が居るし、その数だけ色んな考え方があるのに

えと

自分が…自分の言動が、全ての人間に好かれるのは、出来ないって

ゆあん

…そう、なのかなぁ

えと

…あくまで私の考え方だけどね…？

えと

まぁでも、運悪く志乃さんがゆあんくんのことを嫌っちゃったからって、

えと

そこは距離を置けば良い話じゃん…

えと

なのに、わざと友達のふりまでして嫌がらせをしたっていうのは

えと

志乃さんがちょっと、自分勝手すぎたんじゃないかなぁって…

えと

…思い、ます

ゆあん

…………

えと

…………

ゆあん

(………)

ゆあん

(たまたま、か…)

ゆあん

…ねえ、やっぱりさ。凄いのはえとさんの方だって

えと

……ん？

全く因果関係の分からない文を解読するのに手間取っていると、こちらの心を見透かしたかのように、ゆあんくんが言った。

ゆあん

…たった幾つかの言葉で、

ゆあん

俺の価値観を丸ごとひっくり返しちゃうえとさんは凄いなって…言いたかったの

ゆあん

ありがとね…ずっと聞いててくれて

ゆあん

助言までくれてさ…本当に、

俺、えとさんと友達で良かった、って思うよ。

えと

……！

えと

……そんなの、全部こっちの台詞だっての…

えと

4年前のあの2日間だけで、私の人生めちゃくちゃだよ…w？

ゆあん

…え“、そんなに…！？

えと

あったりまえじゃん

えと

あの時のゆあんくんの言葉があったから…私は今、すごく幸せ

えと

…だからね、言うのが遅くなっちゃったけど

えと

あの時、お節介焼いてくれて

えと

声かけてくれたのが、ゆあんくんで良かった

えと

こちらこそ…ありがとう！

心の中に生まれた小さな恥じらいを消し飛ばしたくて、敢えて満面の笑みでそう言ってやった。

そうしたら、ゆあんくんは何故か、ちょっと驚いた顔をしていて。

えと

………

えと

ど、どうした…？

ゆあん

…ぇっ、あ、ごめん…

ゆあん

ちょっとびっくりしちゃった…

えと

(…何にだ？)

顔に何か付いてたのかな。

今更心配になって、頬の辺りを撫でまわす。すると不意を突かれたように、隣から吹き出す声が聞こえた。

えと

ちょ…さっきから何w？

えと

恥ずいんだけどw

ゆあん

wwww

ゆあん

はあ〜…ほんとに、

ゆあん

楽しいなって思って…この何をするでもない、下らないやりとりとかさ

かと思ったら、急にしんみりしたトーンで話すものだから、着いて行けずにどぎまぎしてしまう。

ゆあん

…今日、ほんとはね

ゆあん

俺の昔話聞いてもらうついでに、聞きたいことがあったんだ

ゆあん

でも、やっぱ、良いかな…

えと

え、なんで？

えと

答えれる範囲でだったら答えるよ？

ゆあん

んーん、本当に良いの

ゆあん

だってもう、答え貰っちゃったんだもん…w

えと

…そう？

ゆあん

うん！だから俺、今日はめっちゃ満足！

ゆあん

…結局、えとさんにとってはあんまり来た意味無かったかもねw

えと

それな。それはマジで思った

ゆあん

ねぇ、ごめんって…w

えと

あはは、じょーだんw！

えと

恩返しみたいなもんだし、気にしないでよ

えと

それに……

ゆあん

……？

えと

…いや、何でもない、かな

えと

…………

えと

…帰ろっか。家まで送ってくれん？

ゆあん

……良いけど

ゆあん

普通そっちから言う？その台詞…w

えと

くそ、気付いたか

えと

…思ったんだよね

えと

うちら学校でちょこっと会ってただけで、一緒に帰ったことないなって

えと

だから…送ってよ

えと

途中まで。……だめw？

ゆあん

…………

ゆあん

(…なーに言ってんだか)

ゆあん

(俺が「だめ」って言う選択肢なんか、どこにも無いのに…)

ゆあん

…いいよ、もちろん

ゆあん

じゃ…帰りますか、！

-to be continued-

臆病な君に、恋のエールを

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初コメ失礼します！私はいつも100タップいけばいいかな〜のテンションで書いてるので200タップはもう尊敬ですね！☺長くないですよ‼︎むしろどうやったらそんな神作出せるのか……

今回ちょっと長めになっちゃいました…！えっと…ところで、自分は1話につき200タップを目標にストーリーを書いてるんですけど、ちょっと長すぎますかね…？皆さんの意見とか、もしあれば聞かせてください！！

いしろ

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