若い母親はあそことかこっちからとか指さしながら女の子に何か話しているよく似た親子でお雛様のような横顔が綺麗だ
お母さん
暗いのに何か見えますかそちらは裏山の崖で草ボーボーなだけで何もないんですよ
と、お母さんが言うと
お客さん
あのあたりに滝があったはずなんですけど
女の人は窓の外を指差した
お母さん
あらお客様よくご存知で木や草に隠れて見えないんですけど裏山から小さな滝が流れ落ちてるんですよでは以前にもここにいらしたことがあったんですね気がつかないで失礼いたしました
お母さんは慌てて頭を下げた テーブルの上に料理を並べるとお母さんがお茶碗にご飯をよそって差し出した 女の人はそのお茶碗を両手で包むように持つと
お客さん
なんて白いんでしょう なんて暖かいんでしょうこれをさよちゃんに食べさせたかったのよ
とつぶやいた小夜と呼ばれた女の子も目を大きく見開いて湯気の立っているご飯を見つめている
お母さん
どうかなさったんですか
ゆうこのお母さんが聞くと二人はハッとしたように顔を見合わせて食べ始めた
ゆうこ
変なお客さんだねお母さん
客室を出て裕子は囁いた炊きたてのご飯がそんなに珍しいのだろうか
お母さん
静かに聞こえるわよ
お母さんは唇の前に人差し指を立てて首を振ったが言うこと同じ気持ちなのは目を見ればわかった