一覧ページ

LINE1287

第1話 - あ

2023年11月04日

#恋愛

結城　真矢

コトリ

ママ、なんか変なの！

コトリ

家に入れないの。

サキ

え、どういうこと？

サキ

鍵は持って行かなかったの？

コトリ

今日はパパがいるから、持って行かなかったの…。

サキ

そうなの。

サキ

じゃあ、パパに空けてもらえるでしょう？

コトリ

それが…パパがいないみたいなのよ。

サキ

え、いないの？

コトリ

うん。塾に行く前はいたんだけど、

コトリ

私、ちょっと気分が悪いから1時間早くかえったの。

サキ

そうだったの。具合が悪いの？

コトリ

うん、家の前にはなんとか着いたんだけどね

コトリ

中に入ろうとしたら、誰もいないみたいで

コトリ

ピンポン押してもパパが出てきてくれないの…。

サキ

あらら、パパ出かけちゃったかな。

サキ

まだコトリが帰ってこないと思ってたのかもね。

コトリ

でも、車はあるよ。

サキ

え、そうなの。

サキ

歩いてどこかに行ったのかな。コンビニとか。

コトリ

どうしよう、ママ。

コトリ

なんか頭が痛いよ…。

サキ

ああ、大変だわ。

サキ

ちょっと、すぐにパパに連絡とってみるわね。

コトリ

うん。おねがい。

サキ

家の前でずっと立ってるのは嫌でしょう？

コトリ

うん、やだ。

コトリ

さっきから近所の人にジロジロみられるんだもん。

サキ

そうよね。

サキ

庭のウッドデッキの椅子に座って、ちょっと休んでて。

サキ

ママも仕事を早めに切り上げて、すぐ帰るから。

コトリ

わかった。

コトリ

ママ、早く帰って来て。

サキ

分かったわ。すぐ帰るからね。

～5分後～

サキ

（不在着信）

サキ

あなた、電話に出て！

サキ

コトリがさっき帰ったんだけど、

サキ

家に入れなくて困ってるのよ。

サキ

あなた、今日はお休みで家にいるって言ったでしょう？

サキ

だからコトリ、鍵を持たずに塾に行ってたのよ。

ムツオ

え、もう帰って来てたのか！

サキ

そうよ！今どこにいるの。

サキ

コトリからも不在着信があったでしょ？

ムツオ

ごめん、気付かなかった。

ムツオ

まさかこんな早くに帰宅するとは思ってなくてさぁ。

サキ

コトリ、ちょっと具合が悪いみたいなの。

サキ

すぐ帰れる？

ムツオ

い、いやあ…ちょっと無理かな。

ムツオ

今、駅前のジムに来ちゃってるから。

サキ

ジム？なんでそんな所に。

サキ

出かけるなら、ひとことそう言ってほしかったわ。

ムツオ

急に思い立ったんだよ！

ムツオ

せっかくの休みだし、まさか鍵を持たずに家を出たなんて思わなかったから。

サキ

あなたが家にいると思って、安心して出かけたんでしょう。

サキ

すぐ帰れるなら、そうしてよ。

ムツオ

そ、そうするよ…。

ムツオ

サキはどうしてるの？

サキ

庭のウッドデッキで休んでいるわ。

サキ

あそこなら、通りから見えないし、

サキ

家の前だと近所の人の目があるでしょう。

ムツオ

そ、そうか。

ムツオ

じゃあ、なるべく早く帰るよ…。

サキ

私も仕事がもう終わるから、帰るわ。

ムツオ

え、もう帰るの？

サキ

何よ、都合の悪いことでもあるの？

ムツオ

いや別に…。

サキ

とにかく、コトリが心配だから！

サキ

多分アナタのほうが先に家に着くはずだから、

サキ

着いたらLINEをちょうだいね！

ムツオ

了解

～30分後～

サキ

あなた、まだ家に帰ってないの？

サキ

私たち、もう家の中に入ったんだけど。

サキ

今度は、コトリの部屋にカギがかかってるわ。

コトリ

パパ、呼んでる？

コトリ

ママのいう通り、私の部屋に中から鍵が掛かってるよ。

ムツオ

え、そうなの？

ムツオ

おかしいな、俺は何も知らないぞ。

コトリ

私も知らないよ！

コトリ

だって、自分が部屋を出る時に鍵なんかかけないもん。

サキ

そりゃ、かけないよね。

サキ

コトリの部屋は、もともと亡くなったお義母さんに使っていただいていた部屋で、

サキ

お義母さんがどうしても鍵を付けてほしいっておっしゃったから

サキ

鍵をつけてたんだもんね。

コトリ

そうそう。おじちゃんが勝手にお金持ってっちゃうから嫌だっていってね。

サキ

おじちゃん手癖が悪かったよね。

サキ

この家から出ていってくれてよかったわ。

コトリ

おかげで鍵は必要なくなったね。

コトリ

私は、ふだんから鍵なんかかけないもん。

コトリ

だから、外から開けようにも、私カギを持ってないし…。

サキ

ムツオ、本当にあなた何も知らないの？

サキ

コトリの部屋の鍵を持っているのはあなただけよ？

ムツオ

し、知らないよ。

ムツオ

俺、今日はずっとリビングにいたんだから。

