人形

あの日、ぺいんとを殺した日から もう1ヶ月経った。

世はもう夏で、そろそろ 夏休みを迎える。

クラスはざわついていて、 教室のロッカーもすっからかんに なっていた。

……1人を除いて。

学校側では、ぺいんとは 行方不明となっている。

らっだぁは、その知らせを聞いてから ずっと寂しそう

…そんなに大事か？

たった数日ゲームやっただけで

なんでそんなに気にするわけ？

貴方は優しい

ずっと、昔から

変わらない。 全くそのまま

俺がどんなことを考えているのか

どんな気持ちなのか

全部彼にはお見通しだ。

貴方はよくおれの顔を見てる

そしてすぐに変化がわかる

なんだろうって…

嫌なことが

ぼろぼろぼろぼろ、

崩れて溶けていくように。

まるでお酒が回ったみたい。

こんな事を考えてる暇もないくらい 貴方のおかげでおれは笑顔でいられる

そうやって、おれを照れさせる仕草も

すぐに腰を引いたり、 手を繋いだり

おれをどうにかしてしまう 才能がある

でもなるせ

おれたちは、ずっと一緒だよ

そんなの時を何回戻しても 変わらない

"なるせだけ"

ね、そうでしょ。 だからおれ知ってるよ

でた。不機嫌な顔

同じくらいわかりやすい

目を丸くしておれをじっと見つめる

あーあ、こう言う時ほんと 嘘つけないよね

あぁ~愛おしい

周りから見たら、 俺が照れてばっかり

そりゃそうだよね。

全部わかっててやってるんだから

悪い子なのはなるせでしょ

ぺいんとなんて最初から 興味なんてない

なるせがクラスメイトと喋ってた

そんな些細な嫉妬から始まった

そんな時、ぺいんとがいた。

なるせが何をするのか、 ぺいんとがおれを気に入るのも、

全部、全部わかってたこと

殺しちゃった、

ほんとに、おれの為に

その時、頭がどうにかなりそうだった

嬉しくて、胸がきゅってなって、

…あぁ、これが愛なんだって…ｯ♡

クラスメイトと団結して、

そんなにおれを依存させたいんだって

おれが惨めで、可哀想で。

なるせ

こんなおれでごめんね

こんなことしか一緒にできなくて

あぁ、そういうとこだよ

さりげなく優しいとこ。

おれよりも少しおっきい手

すらっと、きれいに整った顔。

なんだかいつもより、

不安そうな、

でも、かっこよかった

ぱしゃっ

こぼごぼごぼごぼって

口から空気が抜けていく。

苦しくて、深くて、もがいても 上に上がれない

冷たくて、真っ暗で

なるせの姿なんて 何処にも見えない

でも、ぎゅって

なるせは静かに手を握って、

おれを抱きしめてくれた。

今まで、"しあわせ"だった。

なるせの"たからもの"でいれて、 よかった。

ー人形ー end