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夜、暗闇の中
俺達は足音を立てずに歩いていく
草の匂いと虫の声
道は、町から山へ続いてる
山道を登った先には…。
あっとが俺らの寝てる部屋のドアを開けた
真っ暗闇に明かりが差す
赤
あっとが囁く
赤
今はまだ夜中
俺らは喋りもせずに着替える
ワクワクしてあんま眠れへんかったな
眠くて目がちゃんとあかへん
外に出ると、コオロギが庭の隅で鳴いてる
夏の夜の空気はアヤメとスイカズラの匂い
俺らは足音を立てずに歩いて行く
道には昼間の暖かさが残ってる
大きなホテルは起きたまま
シャンデリアみたいにキラキラ輝いてるけど、
町外れの家は暗闇の中
ぼんやりと片目を開けている
どんどん歩いて
気付けば、ここは山のふもと
草の匂いとコオロギの鳴き声に包まれる
夜の暗さに目が慣れてくると
少しずつ辺りが見えてきた
広い道路から外れて
谷から続く緩やかな山道を進む
列車が暗闇を切り裂いて
走って行く
車輪をきしませ、客車を揺らしながら
-行っちゃった
此処にあるのは途方も無い静けさ
ひっそりした森の中を進んで行く
湿った苔や木の皮の匂いにほっとする
足元で枯れ枝がポキリと折れた
俺達が通るとシダが静かに揺れる
頭の上ではさわさわと木の葉が
見守っている
ゆっくりゆっくり
歩け歩け
黄
緑
ちょっと寄り道して行こう
お月様がお風呂に入ってるみたい
カエルの声も聞こえる
空き地に着くと、
桃
と、けちゃが言う
草むらに響きわたる虫の声
嗚呼、夜空は広いんだろ
こんなに星があるなんて…
やがて名残惜しそうに
まぜが呼び掛けた
紫
俺達は山の斜面を登っていく
もう少しだ
岩から岩へ
いっぽいっぽ
しっかりと足を踏み出して行く
青
ふぃ、間に合った
俺達は肩を寄せ合って
目をそらす
もうすぐや…もうすぐ…
そしてついに…
緑
黄
紫
桃
赤
青
それっきり喋るのも忘れて見とれる
今、新しい一日が始まるんだ