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みんな、この世界から 消えるのを怖がっていた。

最初は現実の世界で 辛いことがあって、だから 消えたら戻ってしまうから 辛いのだと思った。

けどちがかった。

単純に この仮想空間での 〝死ぬ〟 の比喩表現である 〝通信切断〟 が怖かっただけみたい

でも私は

ずっとこの仮想空間 にいたい。

Ⅴ 帰りたくない

まふゆ

…よいしょ

私の役職は 皿洗いだった。

慣れていたことでもあり なんの抵抗もなかった

いつも意味のない会議をして

いつも誰かが犠牲になり

いつも誰かが泣く

そしていつも 誰かが怒る。

こんな毎日も 悪くないな、と思った

現実に戻っても 母親の存在を 思い出してしまうから。

苦しいから。

まふゆ

えむ

朝比奈先輩、大丈夫ですか?

まふゆ

え?

えむ

お顔、むーってしてます!

まふゆ

そう、かな…

まふゆ

ごめんね、疲れているのかも

えむ

はやく5日間経ってほしいですね

えむ

そしたら皆に会えるし!

まふゆ

…うん

まふゆ

そうだね

0時に始まる会議が終わると 25時はいつも皆で 集まっていた。

3日目 会議後

まふゆ

瑞希

まふゆ、大丈夫?

絵名

…嫌なこと続きだもんね

絵名

はやく帰りたいよね

まふゆ

ちが…

まふゆ?

まふゆ

…っ

誰にも言えるはずがなかった

帰りたくない

なんて

絵名

…でも

絵名

結局仮想空間での生活の記憶はなくなるんだから

絵名

言ってもいいんじゃない?

うん

瑞希

ゆっくりで大丈夫だよ

まふゆ

…あ

言っていいような 気がした。

えむ

朝比奈先輩どこだろー…

穂波

あそこに宵崎さん達が…

えむ

ん?

…泣いてる?

まふゆ

わたし…

まふゆ

帰りたくない、の…

え?

まふゆ

ずっと思ってた…

まふゆ

この世界でいなくなると現実に戻らないといけない!

まふゆ

…そんなの嫌なの…

あ…

瑞希

絵名

…そうだね

帰りたくない、よね

瑞希

現実にいても辛い事が多いもんね

絵名

…そうね

えむ

朝比奈先輩

まふゆ

えっ…鳳さん?

えむ

はなして、くれませんか?

えむ

わたし、まだ朝比奈先輩の為にまだ何もできていないんです!

まふゆ

…でも

結局忘れてしまうけど

現実に戻った時少しでも朝比奈さんの心が軽くなれるなら

話してほしい、かな

穂波

はい

まふゆ

瑞希

まふゆ

瑞希

ここは大丈夫だよ

瑞希

みんなまふゆを責めたりしない

まふゆ

まふゆ

わた、し…

まふゆ

私…

全部話した。

全部全部全部全部

〝結局忘れるから〟

まふゆ

はぁっ…はぁ

まふゆ

だから、私は…

えむ

朝比奈先輩…

まふゆ

え…

気づいたら 鳳さんや望月さんが 涙を流していた。

まふゆ

ど、ぇ…

まふゆ

ご、ごめんなさ…私…

まふゆ

ごめんなさい…不快な思いにさせちゃったよ、ね

えむ

ちがいますっ!

えむ

わたし、全然知らなくて…

穂波

えむちゃん…

穂波

朝比奈先輩…

まふゆ

望月さんが あたたかく抱きしめてくれた。 背中を優しく撫でてくれた。

鳳さんも抱きついてきて 神代さんは後ろで 温かい眼差しで見てくれた。

えむ

いやだなぁ…

えむ

忘れちゃうのがすっごーく嫌…

えむ

わたし、忘れたくないな…

そうだね…

朝比奈さん、これだけは覚えておいてほしいかな

まふゆ

ひとりじゃないよ

まふゆ

…ぁ

瑞希

まふゆ

瑞希

辛い時は相談していいんだよ

絵名

絵名

味方は私達だけじゃないから

まふゆ

…っ…でも

まふゆ

…でも、わたし…

穂波

そうですよね、帰りたくない気持ち今聞いててわかりました

穂波

ここに人狼がいるのかわかりませんけど

穂波

…最終日までもし生きれたら最後まで朝比奈先輩を支えます

うん

まふゆ

…うぅっ

初めて 奏たち以外の人に伝えた

初めて 奏たち以外の人の前で泣いた

初めて

帰りたくないって言えた。

でも

あたたかい人たちに 恵まれているこの空間

だからこそ

帰りたくない

そして4日目が くるのです。

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