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テラーノベルの小説コンテスト 第3回テノコン 2024年7月1日〜9月30日まで

夜、暗闇の中

俺達は足音を立てずに歩いていく

草の匂いと虫の声

道は、町から山へ続いてる

山道を登った先には…。

あっとが俺らの寝てる部屋のドアを開けた

真っ暗闇に明かりが差す

お前ら起きろ

あっとが囁く

約束覚えてるか?

今はまだ夜中

俺らは喋りもせずに着替える

ワクワクしてあんま眠れへんかったな

眠くて目がちゃんとあかへん

外に出ると、コオロギが庭の隅で鳴いてる

夏の夜の空気はアヤメとスイカズラの匂い

俺らは足音を立てずに歩いて行く

道には昼間の暖かさが残ってる

大きなホテルは起きたまま

シャンデリアみたいにキラキラ輝いてるけど、

町外れの家は暗闇の中

ぼんやりと片目を開けている

どんどん歩いて

気付けば、ここは山のふもと

草の匂いとコオロギの鳴き声に包まれる

夜の暗さに目が慣れてくると

少しずつ辺りが見えてきた

広い道路から外れて

谷から続く緩やかな山道を進む

列車が暗闇を切り裂いて

走って行く

車輪をきしませ、客車を揺らしながら

-行っちゃった

此処にあるのは途方も無い静けさ

ひっそりした森の中を進んで行く

湿った苔や木の皮の匂いにほっとする

足元で枯れ枝がポキリと折れた

俺達が通るとシダが静かに揺れる

頭の上ではさわさわと木の葉が

見守っている

ゆっくりゆっくり

歩け歩け

あっ、あれ!

湖やぁ!✨

ちょっと寄り道して行こう

お月様がお風呂に入ってるみたい

カエルの声も聞こえる

空き地に着くと、

寝っ転がってみる?

と、けちゃが言う

草むらに響きわたる虫の声

嗚呼、夜空は広いんだろ

こんなに星があるなんて…

やがて名残惜しそうに

まぜが呼び掛けた

そろそろ行こ、遅れたら大変

俺達は山の斜面を登っていく

もう少しだ

岩から岩へ

いっぽいっぽ

しっかりと足を踏み出して行く

ほら、頑張って!

ふぃ、間に合った

俺達は肩を寄せ合って

目をそらす

もうすぐや…もうすぐ…

そしてついに…

ふぁっ、!

凄いッ…

おー!!

わぁっ、!

すげぇ、

凄いね!

それっきり喋るのも忘れて見とれる

今、新しい一日が始まるんだ

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