コトリ

でもパパ、部屋からなんか物音がしたよ。

コトリ

サーってカーテンを引いたような音だった…。

サキ

ちょっと不審者だったら怖いから、警察を呼ぶわよ！

ムツオ

え、警察！？

ムツオ

ちょっと待てすぐ帰るから。

サキ

なによ、警察を呼ばれると都合でも悪いみたいな勢いね…。

サキ

まあいいわ。

サキ

とにかく警察は呼ぶから！

サキ

逆に逃げられたら困るしね。

～直後～

ムツオ

チーちゃん、大変だ！

ムツオ

今、部屋の前に妻と娘がいる！

チー

知ってるよ。家族が帰ってきた声がしたもん。

チー

で、私はどうすればいいの？

チー

娘が帰って来たって言って、

チー

自分だけ慌てて家の裏口から逃げちゃってさ！

ムツオ

ごめんごめん、つい…。

ムツオ

慌ててたから、何も考えられなかったんだ。

チー

ふざけんなよ。

チー

アンタがホテル代をケチって

チー

自宅で致そうとか言い出すから、こんなことになっちまったんじゃないか！

ムツオ

いや悪かったよ。

ムツオ

まさか娘が1時間も早く帰ってくるとは思わなくってさ…。

チー

だから家庭持ちの男は嫌なんだ。

チー

金が足りないとかいって、色々ケチるから。

チー

最初からホテルにしておけば、こんなことにならなかったよ！

ムツオ

そうなんだけど、ちょっと大変なことになりそうなんだ。

ムツオ

家族が、警察を呼ぶって騒いでる！

チー

はあ？

チー

警察ってなんだよ！

チー

私はアンタに呼ばれてこの家に来て、

チー

事後にまったりしてたら急に娘が帰って来て、

チー

肝心のアンタはさっさと逃げ出して、

チー

子供部屋に閉じ込められたんだぞ！

チー

この状況で、私が警察につれてかれるとか？

チー

ぜったいにあり得ないんだけど！

ムツオ

すまん、なんとか部屋から逃げ出して！

チー

なに言ってんだよ、ここ2階だよ！

チー

ベランダから飛び降りろっていうのかよ！

ムツオ

が、頑張ってやってみて

チー

テメー、ぶっ〇ロす！

チー

あとで覚えておけ！

ムツオ

怪我したら、ちゃんと弁償するから。

ムツオ

いまはどうにかして、すぐ逃げてくれ。

ムツオ

家族たちが部屋の前で騒いでいるうちに…！

～10分後～

サキ

ムツオ、まだ家に着かないの？

サキ

駅前のジムからなら、とっくに着いても良いはずなんだけど。

ムツオ

ごめん、もう着く。

コトリ

でもパパ、ちょっと待って。

コトリ

今、庭からヘンな音がした。

ムツオ

え！？

コトリ

ゴッって、なんか…。

コトリ

落下したような音がしたよ？

ムツオ

な、なんだって！

サキ

ちょっと見てくる！

コトリ

ママ、気をつけて！

コトリ

不審者だったら大変だから、

コトリ

コージ（弟）の金属バットを持っていこう！

サキ

ついでに登山用ナイフも！

ムツオ

お、お前たち！

ムツオ

なにする気なんだ。

ムツオ

俺ももうすぐ到着するから、何もするな～！

サキ

そんなの待ってられないわよ。

サキ

不審者だったら、フルボッコにして

コトリ

とっつかまえてやるんだから！

コトリ

私、空手初段だから負けないと思う！

ムツオ

いや待て、危険だろ！

ムツオ

頼むから、何もしないでくれ！

～1分後～

サキ

ちょっと、庭に女の人が落ちてる！

コトリ

気を失ってるよ？

サキ

大変だわ。

サキ

警察じゃなくて、救急車を呼ばないと！

コトリ

ママ、私119コールしてくる！

サキ

お願いね、コトリ。

サキ

ちょっと、あなた。

サキ

この人、不審者じゃないでしょ。

ムツオ

な、なんのことだ。

サキ

だって靴を履いてないし、

サキ

身に着けてるのも、おしゃれなバックとお洋服よ！

サキ

あなたが呼んだんじゃないの？

ムツオ

ち、ちがうよ！

ムツオ

なんのコトかさっぱり…。

サキ

そんなことより！

サキ

このコ、まだ10代じゃないの！？

サキ

気を失って、しかも足首もヘンな風に曲がってる！

ムツオ

へ？

サキ

あなた、このコになにをしたのよ！

ムツオ

何もしてないよ！

ムツオ

ほんとに身に覚えが無いんだ。

サキ

もういいわ！

サキ

ウチの庭で倒れてたわけだから、

サキ

警察と救急車、両方呼ぶからね！

ムツオ

え、え？

サキ

いい？帰ってきたらよく話を聞くからね！

サキ

今から逃げようとか思うんじゃないわよ！！

ムツオ

は、はい！

～15分後～

サキ

警察と救急隊が到着したわ。

サキ

女性の身元も分かったわよ。

サキ

彼女、意識も取り戻したし、

サキ

ここで何があったかも話してくれた。

ムツオ

あ、あのさ…さき。

ムツオ

俺、本当になにもやましいことはしてないよ。

ムツオ

俺の事、信じてくれる？

サキ

ズレたこと言ってんじゃないわよ。

サキ

彼女、マッチングアプリで知り合ったと言ってるわ。

サキ

アナタと会うのは、今日で3回目だって。

サキ

チーさんっていうのね

ムツオ

へ？

ムツオ

俺はそんなコ知らないよ…。

サキ

あら、おかしいわね。

サキ

彼女、あなたに誘われてここに来たと言っているわ。

サキ

どちらがウソをついているのかしら？

ムツオ

俺はウソなんてついてない！

サキ

まあ、あくまでもしらばっくれるのね。

サキ

ところで、アナタはいつ帰ってくるの？

サキ

さっきから、もうすぐ家に帰るとか言いながら

サキ

一向にこちらに到着しないのは、どういうワケ？

ムツオ

いやあ、道路が混んでてバスが動かないんだよ。

サキ

歩けば良いでしょ。

サキ

たった3kmの距離でしょうが。

ムツオ

すまない、もう少しで帰れるから。

サキ

ところで、彼女だけど。

ムツオ

へ、彼女？

サキ

いまさらとぼけないで！

サキ

いい？彼女はさっき救急車で搬送されたわ。

サキ

年齢を聞いたら19歳だというし、

サキ

未成年ではないけど、まだ10代だからね。

ムツオ

ごめん、それは本当に知らなかった！

ムツオ

俺、10代の子と浮気なんてしていないよ…。

サキ

だから、とぼけんなっての！

サキ

あんな若い子と火遊びして、タダで済むと思ってんの？

サキ

どうせ、家で彼女とイチャイチャしていたら、

サキ

コトリが帰って来たから慌てて部屋に閉じ込めたんでしょ！

サキ

寝室はコトリの部屋の隣だからね。

ムツオ

ご、ごめんなさい（汗）

ムツオ

つい出来心で

ムツオ

若い子と遊びたくなっちゃったんだよ…。

サキ

出来心で済む問題じゃないわよ！

サキ

10代の子を家に連れ込んだ挙句、

サキ

2階からその子が飛び降りたなんて、

サキ

どう考えても警察案件でしょ！

サキ

しかも相手は大怪我。

サキ

命があっただけでも良かったと思いなさいよね。

ムツオ

そうだけど。

ムツオ

俺は一体、どうすればいいんだよ。

サキ

アンタはまず警察に行くの！

サキ

逃げたら罪が重くなるわよ。

サキ

だからさっさと帰ってきなさい。

ムツオ

まさか警察も家にいるのか？

サキ

当たり前でしょ。

サキ

とにかく、まずは警察にすべて事情を話す事。

サキ

私たちとの話し合いは、その後よ。

ムツオ

なんとかごまかせない？

サキ

はぁ？無理。

サキ

自分で責任を取りなさいよ。

サキ

コトリも動揺して泣いちゃってるし。

サキ

アンタは父親失格だからね！

ムツオ

反省してます。

ムツオ

ホントゴメン。

ムツオ

どんな罪でもかぶるから、

ムツオ

サキだけは俺を許してくれ…。

～その後～

サキ

2階から転落したチーさんは、足首を骨折してしまい、

サキ

全治1か月と診断されました。

サキ

命に別状がなくて良かったですが…。

サキ

チーさんに、2階から逃げるように言ったウチのクソ旦那は、

サキ

色んな意味で問題、ということで警察のお世話になり、

サキ

執行猶予がついたものの、自営のお仕事が続けられなくなりました。

サキ

ほんとアフォでどうしようもない男です。

サキ

チーさんとはマッチングアプリで出会って、そういう仲になったようですが、

サキ

大怪我をしたことで、ちょっとかわいそうにもなり、

サキ

慰謝料と治療費を相殺という形で、お金のやりとりは無しになりました。

サキ

ま、チーさんも、ムツオが既婚者ということは知っていたわけですからね…。

サキ

あ、離婚しないのかって？

サキ

もちろん離婚しますよ。

サキ

慰謝料もキッチリもらいます。

サキ

浮気相手に大怪我させて、警察沙汰を起こした旦那なんていりませんから。

サキ

娘のコトリは、私がしっかり守ります。

サキ

これからは親子2人で、平穏に暮らしていきたいですね。

サキ

最後まで読んでいただいてありがとうございました！

この作品はいかがでしたか？

0件

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう！

結城　真矢

プロフィール

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい！がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

LINE1287

第1話 - あ

作者の他の作品すべて見る

#恋愛の新着小説
一覧

関連するタグ

LINE1287

第1話 - あ

作者の他の作品すべて見る

#恋愛の新着小説一覧

関連するタグ

#恋愛の新着小説
一覧